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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)941号 判決 1949年10月29日

被告人

島倉喜三郎

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人岩瀨丈二の控訴趣意について。

原判決挙示の証拠中、実況見分調書がその作成者の署名のみで押印を欠くものであることは所論の通りである。しかしながら同書面の筆跡は原判決挙示の他の証拠である参考人高木愛助、同吉田好三同吉田元江の各供述調書を適式に作成した作成者の各署名の筆跡と同一であるばかりでなくその本文の筆跡もすべて同一であることが認められるのであるから、すなはち右実況見分調書はこれに署名した竹鼻警察署司法警察員西尾薰が正当に作成したものと断定すべきである故に他に特別の事情の認められない限り右見分調書の記載内容もその証明力において何等欠くるところのないものと認めるべきである。さればこれを証拠に供した原判決には所論の違法はないのであるから論旨は理由がない。

(弁護人岩瀨丈二の控訴趣意)

判決に影響を及ぼすべき法令手続に違反せる書類を証拠に援用したるものにして破棄せらるべきものである。原判決判示第一の事実中窃盜未遂に対する事実につきては被告人は終始否認せる処なるも援用せられたる各証拠により之を認定せられたるが其の窃盜行爲着手の事実を認定する上に最も重要なる自轉車の位置の判定に供せられある実況見聞書は其の作成者の押印を欠くものにしてかゝる書類は官史の作成する書類としては明らかに手続違背の書類であつてかゝる書類を断罪の資料に供したる事は其の書類の性質上採否如何によつては判決に影響を及ぼすものなるを以つて上記書類を証拠に援用したる原判決は破棄を免れざるものである。

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