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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)123号 判決 1950年3月23日

被告人

河野道男

外三名

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人塚本義明の控訴趣意第一点について。

所論は原判決挙示の証拠である後藤市右エ門の盜難屆による被害品数量は硫安四叺であり同六叺ではないから、右盜難屆は原判決判示第一の一の事実において被害品を硫安六叺と認定することの証拠とならないものである、從つてこの点について原判決は結局被告人等の自白による供述のみに依つて事実を認定したことになり、違法であると主張するのである、按ずるに、右盜難屆には被害品として硫安四叺位と記載されてあるが(尤も同被害者は後において被害申立書を提出し被害品は硫安六叺である旨申立て、同書面は原審公判において証拠として提出されその取調がなされたのであるが原判決はこれを証拠に挙示していない)これとその他の原判決挙示の被告人等の各供述調書の記載とを綜合して被害品数量を六叺と認定することは何等経驗則に反するものではなく、この程度の数量の差異は、いまだ右盜難屆の証拠力を否定するものではないと解すべきである。されば原判決には被告人の自白に依つてのみ事実を認定した違法があるものではない。即ち論旨は理由がない。

(弁護人塚本義明の控訴趣意第一点。)

原判決は被告人の自白に依つてのみ事実を認定した違法がある原審判決判示第一の一、は判示日時場所に於て被告人河野道男同松岡景司が共謀して硫安六叺を窃取した事実を認定し、証拠として被害者である後藤市右エ門の盜難屆、及其他各被告人の供述調書並公判廷の各供述を援用してゐるが右後藤市右エ門の盜難屆には明に硫安四叺を(記録六十七丁裏)窃取されたとあつて六叺でない。

勿論別に同人は被害申立書(記録八十二丁)に於て六叺の誤であると訂正してゐるが右被害申立書は援用されてゐない從つて六叺と認定したのは被告人の供述のみに基いたもので違法である。

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