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名古屋高等裁判所 昭和25年(ナ)1号 判決

原告 日吉宗能 外四名

被告 石川県選挙管理委員会

一、主  文

原告等の請求を棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、事  実

原告等訴訟代理人は「昭和二十五年一月十五日施行の石川縣鳳至郡穴水町長解職投票又は解職投票の結果の効力に関し原告等からした訴願を同年三月二十日付で却下した被告委員会の裁決を取消す。右解職投票を無効とする。もし右解職投票が無効でないとすれば右解職投票の結果を無効とする。訴訟費用は被告委員会の負担とする。」との判決を求めその請求の原因として左のとおり述べた。

原告日吉宗能は昭和二十二年四月石川縣鳳至郡穴水町長(以下單に町長という)に当選し爾來町長の職にある者、他の原告四名はいずれも昭和二十五年一月十五日施行された町長解職賛否投票における有権者であるところ町長解職賛否投票に際し穴水町選挙管理委員会(以下單に町の委員会という)は昭和二十五年一月十六日付で右解職賛否投票の結果として投票総数二千六百五十五票解職賛成投票千三百七十八票解職反対投票千百九十票無効投票八十七票と公表した。そこで原告等はそれぞれ右解職賛否投票及びその投票の結果の効力に関し不服ありとして町の委員会に対し適法なる異議の申立をしたが却下せられたので、続いてそれぞれ被告委員会に対し適法なる訴願をしたところ被告委員会は同年三月二十日付でいずれもこれを却下する旨の裁決をした。しかしながら原告等は第一段として本件解職賛否投票には多くの違法の点がありそれは無効とせらるべく、從つて町長日吉宗能は町長の職を失うべきものではないと信ずる。次にその違法の点を詳述する。

第一署名簿及び署名に関する主張。

(一)  署名簿は町村に関する直接請求にあつては一通のみ作成すべく一通を分冊してあつたものを後日合冊して一通と仕做すことは許されない。しかるに本件の場合においては二十九冊に分冊して署名捺印を蒐集したことが明らかであるから本件署名簿は違法無効のものである。

(二)  地方自治法施行令(本件において地方自治法及び地方自治法施行令とあるはいずれも昭和二十五年改正前の旧法令を指す)第百十六條によつて準用せられる同第九十二條第一項によれば署名簿には、解職請求の要旨又はその写及び請求代表者証明書又はその写を添えて選挙人の署名捺印を蒐集(署名運動ということあり)しなければならないことになつている。しかるに本件の署名運動においてはこれを遵守した形跡がないから本件署名簿は違法無効である。

(三)  地方自治法及び同法施行令の規定によると署名簿に署名捺印を蒐集することは請求代表者のみこれを爲しうべきものであるにかゝわらず、本件解職請求代表者たる穴水町議会議長滝川清次郎外十四名は同腹の代人数名を使つて署名運動に從事させ、これによつて蒐集した署名が本件署名簿の大半を占めている有様であるから本件署名簿は違法無効である。

(四)  解職請求代表者等が蒐集した署名総数は二千六十八個(署名簿の進行番号数――内一個は空白)であるがその中、

(1)  署名簿における署名捺印は選挙人自らこれをすることを要するのは直接請求の大原則である。しかるに本件署名簿においては当該選挙人以外の者が記載し捺印したもの、前記請求代表者又はその配下の者が予め有合印を用意しておいて擅に選挙人の署名捺印を僞造したもの、予め選挙人の氏名を冒書しておいてその選挙人の捺印だけを求めたもの、選挙人の不在中その家族に代筆させて後日捺印を求めたもの等、要するに自署でない署名が多数ありこれらは全部無効であること勿論である。今その内訳を具体的に掲げると次のとおりとなる。

(イ) 同一筆蹟に属する署名中の一個を除いた残数。 別紙第二表掲記の四百二十個

同表においてカツコで括つた各組の署名はそれぞれ同一筆蹟である。從てその各組の署名はその組の中の或一人が記載したものとしてその余の署名は必然的に全部自署でないこととなり無効に数えなければならない。

(ロ) 他人が代書したもの。 左記 六十四個

(註、漢用数字は署名簿の進行番号を表はしたもので其の氏名を省略する。以下同じ)

四〇二、八四一、九四一、一九三九、二〇四〇、一一五二、一一九四、二〇六四、二〇六五、一二二二

三五二、一一〇七

四八、一九〇、二二八、三〇〇、三五〇、五〇〇、五〇一、五〇二、五〇三、五〇四、五〇五、五〇六、五〇七、五〇八、五〇九、五一〇、五一一、五一二、五一三、五一四、五一五、五一六、五一七、五一八、五一九、五二〇、五二二、六九五、九三五、一〇一二、一〇一三、一〇一四、一〇一五、一〇一六、一〇一七、一一二五、一一三七、一一三八、一一三九、一一四〇、一一四一、一一四二、一三五二、一八二一、一八二四、一八二九、二〇〇五、二〇〇六、一六一、三三八、三三九、三四〇

