名古屋高等裁判所 昭和27年(う)1517号 判決
「被告人等両名は共謀の上昭和二十七年七月中旬大脇蔵之介の依頼を受け、同人所有の名古屋市北区平安通り二の一番地所在の土地七十二坪の内三十六坪一合五勺を岡崎かのに売渡した代金十四万円を同女より受取り右大脇の為被告人等に於て保管中その頃擅に同区城東町一の十九番地所在の被告人等の店舗に於て着服横領した」旨の訴因を右の如く大脇蔵之介より依頼を受けた事実のないに拘らず、同人所有の前記土地の内三十六坪一合を代金十四万で売買方周旋すると申向けて不動産仲介業者大橋敏雄と前記岡崎かのを欺き買受方申出の右岡崎をして前同日に被告人等の前記店舗に於て手附金名下に金三万円、次いで同月二十一日に同区志賀町所在北区役所前大久保代理人事務所に於て残代金名下に金十一万円を夫々交付せしめて騙取したとの趣旨に訂正方許可しているのを捉えて、右訴因の訂正はその間に公訴事実の同一性を欠き許されないところだというに在るが、右両訴因は結局所有者大脇蔵之介より被告人等に対し売却方依頼の事実があつたとみるのと、かゝる依頼の事実はなかつたとみるのとの一点の相違よりして一はこれを横領とし他は詐欺とするに至つたもので、細部に亘れば両者に必ずしも一致しない部分を存しているものゝ、右訂正の前後を通じ被告人等に於て前記大脇所有の同一土地の売買代金として岡崎かのより受領した金十四万円を不正領得したものであるとの根本事実に於ては全く同一であるから右両訴因間に公訴事実の同一性が無いとの所論は当らず、原審第八回公判調書によると原審でも弁護人であつた本弁護人自身亦検察官の右訴因訂正の申出に異議なしと述べて居りこゝに右訂正許可の決定を為した原裁判所の措置には何等失当の廉はなく論旨は採用できない。