名古屋高等裁判所 昭和27年(う)1285号 判決
原判決によれば原審は被告人が政府以外のものであるのに昭和二十六年五月二十日頃及び同月二十五日頃の二回に岐阜県養老郡池辺村大場松永平次郎方において同人からその生産に係る粳精米二斗宛を法定の除外事由なく買受けたとの事実を認定する、資料として論旨指摘の(イ)(ロ)(ハ)の証拠を挙示していることは所論の通りである。而して右(イ)(ロ)はいづれも被告人の自白であり右(ハ)の書面は右自白の補強証拠とされているのであるが右書面は被告人以外の松永平次郎の作成した供述書及び同人の供述を裁判官及び検察官以外のものが録取したもので一件記録上明かなように刑事訴訟法第三百二十一条第一項第三号の場合にも該当せず又被告人及びその弁護人から証拠とする同意も得られなかつたもので原審検察官から証人松永平次郎の原審公判廷における証言の証明力を争うため同法第三百二十八条によつて提出された書面であるところ斯る書面は罪となるべき事実を認定する資料となし得ないものと解すべきを以て原審の処置は結局被告人の自白のみで罪となるべき事実を認定した違法があり右の違法は判決に影響を及ぼすべきこと明かであつてこの点において論旨は理由があり原判決は爾余の点を判断する迄もなく同法第三百九十七条第三百七十九条によつて破棄すべきものである。