(ハ) 署名簿と照合簿の記載と氏名不一致で自署と認めがたいもの。 左記 三個

五七、七三二、二〇六三

(ニ) 文字不明で自署と認めがたいもの。 左記 三個

六三六、六四八、一一三〇

(ホ) 活字で氏名を表示しさらにその上に氏名が書かれているが訂正印なく結局自署と認めがたいもの。

左記 一個

六三五

(2)  適法な捺印を欠くため無効とすべきものが左のとおり十四個ある。

五八七、七〇三、一五一四、一五一五、一七四〇、一七四一、一八四〇、一八四一、一九二六、一九二八、一九二九、一九七二、一九九五、一九九六

(3)  署名簿に署名捺印する者は町長解職請求の趣旨を理解した上でこれをすることを要する。しかるに本件においては、

(イ) 右解職請求の趣旨を告げられないで、從て何のために署名捺印するかも判らないまゝ署名捺印したものがある。かゝる署名は、勿論無効でありその数は左記十六個である。

四三六、一〇五九、一〇六一、一〇八〇、一〇八二、一〇九六、一一〇六、一一二二、一一三四、一一九五、一二二三、一五八四、一五八六、一七四八、二〇二四、二〇四三

(ロ) 本件解職請求の要旨とは異る趣旨ですなわち詐術を弄して署名捺印させた者がある。それは二〇三四、の一個でありこれも無効である。

(4)  同一家族に非ずして同印を使用した署名が別紙第三表のとおりあつてその中三十七個を無効と主張する。

(五)  以上(四)において明にした無効署名の総数は五百五十九個である。この外に被告委員会においてもその無効なることを認めている署名の数が別紙第一表記載のとおり百八十個ある。從て右五百五十九個と百八十個を加えた七百三十九個の無効署名があることとなり、これを本件署名簿における署名の進行番号数二千六十八個からさしひくと有効署名として千三百二十九個残るにすぎない理となる。そしてこの数は明らかに本件解職請求の署名の法定数千五百七十五個に達しないのであるから本件賛否投票はこれを行うべきものではないのである。

第二解職請求の正当性に関する主張。

解職請求には正当の事由がなくてはならないのである。一部の野心家が党利党略又は自己の私慾により直接請求の挙に出ることは法の精神に背馳する。法は適式有効な方法を用いて人民の正しい政治的意欲を具現するためこの民主々義的の制度を認めたものといわねばならない。しかるに本件解職請求の代表者となつた訴外滝川清次郎外十四名はいずれも穴水町議会議員で、なかんずく右滝川清次郎は議長の地位にあり、右十五名は自由党系又は民主党系に属し穴水町議会(議員の定員は二十二名)の多数派であるところ、社会党に属する町長日吉宗能が常に正を執つて動かないため同人が町長の職にあるかぎり右多数派において町政を壟断せんとする野望を達成する上に支障を來たすので同人を排撃せんとして本件解職請求に及んだものであるが、同人は曹洞宗大学を卒業し由緒ある同宗瑞源寺の住職を勤めており、穴水町農地委員会委員その他多数の公職を占め、昭和二十二年四月五日町長に公選されてからこの方至誠奉公、嚴正公平に町長の職務を行つて來たものであり、かの党利党略だけを事としている前記滝川清次郎一派の者とはその選を異にする立派な人物である。かかる者を解職すべきなんら正当の事由がない。

第三弁明書の取扱に関する主張。

地方自治法施行令第百十七條、第百四條第二項によれば町の委員会は町長から弁明書を徴したときは解職請求の要旨と、弁明の要旨を投票期日の告示の際併せてこれを告示するとともに、公衆の見易い場所を選び原文のままこれを掲示しなければならないことになつている。そして右にいわゆる「併せて」とは時と場所と方法を同じうするという趣意である。しかるに町の委員会は右両者の掲示の場所として(1)穴水町字大町穴水町役場構内消防自動車格納庫の前板扉(2)同町字大町大橋詰の吉村林造方の板塀(3)同町字川島森田正芳方表戸の腰板の三ケ所を選んだのであるが、請求の要旨の方はいずれも往來の人に見易いように((1)(2)の場所においては目通りの高さに)しかも昭和二十四年十二月八日午前九時から投票日たる昭和二十五年一月十五日の夕刻迄長期間に亘つて掲示しかつ屡々前記委員会の係員が剥離破損のないように見廻つていた。これに反し弁明書の方は昭和二十四年十二月二十二日町の委員会に提出したにもかかわらず、それから四日目の同月二十六日午後五時に至つて初めて前記(1)の場所においては格納庫前板扉の天井裏に近く特に注意して見なければ判らない箇所に、その上破つたものを貼りつけ(2)の場所においては道路を直角に横切る川に面した部分の板塀に弁明書の約半分(初の方)を折り曲げて貼りつけ(3)の場所においては請求の要旨の左側に貼りつけ以ていずれも故らに公衆の見易くないようにして掲示し、しかも同月二十八日夕刻には右三ケ所とも剥ぎ取つてしまつたのである。このように両者の掲示に当つて時と場所と方法を異にし差別待遇をしたのは明らかに違法である。

