名古屋高等裁判所 昭和24年(控)387号 判決 1949年7月23日
被告人
山田秀雄
主文
本件控訴を棄却する。
当審に於ける訴訟費用は、被告人の負担とする。
理由
弁護人鈴村金一及び被告人提出の控訴趣意書は、別紙の通りである。
弁護人控訴趣意第一点について。
原判決挙示の鈴木國作の被害事実顛末書、岩田保夫に対する司法警察員の供述調書、被告人に対する司法警察員の第一回供述調書を綜合するときは、原判決判示第一事実を十分に認定することができる原判決には、理由不備又は事実の誤認ありと疑うべき点がない。所論の如く、たとえ被害者に労動基準法違反の事実があつたとしても右事実を種にして、新聞に発表して名誉信用を傷け営業上に不利益を蒙らせるが如き行爲に出るかもしれない言辞態度を示して畏怖せしめ、これによつて金銭を交付せしむれば、恐喝罪が成立するもので、論旨は、独自の見解で原審が自由心証に基き証拠の取捨判断を爲して、恐喝の事実を認定したことに対し、非難攻撃するもので、全く理由がない。
中省
同第三点並に被告人の控訴趣意について。
前説設明の通り、原判決挙示の各証拠により、原判決の犯罪事実は十分に認められるところで、原審が弁護人申請の証人岩田保夫、坪井警官の尋問請求を却下したのは、前記の如く事実の眞相を充分に把握したがためで、このような場合には、原審は、当事者の証拠調請求を却下し得るものであつて、審理不盡とは認め難い、所論の岩田保夫に対する司法警察員の供述調書が、任意の供述に基いて作成せられなかつたと疑う点はなく、むしろ、右供述は、他の証拠に照すときは、特に信用すべき情況の下に爲されたものと認め得るから原審がこれを証拠に採用したのは正当である。
以下省略