名古屋高等裁判所 昭和28年(う)1210号 判決
論旨は、被告人には、前科二犯あるに拘わらず、原判決には一犯のみを掲記して、刑法第五十九条を適用していないのは、法令の適用に誤があるというにある。訴訟記録並びに原審及び当審で取り調べた証拠によると、被告人は、昭和二十三年十一月八日名古屋地方裁判所において、窃盗罪により、懲役一年、三年間刑執行猶予の言渡を受け、次いで、昭和二十四年四月七日同裁判所において、同罪により、懲役二年(法定未決十七日通算)の判決を受けたので、前者の執行猶予の言渡は、昭和二十五年一月二十三日その取消決定があり、同月二十七日確定したもので、その執行状況は、昭和二十四年八月二十三日後者の懲役二年の刑の執行に着手し、昭和二十五年七月二十二日その執行を中断し、同月二十三日より前者の懲役一年の刑の執行に着手し、昭和二十六年七月二十二日その執行を終了し、引き続き、後者の残刑を同月二十三日より執行に着手し、同年十二月十五日仮出獄によつて釈放されたのであるが、その刑期は、昭和二十七年六月六日満了予定のところ、昭和二十七年四月二十八日減刑令により、同年四月二十七日刑期満了となつて、その執行を終つたものである。かように二個の刑を引き続き執行を受けて終了した後の犯罪は、再犯であると解するを相当とするから、原判決が刑法第五十九条を適用しなかつたことは相当である。もつとも、原判決が後者の前科を掲記しなかつたことは判示不十分のそしりはあるけれども、原審は、前記減刑令の適用あることに気付かずに、後者の刑の執行終了が昭和二十七年六月六日であると誤解し、本件犯行が同年五月十五日であるために、累犯の関係に立たないものとして、判決に掲記しなかつたものと推察される。然し、結局、原判決掲記の前科によつても、本件犯罪が再犯であることは疑がないので、原判決には、法令適用の誤はない。論旨は理由がない。