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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)383号 判決 1950年4月18日

被告人

中野勝已

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人辻喜己衞の控訴趣意第一点について。

(イ)  按ずるに、略式命令謄本が作成せられる場合、作成者において署名すべきものであることは所論の通りである。しかしながら本件の場合被告人が略式命令謄本の偽造に際し自署をなさず記名をした一事を捉え同書面が未だ完成しておらず従つて原判示のこれが「作成を完成し」と認定したのは事実の認定を誤つたものであると主張する所論には到底首肯し得ない、蓋し刑法第百五十六条の公文書偽造罪に於ける虚偽文書は、公務員がその職務権限に属する事項に関し文書の内容を偽りその権限に基いて真正に作成した場合であるからたとえその文書の形式において法令上欠くるところがあつたとしても苟もそれが公文書とし一般人を欺くに足る以上同罪の成立を妨げるものではない、されば被告人が本件虚偽の略式命令謄本の作成に際し記名を用いたとしてもそれは右の解釈に嵌当するのであるから即ち虚偽の公文書の作成を完成したものというべく、この点に対する原判決の認定は正当であつて何等事実誤認はない。(下省略)

同第三点について。

(ロ)  按ずるに有罪の判決を為すに当つてはその理由に、公訴事実について裁判所が認定した訴因罰条を説示すべきものであるけれども、所論の如く予備的に追加せられた訴因罰条についてはこれを認定しないという判断までも示すことを要求せられるものではないと解すべきである、されば原判決には所論の理由不備はなく論旨は理由がない。

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