大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和25年(う)2275号 判決

弁護人の控訴趣意の要旨は、原判決は、事実の誤認又は法律の解釈を誤つた違法がある。被告人は、半田税務署勤務の大蔵事務官であつたことは認むるが、昭和二十二年度個人所得の更正決定に対する審査請求につき、判示のように有松方面を担当していなかつたのは勿論、久野友一外二名の昭和二十二年度分の個人所得の更正決定に対する審査請求に何等関係していない。右審査請求に便宜を与えたことはない。なお被告人は、収受した五千円を久野友一等に返還して居るにも拘らず、被告人から追徴したのは、正当でないと謂うにある。

よつて原判決挙示の証拠を見れば、被告人が大蔵事務官として半田税務署に勤務していたもので、その職務権限の一部として、個人所得の更正決定に対する審査をすることができたことが認められる。仮りに本件当時右税務署の内部で、担当地域を定め、個人所得の更正決定の審査をしていたとするも、それは、税務署の内部関係のことで、被告人が一般に半田税務署管内の個人所得の更正決定について審査し得る権限があつたことに法律上の消長を来たすものでない。又被告人が久野友一、久野信三郎、古橋正光のために、わざわざ出向いて同人等と長時間同席し、個人所得の更正決定について陳情を聞いたり、種々納税上有利便宜な方法を聞いた際、説明したり教示し、自己の職務に関連して、種々便宜を計つた事実が認められ、その謝礼の趣旨として、金五千円の供与を受けたのであるから、収賄罪が成立することは、明らかである。更に被告人は、収受した金五千円を自己の用に費消した後、別途の金で返金したのであるから、被告人から、右金五千円を追徴するのは正当である。原判決には、事実誤認又は法律の解釈を誤つた違法はない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!