大判例

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名古屋高等裁判所 昭和26年(う)90号 判決

よつて先づ職権を以て、原判決の理由の当否に付いて調査すると、原判決によれば、原判決は其の挙示する証拠によつて、被告人は昭和二十五年七月三十一日午後五時頃豊橋市西幸町十九番地所在小笠原篤所有の西瓜畑に於て、同人所有の西瓜二個を窃取したが、たまたま同所附近を通行中の山本雅夫に発見され、同人及中野治男、村松勝等により逮捕せられ、豊橋市警察署北山派出所に連行される途中同日午後五時頃同市牧野町三十番地先路上に差しかかるや突然逃走をはかり同番地伊藤義宗方工場に隣接する柿畑に至つた時被告人を追跡してきた中野治男のため逮捕せられるようとするや、これを免れる為め、同人の右胸部乳房上方約二糎の部位二ケ所に全治迄約一週間を要する噛切傷を負わしめたものである旨の事実を認定の上、之を刑法第二百三十八条第二百四十条前段に問擬して居る。ところで窃盗犯人が逮捕を免れる為暴行を為した場合に強盗を以て論ぜられることは刑法第二百三十八条の規定するところであるけれども、其の趣旨は同規定の律意に照し、窃盗犯人が其の犯行に接着した新鮮な時及場所に於て、逮捕を免れる為暴行を為した場合に限られるものと解するを相当とすべく、今之を本件に付いて観ると、原判決認定の前記事実によれば、被告人が逮捕を免れる為暴行を為したのは、被告人が原判示のように窃盗行為を敢行した直後、一旦原判示山本雅夫、同中野治男、同村松勝等に逮捕された上、同人等に豊橋市警察署北山派出所に連行される途中のことに属し、然かも原判決挙示の証拠によれば、被告人が右の暴行を為した時は、被告人が前記山本雅夫、中野治男、村松勝等に逮捕されてから約三十分を経過して居るものの如くであり、又被告人が右の暴行を為した場所は、被告人が原判示窃盗行為を為した場所から十数丁を隔てて居るものの如く窺知されるので、是等の客観的事情に照し、被告人の右暴行は、未だ被告人の原判示窃盗行為に接着した新鮮な時及場所に於て為されたものとは做し難いが故に、被告人の右所為を捉え強盗を以て論じ得ないと同時に、縦令被告人が右暴行に因つて原判示のように傷害を負わせたものとするも、之を原判決説示の刑法第二百三十八条第二百四十条前段に問擬するに由なく、然らば原判決が被告人に対し冒頭掲記の如き原判示事実を認定した上、之を刑法第二百三十八条第二百四十条前段に問擬したのは、同法第二百三十八条の解釈を誤り、延いては之が事実認定に過誤あるに非ざれば其の理由にくいちがいの違法あるものと断ずるの外ない。

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