第四投票立会人に関する主張。

(一)  町の委員会は投票立会人を選任する権限がないにもかかわらず、同委員会は本件投票の期日前たる昭和二十五年一月十一日各投票区における投票立会人としていずれも町長反対派に属する左記の者を選任した。

第一投票区は山本源次郎、駒田貫次、浜宏

第二投票区は寺西賢二、菅原正俊、東宝太郎

第三投票区は瀬邦重雄、細谷十藏、東幸作

第四投票区は石原関太郎、堂ケ口宣七郎、深田国武

第五投票区は嘉門孝督、坂口重太郎、中橋八郎平

そして右の者の中、山本源次郎を第一投票区において、東宝太郎と菅原正俊を第二投票区において、東幸作を第三投票区において、石原関太郎を第四投票区において、坂口重太郎を第五投票区において、それぞれ投票立会人としての職務を行わせた。このことは地方自治法第三十七條に、解職投票に準用してはならないことを示している衆議院議員選挙法第二十四條の規定を準用した結果となるから明らかに違法といわねばならない。

投票立会人は解職投票における重要な機関であること言を俟たない。從てその者は法に準拠した資格を有するものでなければならない。しかるに如上のように偏頗違法に選任された從て資格のない投票立会人をして投票に立会はせるなれば或は選挙人に威迫を及ぼし、或はこれに合図を與え、或は投票を誘引する等の事態を惹起すべく本件各投票区のような小地区の住民は殆んど互に面識があるから、益々その感を深からしめるものであり投票の自由公正を害すること甚しいといわねばならない。よつてこの違法は解職投票の結果に異動を及ぼす虞あること明白である。

(二)  第一投票区において町長の届出にかかる投票立会人志茂松太郎は投票所を開くべき時刻たる午前七時より三、四十分遅れて参会したのであるが投票時間中であればこれを入場せしめて投票立会人としての職務を行わせるのが当然である。しかるに第一投票区における投票管理者たる町の委員会委員長新谷雅一は遅刻を理由として同人の入場を拒み投票立会人としての職務を行わせなかつた。これに反して同一投票区において請求代表者側の届出にかかる投票立会人横田多四郎は遅刻して参会したけれども入場せしめて立会人としての職務を行わせた。このようなことは明らかに違法であり、かつその違法は当然投票の結果に影響を來たすものである。

なお各投票区における町長と請求代表者側の届出にかかる投票立会人及び実際に投票立会人としてその職務を行つた者は別紙第四表のとおりである。

第五不正投票に関する主張。

本件投票に際し穴水町第二投票所の投票中に成規の投票用紙に非ざる到着番号札によつて投票されたものが一枚存在した事実に徴していわゆる不正手段による盥廻し投票が行われたことを想像するに難くない。このような不正手段によつて執行された本件解職賛否投票は違法である。

以上により本件解職賛否投票は無効とせらるべきものと確信する次第であるが、仮りに以上の主張がいずれも理由なしとして本件解職賛否投票が有効であるとすれば原告等は第二段として町の委員会が本件投票の結果として公表した冒頭掲記の賛成及び反対並に無効の各投票数の算定には断じて承服しがたいから予備的に本件解職賛否投票の結果の無効を主張するものである。

すなわち本件賛成投票中に含まれている別紙第五表掲記の投票の中、檢八一、檢一一一、檢一二一、檢一三〇、檢一四三、檢一五七、檢一五八の七票は反対投票として有効と認むべく、その余の百七十一票は無効投票とすべきものであり、かつ無効投票中に含まれている別紙第六表掲記の十七票は反対投票として有効と認むべきものである。そして外に当初町の委員会において公表した千百九十票の反対投票の存することは爭わないから以上のこと並に当初町の委員会において賛成投票を千三百七十八票と公表したことを基として計算すれば賛成投票は合計千二百票となり、反対投票は合計千二百十四票となること算数上明白である。從てこれだけでも賛成投票は反対投票より少ないのであるがさらにいわゆる盥廻しにより投票所外において記載した賛成投票が相当投函されておりこれらは勿論無効であるから賛成投票は右千二百票より益々減少するわけである。よつて町長日吉宗能は決してその職を失うものではない。

以上述べた原因によつて本訴請求に及んだ次第である。

(立証省略)

被告委員会代表者は主文第一項同旨の判決を求め答弁として次のとおり述べた。

原告日吉宗能が町長であること、その他の原告四名が本件解職投票の有権者であること、訴外滝川清次郎外原告等主張の十四名が町長解職請求の代表者となり町長の解職請求をしたので、町の委員会は昭和二十五年一月十五日これを選挙人の投票に附しその結果を原告等主張のとおり公表したこと、原告等がそれぞれその主張のような異議の申立及び訴願を経て本訴提起に及んだことはすべてこれを認める。そして本件解職の請求から投票に至る迄の手続にはなんらの違法がなく又投票の結果の判定になんらの瑕疵がないから町長日吉宗能は解職せらるべきものである。以下原告等の主張を逐次弁駁する。

