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名古屋高等裁判所 平成7年(行コ)16号 判決 1996年7月30日

愛知県岡崎市大平町字建石一一番地二

控訴人(原告)

吉野康治

愛知県岡崎市明大寺本町一丁目四六番地

被控訴人(被告)

岡崎税務署長 神野博行

右指定代理人

高井正

太田尚男

堀田輝

戸刈敏

相良修

主文

一  原判決を取り消す。

二  本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。

事実

第一当事者双方の求めた裁判

主文と同旨

第二当事者の主張

一  控訴人の請求原因

原判決事実欄二項に記載のとおりであるから、これを引用する。

二  不服申立ての事実経過についての控訴人の主張

本件不服申立ての経過は以下のとおりであるから、本件は名古屋地方裁判所に差し戻されるべきである。

1  控訴人は、被控訴人が平成七年二月一三日付けでした控訴人の平成元年分の所得税の決定及び無申告加算税の賦課決定並びに被控訴人が平成七年三月一五日付けでした督促(以下これらの処分を「本件各処分」という。)について、同年三月二〇日に被控訴人に対し異議申立てをした。

2  被控訴人は、同年六月一四日、控訴人の右異議申立てをいずれも棄却する異議決定を行った。

3  控訴人は、同年七月三日、国税不服審判所長に対し審査請求をした。

4  国税不服審判所長は、平成八年五月二三日付けで、控訴人の審査請求をいずれも棄却する旨の裁決を行った。

三  右控訴人主張に対する被控訴人の認否

右二の1から4までの事実は、いずれも認める。

理由

一  本件各処分の不服申立てに関する控訴人主張事実(右事実欄第二の二の1から4まで)は、いずれも当事者間に争いがない。

しかるところ、控訴人は、原則として、審査請求についての裁決を経た後でなければ、本件各処分の取消しを求める訴えを提起することができない(国税通則法一一五条一項、七五条一項一号、三項)が、右裁決を経ないで訴えを提起した場合であっても、当該訴えが却下され、その裁判が確定する前で、かつ、審査請求をした日から三か月が経過してもなお裁決がなされないときには、右の瑕疵は治癒されるものというべきである(同法一一五条一項一号)。

そうすると、本件においては、原判決に対する本件控訴の申立て後に、審査請求の日(平成七年七月三日)から三か月を経過してなお裁決がなされなかったから、右の点に関する瑕疵は治癒されたものというべきである。

二  よって、民事訴訟法三八八条に従い、原判決を取り消した上、本件を名古屋地方裁判所に差し戻すこととして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 水野祐一 裁判官 岩田好二 裁判官 山田貞夫)

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