名古屋高等裁判所 昭和26年(う)61号 判決
依つて按ずるに、原審第二回公判調書中証人小林淳一の供述記載並に司法警察員に対する被告人の供述調書の記載に依ると、本件犯行に際し被告人は傍にあつた右小林淳一所有の鑿を同人の仕立台に突き差し以て同人を畏怖せしめたことが窺はれる。尤も右小林の前記供述記載によれば、同人は主として「うるさい」と謂う考へから被告人に金三千円を交付したことが認められるが、凡そ恐喝罪に於ける畏怖の観念は強盗罪の場合と異なり、完全に相手方の意思を抑圧することを要するものではなく、財物を交付せしめる程度の心理的束縛を生ずれば足るものであるから、仮令被害者に於て或程度の打算的心理状態が動いたとしても恐喝罪を構成するや勿論である。