第一の(一)について。 署名簿の作成に関する地方自治法施行令第百十六條第九十三條の規定は單に照合の便に供するためその作成方法を定めたにすぎないのであつて、署名簿そのものを一冊に限定することを意味するものではない。このことは都道府縣に関する請求であろうと市町村に関する請求であろうと異るところがない。本件において請求代表者から町の委員会え提出された署名簿は二十九冊で各冊とも表紙を附けて別々に編綴されているからその各々の署名簿は個々の独立した署名簿であると見るべく、從てこれによつてなされた署名捺印の蒐集はなんら違法でない。

第一の(二)について。 解職請求の要旨及び請求代表者の写はいずれも前記の各冊に附した表紙の裏面に印刷してあるから署名簿に添えられていることに変りはない。

第一の(三)について。 原告等が援用する地方自治法第九十二條第一項は署名捺印の蒐集に関する手続的規定であつて蒐集行爲をなす者を請求代表者に限定する趣意を含むものではない。現実に署名運動をする場合請求代表者が自らこれをするも他人を使つてこれをするも結局「請求代表者が署名捺印を蒐集する行爲」たることに変りはない。

第一の(四)及び(五)について。 署名簿の署名が自署でなければならないことは將に原告等主張のとおりであり、さればこそ町の委員会においても請求代表者から提出された署名簿につき法によつて與えられた権限に基きこの点は充分に審査しているのである。たゞ選挙管理委員会のする審査は形式的審査を以て足り、実質的審査の責務がないことを考慮におくべきである。尤も訴願の過程においてもし具体的な人的立証があれば被告委員会としても個々の署名の審査にまで立入ることは敢て吝かではないのであるが、本件においてそのような立証がなかつたのである。

次に選挙人が署名簿に署名捺印するに当つては解職請求の趣旨に同意する意思を以てしなければならないことも亦当然である。ところで当時穴水町における町長解職請求の署名運動はごうごうたる社会問題としてあらゆる方面から注目批判の的となつていた事実、及び本件署名簿の各冊には表紙に「穴水町長解職請求者署名簿」と明確に印刷されており、かつその裏面には前敍のとおり解職請求書の写と請求代表者証明書の写が見易く印刷されている事実とに徴すれば本件署名簿に署名捺印した選挙人はすべて解職請求の趣旨を了知した上で、これをしたものと見るのが相当であるからその請求の趣旨を理解せず、又はこれを曲解していた者が多数あるとの原告等の主張は虚構である。

さて今改めて本件署名簿における有効署名の数を考えるに原告等主張の第一表掲記の署名百八十個が無効なることはこれを認め、その余の無効署名のあることは否認するものである。從て本件署名簿における署名の進行番号総数二千六十八個から右無効数百八十個をさしひいた残りすなわち千八百八十八個を有効署名と認めるものである。そしてこれは本件解職請求の署名の法定数千五百七十五個にはるかに超えていること明白であるから、本件賛否投票を行うになんらさしつかえがない。

第二について。 本件解職請求が党利党略に基いて行われているかどうか、解職請求の要旨に正当の事由があるかどうかということはいずれも法の趣意とするところはまず署名蒐集の過程における一般選挙人の公正なる判断に委かせ次でその窮極の判定を賛否投票の結果に委ねているものと解すべく、選挙管理委員会としてはその当否を審査する権限がなくその解職請求が成規の手続に則つてなされている以上、これを受理して賛否投票を執行しなければならない責務を有するのである。從て町の委員会が本件解職請求を受理し賛否投票の執行に及んだのは当然の措置でありなんらの違法がない。

第三について。 請求の要旨及び弁明の要旨の告示公表掲示は請求者と被請求者の主張事項をそのまゝ告示公表掲示するにすぎないのであつて、公平不公平の比較対象の問題として取上げるべき性質のものでないが、右両者の公示期間について一言すれば請求の要旨の方は地方自治法施行令第百十七條第百四條第二項の外になお同令第百十六條第九十八條第一項の適用があるから公示そのものが剥離しないかぎり両者の公示の期間に長短を生ずるとしてもなんら違法ではなく、又公示の場所と方法についていえばそれは健全なる社会常識によつて判断すべきことがらであり、町の委員会としては公示の場所の選定公示の方法において両者を不公平に取扱つたことは考えられないからこの点においてもなんら違法はない。

第四について。 投票立会人に関する第四表記載の事実はすべて認めるが町の委員会において投票立会人を選任した事実は絶対にない。元來本件のような解職賛否投票にあつては町長及び請求代表者側から各二人の投票立会人となるべき者を定めて投票管理者に届出ることができ(地方自治法施行令第百十八條地方自治法第三十條第一項参照)その者は当然投票立会人となるのであつて、さればこそ本件においても双方から第四表掲記の者が届出られたのである。たゞ投票開始時刻迄に参会する者が法定の最低数(三人)に達しないときは投票管理者は臨機の措置として当該投票区における選挙人名簿に記載された者の中から三人に達するまでの投票立会人を選任し投票に立会はしめなければならないのであつて(同法第三十條第十項本文参照)原告等主張の山本源次郎、東宝太郎、菅原正俊、東幸作、石原関太郎、坂口重太郎はかかる者に該当するのであり、かつ右の立会人は前記の資格を有するかぎりいずれの派に属するものであつてもさしつかえないのである。なお同一投票区における立会人は届出にかかる立会人と投票管理者が選任した立会人と併せて十人までは認められているから本件投票における立会人の数についてもなんらの違法はない。

