大判例

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名古屋高等裁判所 昭和26年(う)505号 判決

原審公判調書によれば、原裁判所が検察官から所論起訴状記載の犯罪事実を立証する為の各書証に付、其の取調の請求があつたのに対し、同各書証に付之が取調を為したことは、所論と異り之を認め得られるけれども、斯くして原裁判所が取調を為した証拠中に、被告人伊藤保に対する司法警察員作成の供述調書計五通並原審相被告人大津豊に対する司法警察員作成の供述調書計三通が夫々存することは洵に所論の通りである。ところで原判決を閲すると、原判決が其の理由中証拠欄に於て、被告人伊藤保に対する原判示各事実を認定する為の証拠を挙示するに際つて、被告人伊藤保に対する司法警察員作成の供述調書四通、並原審相被告人大津豊に対する司法警察員作成の供述調書二通を夫々挙示して居ることは又所論の通りであつて、之を曩に説明した如く原裁判所に於て取調を為した被告人伊藤保に対する司法警察員作成の供述調書が計五通、原審相被告人大津豊に対する司法警察員作成の供述調書が計三通であることに鑑みると、原判決が其の理由中証拠欄に於て挙示した右被告人伊藤保に対する司法警察員作成の供述調書四通並原審相被告人大津豊に対する司法警察員作成の供述調書二通は、夫々果して原裁判所に於て取り調べた被告人伊藤保に対する司法警察員作成の供述調書五通並原審相被告人大津豊に対する司法警察員作成の供述調書三通中の孰れを指称するものであるか之を知るに由なきこと洵に所論の如くであり、斯の如きは原判決に理由を備えない違法あるものと謂うべく、従て此の点に関する論旨は其の理由がある。

次に原判決は被告人伊藤保に対する原判示各事実を認定するに際り、其の証拠欄に於て、各被告人に対する公判調書を援用する旨記載して居るが、原判決の該記載のみによつては、原判決に所謂右公判調書が本件記録中に編綴されて居る孰れの公判調書を指称するものであるか判別し難く、若し夫れ原判決が本件記録に編綴されて居る公判調書中移送前に於ける公判調書を援用して居るものとすれば、該公判調書に付原裁判所に於て証拠調が為された事跡は之を認め得ないから、同公判調書を援用して有罪事実を認定するが如きは、其の訴訟手続に法令の違反あるものと謂うべく、又原判決が本件記録に編綴されて居る公判調書中移送後の原審公判調書を援用したものとすれば、移送後の原審訴訟手続は審理の当初から裁判に至る迄の間、更新手続が為された事跡を認め得ない本件である以上、之が公判調書を証拠として援用するの余地は毫も存しないから、同公判調書を援用して有罪事実を認定するが如きことも亦訴訟手続に法令の違反あるものと謂わなければならぬ。而して右の如き違法は、孰れも判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、此の点に関する論旨も亦結局其の理由がある。

然り而して原判決に以上説明した如き各種の違法の廉が存する関係上、原判決によつては、原判決が被告人伊藤保に対し認定した罪と為るべき事実中所論起訴状記載の犯罪事実に該当する部分は勿論、其の余の部分に付いても、果して之を其の挙示する証拠中孰れによつて認定したものであるかを到底判別し得ないのであるから、原判決は其の理由中に於て、所論起訴状記載の犯罪事実に該当する罪と為るべき事実を認定するに際つて、之が証拠の挙示を遺脱して居る旨批難されることを避け難く、之を要するに原判決中被告人伊藤保に関する部分には此の点に於ても、理由を備えない違法あるものと断じなければならぬが故に、之と同趣旨の下に、原判決の右措置を攻撃する部分の論旨は結局理由がある。

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