大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和25年(う)307号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(理由)

所論疊表に関する本件起訴状記載の公訴事実の要旨が被告人は名古屋戰災者同盟消費組合の組合長であつたところ、昭和二十一年三月二七日頃及び同年七月二五日頃の二回に亘り、右消費組合代表者松木唯夫名義で愛知縣知事早川三郞に対し、右消費組合員の使用分として疊表の特別下附申請をなし、右申請の許可を受け、同年三月二九日名古屋市中区材木町一丁目四番地愛知縣疊材料商業協同組合より、前記申請書に基き、疊表二百枚及び同年七月二六日同樣疊表三〇枚の配給を夫々受け、之を被告人の自宅に保管中、同年八月頃擅に組合員以外の東京都北多摩郡村山村字中藤三五七二番地笹川淸に前記疊表二三〇枚の内八枚を名古屋市内千種駅より同人宛に発送無償に交付した外、其の頃東京都中野区桃園通東洋アパート内奧山章に内六枚を前同駅より同樣発送無償交付し更に其の頃被告人自家用に内二九枚を、長野縣上水内郡中郷村字東黑川居住の松木君子に内二九枚を前同駅より発送、右消費組合副会長西協一之に対し被告人自宅で被告人私用の戸棚代金立替金の代償として内三枚を夫々使用或は交付し、其の頃残余の内八六枚は着服して自宅に隠匿して橫領したものであると謂うに在るところ、其の後該訴因に関して所論罰條の追加請求書により被告人は名古屋戰災者同盟消費組合の組合長として、同組合員に対する生活物資等の特別下附申請或は同組合員に対し下附された生活物資其の他物資の保管配給等の業務に從事中、昭和二一年三月二七日頃及び同年七月二五日頃の二回に亘り、右消費組合代表者松木唯夫名義で愛知縣知事早川三郞に対し、右消費組合員の使用分として疊表の特別下附申請をなし、右申請の許可を受け、同年三月二九日名古屋市中区一丁目四番地愛知縣疊材料商業協同組合より前記申請書に基き疊表二百枚及び同年七月二六日同樣疊表三〇枚の配給を夫々受け、之を被告人の自宅に保管中、同年八月頃擅に組合員以外の東京都北多摩郡村山村字中藤三五七二番地笹川淸に前記疊表二三〇枚内八枚を、名古屋市内千種駅より発送無償交付した外其の頃東京都中野区桃園通り東洋アパート内奧山章に内六枚を前同樣千種駅より発送無償交付し、更に其の頃被告人自家用に内二九枚を、長野縣上水内郡中郷村居住の松木君子に内二九枚を、前同樣同駅より発送右消費組合副会長西脇一之に対し被告人自宅で被告人私用の戸棚立替金の代償として内三枚を夫々使用或は交付し、其の残り内八六枚は着服して自宅に隠匿して橫領したものである旨追加されたことは本件訴訟記録に徴し明らかであつて、右起訴状によるも將又訴因罰條の追加請求書によるも本件に於て起訴された所論疊表に関する被告人の橫領行爲は結局被告人が擅に(一)(イ)笹川淸に対し右疊表八枚、(ロ)奧山章に対し同疊表六枚を夫々無償交付し(ニ)被告人方自家用として同疊表二九枚を使用し(三)(イ)松木君子に対し同疊表二九枚(ロ)西脇一之に対し同疊表三枚を夫々交付し(四)自ら同疊表八六枚を着服したものであると謂うに帰着し、從つて被告人が橫領したものとして起訴された同疊表の数量が都合合計一六一枚に限られていることは洵に所論の通りである。然るに此の点に関する原判決の理由説示を見ると、原判決は被告人が所論疊表二百枚を着服橫領した旨の有罪事実を認定しており其の橫領行爲の態樣に於て起訴にかかる橫領行爲の態樣と異るのみならず橫領した疊表の数量に於ても起訴に係る疊表の数量を可成り超えていることが明らかであるから、若し原判決が斯の如く公訴事実と右の各点に関し異つた前記事実を有罪として判決するに際しては先ず須らく同事実に副うが如くに訴因を追加若くは変更するの手続を経た上で判決すべきであつたのに拘らず、原審に於て斯樣な手続が爲された事跡は、原審各公判調書を通じても、之を認め得られないので、此の点に関する原審の訴訟手続には法令の違反があるものと謂うの外なく、而して該違反が判決に影響を及ぼすものであることに付いては更に多言を俟つまでもない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!