次に届出立会人はいずれの側の者たるを問わず時刻に遅れて参会しても入場せしめて立会人としての職務を行わしむべきであること、原告主張のとおりである。そして本件においてもそのとおりに実行されたのである。第一投票区における町長側届出立会人たる志茂松太郎は参会しなかつたのであるから同区の投票管理者たる新谷雅一が同人の入場を拒んだ事実はありえない。

第五について。 第二投票所において到着番号札による投票が一票あつたことは事実であるが、これは一人の選挙人が選挙人名簿の対照を経て適法に入所したがさらに投票立会人の面前で選挙人名簿に対照された際受け取つた到着番号札と引換に投票用紙の交付を受けることなく、その者の無知不注意からその到着番号札に記載して投函したことに基因するのである。以上の事実は「投票用紙等使用数報告」「受付簿」「投票用紙交付簿」と投票用紙の残数調査及び到着番号札の点檢によつて確認されたところでありいわゆる盥廻し投票など勿論ない。そして右到着番号札による投票は選挙会において無効とされたのであるからこれを以て足りるのである。

以上いかなる観点からしても本件解職賛否投票の無効を來たすべき違法は少しもないから原告等の第一段の主張は排斥せらるべきである。

予備的主張について。 本件投票の結果として町の委員会の公表したとおり解職反対投票千百九十票があることは認める。その外に別紙第六表掲記の投票中檢Hの一票だけ反対投票として有効とすべきものであることを認める。なお別紙第五表掲記の投票中檢十七及び檢二十五の二票が無効であることも認める。しかし右両表におけるその余の投票についてはすべて原告等の主張を爭う。

右により明なように賛成投票は当初の千三百七十八票より二票減少し反対投票は千百九十票に一票増すだけのことであるから、結局本件賛否投票の結果の効力にはなんの影響もない。

(立証省略)

三、理  由

原告日吉宗能が穴水町長であること、その他の原告四名が本件解職投票の有権者であること、訴外滝川清次郎外原告等主張の十四名が町長解職請求の代表者となり町の委員会に対し町長の解職請求をなし、昭和二十五年一月十五日町の委員会はこれを選挙人の投票に附しその結果を原告等主張のとおり公表したこと、原告等がそれぞれその主張のように適法な異議訴願を経て適法に本訴提起に及んだことはすべて当事者間に爭のないところである。そして本訴は右解職賛否投票の違法無効を主張し予備的にその賛否投票の結果の無効を主張するいわゆる選挙爭訟に準ずる訴訟であること明白である。

そこでまず右解職賛否投票において原告等主張のようないろいろの違法の点があるかどうかを逐次判断する。

第一の(一)及び(二)について。 被告主張のとおり署名簿作成に関する地方自治法施行令第百十六條によつて準用せられる同第九十三條の規定は單に照合の便に供するためその作成方法を定めたにすぎないのであつて、同條のどこにもこれを分冊することを禁止した趣意は現われていない。そしてこのことは都道府縣に関する請求にあると市町村に関する請求にあるとなんら異るところがない。ただその分冊した署名簿には少なくとも解職請求書及び請求代表者証明書の写を添えていなければならないと解すべきところ、本件においては成立に爭のない甲第三号証の一乃至二十九(署名簿)及び証人滝川清次郎の証言によれば本件署名簿は初め四十冊に分冊作成されその各冊に表紙を附しその表面に「穴水町長解職請求者署名簿」と記載されておりその裏面に解職請求要旨及び請求代表者証明書が明瞭に活字で印刷されていることが認められ、かつ請求代表者等においてその各冊をそのまゝ携帶していわゆる署名運動を行つたことが認められるからこれにて必要にして充分であるというべくこれを最後に町長解職請求のために町の委員会え提出する際合冊したればとて少しも違法でない。よつて本主張は採用しがたい。

第一の(三)について。 いわゆる署名運動を爲す者は請求代表者に限るという趣意を規定したものはどこにもない。從て代人を使役して署名を蒐集するも違法でない。よつて本主張も採用しがたい。

第一の(四)及び(五)について。 こゝでは原告等は本件署名簿の署名中にはいろいろの理由で無効とすべきものが総数七百三十九個あり、これを署名簿の署名数二千六十八個(内一個は空白でありこの数は進行番号数と合致しかつ当事者間に爭がない)からさしひくと残りの数は千三百二十九個となりこれは法定数千五百七十五個(この数も当時者間に爭がない)に達しないから本件賛否投票は行うべきでないと主張するのである。

