名古屋高等裁判所 昭和27年(う)1350号 判決
二、更に右第二の(二)の事実についてその判示小切手は被告人が現金出納管理在任中その権限に基いて作成したものであり且つその作成は自己の利益を図りその任務に背いて本人たる政府に損害を与うべき背任的行為であり進んで右小切手による前示銀行からの金員引出によつて本人に損害を加えたことになるが既に説明したようにその当時被告人が前示銀行に対する政府預金を保管していた場合であれば右背任的行為は横領罪に吸収されて横領罪の一罪が成立する丈であるところその金員引出は昭和二十七年三月十三日であるから被告人がその後任者にその事務の引継を終り右銀行に対する政府預金保管の地位を離脱していたときであつて横領罪の成立する余地はなく又前示銀行からの金員引出は畢竟本人たる政府に損害を加うる所以であつて横領既遂の構成要件たる事実に属し別途に詐欺罪を以て問擬すべきものにあらず(大審院昭和八年(れ)第九七七号判決同年十二月十八日言渡判例集第十二巻刑事二三六〇頁参照)と解されるので右第二の(二)の事実は背任罪たるべきに拘らず原審がこれを以て単に詐欺罪としたのはこれが亦判決に影響を及ぼすこと明かな法令の解釈適用を誤つた違法があるというべきである。