名古屋高等裁判所 昭和24年(控)497号 判決 1949年10月18日
被告人
服部與吉
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役弍年及罰金千円に処する。
右罰金を完納せないときは金五十円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
原審に於ける未決勾留日数中九十日を右本刑に算入する。
当審に於ける訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
弁護人加藤謹治提出の控訴趣意書の論旨は
第一点 原審訴訟手続は法令の違反があります
追起訴状の訴因変更請求書の内容は「一、……………同人等が其の頃他から窃取して來たタイヤ、チューブ各一本を云々」と変更されて居り、追起訴状の第一事実に示されてゐる被害場所と何等関聯なく被害品も亦追起訴状は中古リヤカー一台となつてゐるが、変更請求書にはリヤカーチューブタイヤとも明示されて居らず、客観的に見て両者間には関聯なく訴因の同一性を欠くものと思料致します少くとも原判決第二事実の如く、被害場所なり被害者を特定してこそ、両者の訴因が同一であると認定出來るのであります(四三丁表一〇四丁表参照)同樣の法令違反は訴因及罰條の変更請求書二、三に付きましても同断でありまして、斯樣な訴因を異にした変更請求書によつてなされた原審判決は手続上法令違反と思料します
第二点 原判決は判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の適用に誤があります
中略
と謂ふにある
然しながら原審引用挙示の各証拠並に当審証人三州勇、同小川きうの各供述を綜合考察すると起訴状記載の事実と訴因並罰條変更請求書の記載とは其内容に於て事実の同一性を害しないと認められるから此点に於ける論旨は理由がない。
後略
しかし原審判決書を看るにその主文に於て原審は被告人に対し罰金の換刑処分を定めながら其理由に於て之を定めた根拠たる刑法第十八條を適用挙示しなかつたことは違法であるから此点に於て本件控訴は理由ありと認め刑事訴訟法第三百九十七條に從ひ原判決を破棄する。
後略