署名簿の有効署名の数が法定数に達しなければ賛否投票を行うべきでなく、これを行つても無効と解すべきこと論を俟たないところである。ところで本件署名簿の署名中別紙第一表記載の百八十個が無効なることについては当事者間に爭がないから、本件署名簿の有効署名が右法定数を割るとするためには右百八十個の外にさらに最少限度三百十四個の無効署名(右百八十個とこの三百十四個との合計四百九十四個を署名簿の前記署名数二千六百八個からさしひくと千五百七十四個となりこれは法定数に達しないこととなるわけである。)があるということにはならなければならない。

そこでさらに右三百十四個以上の無効署名があるかどうかを探究する。

そもそも署名が自署でなければならないことは事の性質上当然であり、自署でない署名は無効とすべきこと勿論である。そして原告等は自署でない署名としてこれを(四)の(1)の(イ)乃至(ホ)のとおり列挙している。その中(イ)則ち別紙第二表掲記の各組に属する署名はそれぞれ同一筆蹟であるから各組の中一個を除きその余は非自署として無効に計算すべきものであるという点についてしらべるに第二表中各組の下に証人の氏名を記した組に属する署名は当該証人の証言と、本件署名運動に際しては各選挙人に自署するように申向けた上その署名をさせた旨の証人松原將美、同林栄太郎、同三橋俊吉、同浜正雄の各証言及び成立に爭のない甲第三号証の一乃至二十九とを合せ考えれば同一筆蹟ではないと認めるのを相当とすべく、原告等援用の甲第八号証の一乃至百その他の証拠によるもこの認定をくつがえすには足らない。從て同一筆蹟であるとの理由によつては以上の各組に属する署名を無効とするわけにはいかない。たゞ同表中の残余の各組については同一筆蹟であるかどうかが疑わしいのであるが、仮りにそれらが原告主張のとおり同一筆蹟であるとしても、之によつて生ずる無効署名の数は原告主張の計算方法に從えば百四十一個となるにすぎない。

そこで次に同一筆蹟と主張するもの以外の自署でない署名としての原告主張のとおり(四)の(1)の(ロ)乃至(ホ)の無効署名(合計七十一個)があると仮定してこれに加うるにさらに原告主張の(四)の(2)(3)(4)の署名(合計六十八個)が仮りに全部無効であるとしても以上の無効署名の総数は二百八十個にすぎないこととなり、この数は前記三百十四個に及ばないこと三十四個である。しかしこのことから残余の署名が全部有効であると断ずることはできない。なんとなれば署名の無効が百八十個の外に更に三百十四個あれば解職請求が無効であるということは爾余の署名が有効であつても無効であつてもそうだということに過ぎないからである。けれども証人松原將美、同林栄太郎、同三橋俊吉、同浜正雄の各証言に徴すれば前記百八十個及び二百八十個を除く以外の署名は一應有効になされたものと認むべきであるから、畢竟有効署名の数が法定数(千五百七十五個)を割るとは認めがたく、この点に関する原告等の主張は採用するわけにはいかない。

第二について。 町長日吉宗能が原告等主張のような立派な人物であり、從つて本件解職請求には正当の事由がなく、專ら党利党略に基いて行われているとしても(そしてそれが不当であるとしても)そういうことは選挙人の自由な批判に任されるのであつて、そのことのために本件解職賛否投票の管理執行に関する手続の違法を來たすものではない。かりに請求の要旨の内容が虚構であつたとしてもそれは町長から提出された弁明書と対比して一般選挙人が自由なる意思に基いて判断すべきことがらであり、そのことのために請求を無効とする理由はない。要するに法定数の選挙人の署名によつて解職請求があつた以上一切の批判を選挙人の意思に一任しこれによつてその不当を決せしめるのが直接請求制度の本旨であると解すべきであるから本主張もまた理由がない。

第三について。 町の委員会が請求の要旨と弁明書とを掲示する場所として原告主張の(1)(2)(3)の三ケ所を選んだことは被告委員会においても明に爭わないところである。

そこでまず両者の掲示の期間について考えよう。

地方自治法第八十一條、第七十六條第二項同法施行令第百十六條、第九十六條、第九十八條第一項、第百十七條、第百四條等の規定を通覧すれば町の委員会が町長解職請求書を受理したときは一方直ちに請求代表者の住所氏名及び請求の要旨を告示し、かつ公衆の見易いその他の方法により公表し、他方二十日以内に町長から弁明書を徴さなければならないのであり、そして請求の要旨と弁明の要旨は投票の期日の告示の際併せてこれを告示するとともに投票所の入口その他公衆の見易い場所を選び原文のままこれを掲示しなければならないのである。

右により明なとおり請求の要旨の公表が弁明書の掲示より相当前に爲されることは法の要請であるからもし弁明書の提出されるまで請求の要旨の公表をさしひかえるとすれば却て違法となるのである。

