大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和26年(う)2031号・昭26年(う)2030号 判決

(一) 被告人村上は自動車運転免許証の作成に就ては総て其権限を委任せられて居たものであるから之が作成の権限を有し、従つて公文書不実記載ならば格別有形偽造罪としては無罪である。

(二) 被告人平尾は右免許証作成の実行々為を分担せず単に其作成を依頼したに過ぎないのであるから教唆犯としてならば格別共同正犯としては無罪である。

(中略)

と謂うにある

検事は控訴理由なしとして棄却を求めた。

依つて按ずるに原審引用挙示の各証拠に依れば、被告人村上は警察技手として宇治町公安委員会の交通関係の事務を執つて居た者で、同委員会の印章等も被告人に於て之を保管して居たことは弁護人の各所論の通り之を認めることができる。然しながら公務員が其上司の職務を代行することは法令上特別の定めある場合を除き、通常は其補助者として事実上の事務を代行するに過ぎずして法律上の代理権限を附与せられるものではないのである。この事は例令当該公務員に於て上司の印章等をも管理し、具体的に一一上司の許可を得ずして之を押捺し得る場合に於ても亦同様である、従つて被告人村上が宇治町公安委員長の承諾を得ずして虚偽の証明書を作成した本件の所為は素より刑法第百五十五条第一項の有形偽造罪を構成するものと謂わなければならない。

次に所謂共謀共同正犯なるものと教唆犯との区別に就て看るに、前者は共謀に係る数名の共同の意思を其中の或者をして実行せしめる関係に立つのであるが教唆犯は単に他人をして犯意を惹起せしめ又は之を強からしめる行為を指称する。原審引用挙示の各証拠を通看するに被告人平尾の所為は同村上を情義に絡んで半ば強制的に使役し以て被告人両名の共同意思を実現したと認め得る程度に立つているから此関係は単純な教唆では無く寧ろ共同正犯と断ずべきものである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!