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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)576号 判決 1950年4月05日

被告人

岩本孝司こと

蔡鐘元

主文

原判決を破棄する。

本件を岐阜地方裁判所多治見支部に差し戻す。

理由

職権を以て調査するに(中略)賍物牙保罪が成立するには当該犯人において直接その賍物の有償処分に関する交渉をなす必要はないので他人に委嘱してその交渉をなさしめてもよいのであるが兎に角その直接又は間接の媒介によつてその賍物の有償処分が行われたことを要し単に右判示のように売主からその賍物の有償処分の媒介を依賴せられたこと若しくはこれ承諾して更に他人にその媒介を依賴したこと丈を以ては未だ賍物牙保罪の成立ありとはなし得ないものと解さなければならない。(大審院明治二十五年第四七〇号事件の判決――大審刑録明治二十五年一月四九頁、大正三年(れ)第二二五九号事件の判決――大審刑録二〇輯四一頁、大正五年(れ)第二七二三号事件の判決――大審刑録二二輯一五三頁参照)

然るに原判決(本件起訴状の訴因においても同断)はその判示によつて明かなように本件賍物とせらるる取引高税印紙の有償処分の成立を明示するところがないから賍物牙保罪の判示としては不充分であつて右は刑事訴訟法第三百七十八条第四号に所謂判決に理由を附せず又は理由にくいちがいのある場合に該当し論旨に対する判断をなす迄もなく原判決は同法第三百九十七条によつて破賍を免れないものといわなければならない。

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