そして本件において成立に爭のない甲第六号証の三によれば町の委員会が町長の解職請求を受理したのは昭和二十四年十二月四日であること明白であるから請求の要旨の公表(掲示)が成立に爭のない甲第六号証の二、乙第二十号証により明らかなように同月八日にされたことは少しも異とするには足らないし又証人田頭孝三、同滝川一郎の証言によれば弁明書は同月二十三日になつて漸く提出されたことが明であるから、その掲示がその以後であるべきことは当然である。尤も右各証拠に証人新谷雅一の証言を併せ考えると町の委員会の委員長新谷雅一は前記のとおり町長の弁明書を同月二十三日受理し直ちに同委員会書記滝川一郎に掲示用の弁明書の作成を命じたところ、同人は鋭意その作成に努め漸く同月二十六日午前中に完成したので、從前から掲示されていた請求の要旨をそのまゝ援用しそれと併せてこれを掲示した事情が認められるが、投票の期日の告示が同月二十四日になされている事実(このことは成立に爭のない乙第二十一号証により明白)にかんがみれば以上の措置を以て違法となすには当らないであろう。けだし地方自治法施行令第百四條第二項中に「併せて……とともに」とあるは請求の要旨及び弁明書の告示は格別としてその掲示については必ずしも「投票の期日の告示と同時」を要請しているものとは解しがたいからである。そして右掲示にかかる弁明書が掲示を始めてから数日にして剥ぎ取られ投票の日(昭和二十五年一月十五日)まで掲示されていなかつたということは証人崎出喜一、同寺本信吉及び原告本人日吉宗能の各訊問の結果を除いてはこれを認めるに足りる証拠は少しもなく、右三者の訊問の結果は証人滝川一郎同浜正雄の各証言に対比して信用することができない。

次に両者の掲示の場所と方法について考えよう。

成立に爭のない甲第二号証の一、同第二号証の二の一、二、同第十号証の一、二、同第十一号証に檢証(第一回)の結果及び証人滝川一郎、同浜正雄の各証言を合せ考えると町の委員会が請求の要旨と弁明書とを前に説明したとおり併せて掲示するに当つては両者とも同一の紙質及び巾の紙を用い、かつほぼ同様の大きさの文字を同様の体裁を以て記載し前記(1)の場所においては弁明書を請求の要旨の上段に、前記(2)の場所においては前者を後者の向つて右側に、前記(3)の場所においては前者を後者の向つて左側に(この場所だけは原告の自認するところ)それぞれ貼りつけおゝよそ平等と見られる程度に公衆の見易いようにして掲示したことが認められる。尤も右(1)の場所の弁明書が前記甲第二号証の一によれば一部扉より剥離しているが、証人浜正雄、同滝川一郎の各証言によるとそれは風のために一時剥がれただけで、直に元通りに貼り直されたことがうかがえるし又(2)の場所の弁明書は前記甲第十号証の二によれば冒頭の小部分が道路と直角に交わる川に面した板塀に折り曲げて貼りつけられかつその曲り目の所がいくらか破れているようであるが町長の「弁明の要旨」の部分は完全にはつきりと読みうるように道路に面して貼られていることが明白であるから不当とはいえない。

以上の認定に反する証人寺本信吉、同崎出喜一及び原告本人日吉宗能の各訊問の結果は信用しない。

これを要するに請求の要旨に比し弁明書を不当不公平に取扱つたということを認めるに足りる証拠は少しもないから原告等の本主張も採用するわけにはいかない。

第四の(一)について。 町長と請求代表者とは各投票区における選挙人名簿に記載された者の中から本人の承諾を得て「投票立会人となるべき者各二人」を定めて投票の期日前二日迄に投票管理者に届出ることができるのであり、その四人は当然に投票立会人となることは地方自治法施行令第百十八條地方自治法第八十五條第一項第三十條第一、二項によつて明白でありその届出立会人四人中の三人が投票所を開くべき時刻(以下定刻という)までに参会するかぎり(況んやその四人が参会するかぎり)外に立会人を選任しえないことは同法第三十條第十項本文の規定からみても明である。

そこで当事者間に爭のない別紙第四表を参照するに第一乃至第五投票区において届出立会人以外の者が投票立会人としての職務を行つているがこれはどういうわけであろうか。これを檢討する必要がある。

成立に爭のない乙第十一号乃至第十五号証によれば定刻までに参会した届出立会人は第一投票区においては谷口増太郎と中島利一、第二投票区においては岩田石太郎、第三投票区においては長豊明と前田新次、第四投票区においては堂ケ口宣七郎と片岡右近、第五投票区においては嘉門孝督と中橋八郎平であつたので、第一投票区においては山本源次郎、第二投票区においては菅原正俊と東宝太郎、第三投票区においては東幸作、第四投票区においては石原関太郎、第五投署区においては坂口重太郎をいずれも投票管理者において地方自治法第三十條第十項本文に則り職権を以て立会人に選任したことが明白であり、かつ右定刻迄に参加した届出立会人以外の届出立会人は定刻に遅れて参会したため(但し第一投票区における届出立会人志茂松太郎が立会人としての職務を行わなかつたのは次に説明するような事情に基く)結局立会人としての職務を行つた者は第四表最下段記載のとおりとなつたことが認められる。

