名古屋高等裁判所 昭和24年(控)676号 判決 1950年5月15日
被告人
領木花江事
纐纈はる
主文
本件控訴を棄却する。
当審に於て生じた訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
弁護人加藤謹治の控訴趣意第二点について
原審で取調べられた証拠によれば、所論のように、被告人が昭和二十四年二月二十日岐阜簡易裁判所で政令第百六十五号違反の罪により罰金五千円に処せられたこと、被告人の本件に関係のある売渡始末書が昭和二十三年十一月二十五日附で那加町警察署宛に提出せられていること、右事件と本件とが各別に起訴せられたことを認めることができる。而してこの二つの事件を併合して起訴し得る場合に之を敢て別箇に起訴することあらんか、所論のように被告人の不利益となることも亦明らかであるといわなければならないが、本件記録のみによれば果して右の二つの事件を併合して起訴し得たかどうかは遽に之を断定しえない許りでなくかりに併合して起訴し得たのに拘らず敢て各別に起訴せられた事実があつたとしても、かかる原審の訴訟手続の開始する以前にかかる起訴手続の不当を論難攻撃することを以て、第一審の判決(高等裁判所の第一審判決を除く)に対して法律及び事実点にわたつて事後審査を行う控訴審に対する控訴の趣意となすことは刑事訴訟法の明らかに認めていないところであるから、右起訴手続の不当なことを捉えて原審の訴訟手続に法令の違反があつてその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかでありとなす本論旨は之を採用しない。
(弁護人加藤謹治控訴趣意第二点)
原審は判決に影響を及すこと明らかな訴訟手続の違反があります被告人は昭和廿四年二月廿日岐阜簡易裁判所に於て略式命令により本件と関連のあります政令第一六五号違反被告事件に付罰金五千円に処せられて居りますがこの場合被告人は本件犯罪を全部自白して居りますのに(二三丁被告人の賣渡始末書參照)前の事件と切り離して起訴されましたことは不当に判決に影響を及すこと明らかな被告人に不利益な取扱をなしたものと思料致します。