名古屋高等裁判所 昭和26年(う)515号 判決
道路交通取締法は、第九条第一項に於て「自動車は公安委員会の運転免許を受けた者でなければ、これを運転してはならない」旨、同条第二項に於て「前項の規定による運転免許は、自動車運転者試験に合格した者に対し、運転免許証を交付して、これを行う」旨を各規定して、右に所謂運転免許証の交付を受けた者でなければ自動車運転の資格を持たない者である旨を定め、又道路交通取締令第四十八条第一項並に同令附則によれば自動車の運転免許を受けた者が其の運転免許証の交付を受けたときから、所定期間内に主たる運転地を管轄する公安委員会の運転免許証についての検査を受けなければ、その運転免許は効力を失う旨規定して居るが故に、縦令曩に自動車運転者試験に合格し、自動車の運転免許証の交付を受けた者であつても右道路交通取締令の定めるところに従い、所定期間内に自動車の運転免許証について検査を受けなかつたが為、其の運転免許が効力を失うに至つた以降に於ては其の効力を失うに至つた運転免許証を所持して居ようとも、将又曩に自動車運転者試験に合格した者であろうとも、茲に又前記道路交通取締法に定められた運転資格を持たない者に該当すると謂わなけばならぬ。而して法令に定められた運転の資格を持たないで自動車を運転した者は、道路交通取締法第七条に所謂無謀な操縦をしたものに該当し、同法第二十八条の罪責を免れ得ないのである。今之を本件に付いて観ると、原判決は被告人が自動車の運転免許を受けないで昭和二十五年十一月十八日午後九時四十五分頃愛第三、七〇三号小型四輪自動車を運転し、名古屋市中川区西古渡町二ノ一六地先路上より同市中区栄町六ノ一地先路上に至る約四粁の間を走行し無謀な操縦をなした旨の事実を認定の上、之を道路交通取締法第七条第一項第二十八条に問擬して居るのであるから、原判決が認定した事実の要旨は、被告人が道路交通取締法に定める運転の資格を有しないで原判示日時頃原判示自動車を原判示の如く操縦したものであると謂うに帰着するところ、原判決挙示の証拠によれば、原判示事実は優に証明し得べく、尤も被告人が所論のように自動車運転者試験に合格したものであり、且原判示自動車を運転した当時自動車の運転免許証を所持して居たことは原判決挙示の証拠により認め得られるけれども、一方又同証拠によれば、被告人が所持して居た右運転免許証は、被告人に於て道路交通取締令の定めるところに従い、所定の検査を受けなかつたが為、当時既に其の効力を失うに至つたものであることを認め得られるので、曩に説明したところにより、被告人は原判示の如く自動車を運転した当時道路交通取締法の定める之が運転の資格を持たなかつたものに帰着し、延いては斯る被告人が原判示のように自動車を運転した以上、被告人は原判示のように自動車を無謀に操縦したものと認定されるも亦巳むなきところであり、殊に本件訴訟記録並原裁判所に於て取り調べた証拠によるも原判決認定の事実に誤認の廉あることを発見し得ないので、原判決が右事実を認定の上、之を曩に摘録したような各法案に問擬したのは正当であつて、此の点に関する所論は其の理由がなく排斥を免れ得ない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)