たゞ本件においては投票管理者が立会人を選任するについては届出立会人にして定刻迄に参会しない者がある場合を慮り、予め適当と思はれる立会人となるべき者を物色して定刻迄に投票所に参集せしめておき、その者の中から前記のとおり立会人を選任したことが前記乙第十一号乃至第十五号証証人滝川一郎の証言、同証言により眞正に成立したと認められる甲第九号証証人新谷雅一の証言及び証人駒田貫次の証言の一部を合せることによつてうかがえるがそれはむしろ用意周到の措置として妥当なことと考えられる。

そして右選任立会人が請求代表者側の者ばかりであつたとしても一向さしつかえがないことは地方自治法第三十條第四項乃至第六項第九條第十項但書の規定を同法施行令第百十七條、第百九條において町長の解職投票に準用しない旨を定めていることに徴して明白である。

なお定刻迄に届出立会人がことごとく参会しなければ投票管理者は三人の立会人を選任する筋合であるから後刻届出立会人がすべて参会すれば同一投票区において同時に最高七人迄の立会人が職務を行うこととなる場合があるわけである。

以上の事実から明なように町の委員会が投票立会人を選任した事実は全くなく、從て原告等主張のように衆議院議員選挙法第二十四條を適用した事実はない。これを要するに立会人に関する措置においてなんらの違法がない。よつて本主張も採用しえない。

第四の(二)について。 前記乙第十一号証及び証人志茂松太郎同新谷雅一の各証言によれば第一投票区における町長の届出にかかる投票立会人志茂松太郎は投票当日定刻に遅れて(午前八時少し前)投票所に赴いたのであるが同人は何事か立腹していたため投票立会人としての職務を行おうとせず、投票を済ませたまゝ投票所を立去つたこと及び投票管理者たる新谷雅一において同人の参会を拒否した事実がないことが認められる。とすれば同人は自ら投票立会人としての権限を抛棄したものというべく同人に対する措置においてなんら違法がない。

よつて本主張も採用しがたい。

第五について。 本件投票に際して不正手段によるいわゆる盥廻し投票が行われたことを認めるに足りる証拠は少しもない。

原告等主張のような到着番号札による投票が一票あつたこと及びそれが無効であることは被告委員会も認めるところであるがこれがために盥廻し投票が行われたとみることはできない。よつて本主張も亦採用するに足らない。

以上説明したところによつて本件解職賛否投票にはなんらの違法がなくそれを無効とすることはできない。予備的主張について。

原告等は本件投票の選挙会において解職賛成投票千三百七十八票、解職反対投票千百九十票、無効投票八十七票と決定し町の委員会においてそのように公表したことに不服があり、眞実は賛成投票は千二百票、反対投票は千二百十四票であるから本件賛否投票の結果は無効であると主張し、被告委員会は眞正のところ賛成投票は千三百七十六票反対投票は千百九十一票となるだけであるから、本件賛否投票の結果に影響はないと主張する。よつて賛成反対の眞実の各票数を考究する。

まずいわゆる盥廻し投票による無効投票があるとの原告等の主張が理由のないことは既に前に説いたとおりである。

次に本件選挙会において決定した反対投票千百九十票が全部有効反対投票たることは当事者間に爭がない。

そして選挙会が賛成投票千三百七十八票と決定した投票(その数に誤算がないことは檢証(第二回)の結果明白)の中別紙第五表掲記の投票百七十八票を除いたその余の千二百票については弁論の全趣旨に徴し、原告等において有効賛成投票たることを明に爭わないものと認める。そこで右爭のある百七十八票をしらべるにその中、右第五表最下段において説明しているとおり檢証の結果当裁判所が有効賛成投票と認定したものが百六十三票ある。從て右千二百票と上記の百六十三票の合計千三百六十三票が本件における賛成投票の総数である。

これに対し反対投票の数如何というに前記の爭のない千百九十票にさらに別紙第六表中の爭のない檢Hの一票と檢証の結果当裁判所が有効反対投票と認定した同表中の檢I檢Jの二票を加えた合計千百九十三票が本件における反対投票の総数である。

なお無効投票の数をみるに本件選挙会において無効と決定した八十七票(この数に誤算がないこと檢証(第二回)の結果明白)の中第六表掲記の十七票をさしひいた残りの七十票が無効投票たることは弁論の全趣旨に徴し原告等において明に爭わないものと認める。これに檢証の結果当裁判所が第六表中無効と認定した十四票と第五表中無効と認定した十三票と同表中無効なることの爭なきもの二票を加えた合計九十九票がその総数である。

以上によつて賛成投票が有効投票(賛成千三百六十三票と反対千百九十三票の合計二千五百五十六票)の半数(千二百七十八票)に超えていることが明白であるから本件解職賛否投票の結果の効力は不動であり町長日吉宗能はその職を失うべきものである。

以上みてきた通り原告等の主張はすべて排斥を免れないものであるからその本訴請求はすべて失当としてこれを棄却すべく民事訴訟法第八十九條第九十三條を適用し主文のとおり判決する次第である。

(裁判官 中島奬 茶谷勇吉 白木伸)

(別表省略)

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