大判例

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名古屋高等裁判所 昭和26年(う)759号 判決

依つて按ずるに、中村鉱提出の押収目録書、中島治男提出の麻薬分析記録書及同人の麻薬分柝記録書訂正届の各記載を綜合考察すると、被告人の所持し、且つ押収せられた麻薬は何れも麻薬としての価値を具備していたものと認められるから此点に関する論旨は理由が無い。また施錠していたとしても箪笥の抽出しは衣類雑品等を保管する場所であつて、麻薬の貯蔵所としては極めて不適当な箇所である。惟ふに麻薬取締法第十六条に所謂「堅固な場所」とは、麻薬取締規則第四十八条の「安全な場所」又は昭和二十年勅令第五百四十二号麻薬の保管及受払に関する件第二条第二項の「銷鑰を具へたる場所」等の意を酌み、これよりも一層強固且つ安全な場所を指称するに外ならない。この法意に鑑みるときは日用品の保管場所である箪笥の抽出しは、麻薬取締法第十六条に所謂「堅固な場所」に該当しないものと謂はなければならない。従つて此点に関する論旨も亦理由が無い。然し検察官は当審に於て冒頭掲記の通り訴因を訂正したので、此点に就て考察するに控訴審に於ける訴因罰条の変更は(一)被告人をして審級の利益を失はしめる虞れがあり(二)控訴審は所謂事後審である建則から一見違法のようであるが、元来新刑事訴訟法は多分に当事者主義を包蔵すると共に、控訴審の性質も事後審とは謂いながら一面続審の性質を有することは同法第三百九十三条の規定に照して明であるから、控訴審に於ても同法第三百十二条所定の要件を具備し、且つ右変更が法律上被告人に不利益を来さず、然も右変更につき被告人及弁護人に異議が無ければ、訴因の訂正を許すものと解するを妥当とする。されば右訂正変更された訴因に基き、本件の事情を看るに、被告人が本件麻薬を所持するに至つた経過並に之を譲り渡した事情等総て弁護人所論の通り之を認めることができると共に、不当場所貯蔵の点もパンオピン一管に過ぎないのであるから、此点から看ると原審が被告人に対し懲役五月の実刑を科したことは重きに失すると謂はなければならない。

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