大判例

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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)2045号・昭25年(う)2044号・昭25年(う)2046号 判決

案ずるに、原判示第一事実については、原判決挙示の木全磯一の被害届によれば、被害品中現金三千二百円の所有者は、中京織物協同組合村田堯郎であることは明らかで、原判決が木全磯一の所有であると認定したのは、事実誤認であるけれども、木全磯一が所持していたことが認められ、而して窃盗罪は、所有権を侵害する犯罪でなく、他人の所持を侵害するものであるから、原判決の右の程度の誤認は、判決に影響を及ぼすものではない。原判示第二の(1)については、鳥越治雄の被害上申書によれば、被害品の中、原判示洋服生地の数量は、八本(一本四十ヤール巻のもの)で、長さは合計三百二十ヤールであることが明らかであるから、原判決が三十二ヤールと認定したのは、事実誤認であるけれども、右誤認も、被告人に有利となることはあつても被告人の控訴としては、判決に影響を及ぼすこと明らかなものと謂うことはできない。原判示第二の(2)については、近藤実の被害届によれば、被害品の所有者は富士興業株式会社であつて原判示西尾清一郎は、右会社の社長として、右被害品を管理していたことが明らかであるが、原判示の通り、「社長西尾清一郎所有」と認定しても、誤りであるとは思われない。而して原判決は、証拠の標目として西尾清一郎の被害届と掲示しているが、右は本件記録を精査することにより、右会社の近藤実が提出した被害届の誤記であることが明らかに認められる。次に原判示第二の(3)については、渡辺健之助の被害届によれば、犯罪場所は、原判決の通り認定しても誤りではなく、被害者は、渡辺健之助個人でなく、毛織会社々長たる渡辺健之助であることが明らかであるが、右の程度の誤認は、前同様判決に影響を及ぼすものではない。更に原判示第二の(4)(5)については、荒川長太郎の被害届(二通)追加上申書によれば、犯罪場所は、原判決の通り認定しても誤りでなく、被害者は荒川長太郎個人でなく、荒川長太郎合名会社代表社員荒川長太郎と認定するのが正確であるが、右の誤認は、前同様、判決に影響を及ぼすものではない。要するに、原判決は、右の通り多くの誤りがあることは、所論の通りであるけれども、右誤認は、何れも軽微なもので、犯罪の成否及び刑の量定に影響を及ぼすものでないから、論旨は、採用することができない。

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