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名古屋高等裁判所 昭和28年(ツ)11号 判決 1953年10月31日

上告人 控訴人・原告 岸哲夫

訴訟代理人 鈴木貢 小沢秋二

被上告人 被控訴人・被告 今井佐右エ門

主文

本件上告は之を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人鈴木貢、同小沢秋二の上告理由は別紙記載の通りで之に対する当裁判所の判断は次の通りである。

鈴木代理人の上告理由について

原判決は原審証人小野寺宝一、同加藤徳雄、同宮地孝一、同鵜飼亀一、同川合保の各証言を綜合して一宮市が上告人に対し本件土地の換地を提供すべきことを申出た事実のないこと、本件調停が成立するに至つたのは上告人に於て一宮市が本件土地の換地を提供すべきものと信じたことに基くものでないこと、従て本件調停の成立につき上告人の主張するような要素の錯誤は存在しないことを認定したものであることは所論の通りであるが原判決挙示の右各証拠に依れば右の如き認定を為し得ないわけではないと同時に右証人川合保の証言、甲第一号証並本件調停条項等に依てまたこれらの証拠と上敍人証とを綜合しても必ずしも判示認定と反対の事実を認定しなければならないものでもない。

又原判決は本件調停条項第五項の意義及びこれと他の条項との関係を審理判断した上前記認定事実と相容れない事実はすべて之を排斥した趣旨と解するを相当とするから原判決には所論のような違法はなく論旨は畢竟原審の専権に属する事実認定の当否、証拠の取捨判断を批議するに過ぎないもので上告適法の理由となすに足りない。

小沢代理人の上告理由第一点について

控訴審に於ける口頭弁論の最初の期日の延期は顕著な事由が存しないときでも当事者の合意あるときは之を許すべきであるが当事者の合意がないときは顕著な事由の存する場合でなければならない。

而して右の顕著な事由とは病気其他止むことを得ない事由のため出廷し弁論をすることが出来ない場合を云い、事実及証拠についての調査が十分に行はれていないと云う丈では之に該当しないことは民事訴訟法第百五十二条第四項第五項民事訴訟の継続審理に関する規則第二十四条第二十二条の規定に徴し明かである。本件に於いて原審の第一回口頭弁論期日(昭和二十八年六月十七日)に上告代理人は出廷し同日受任したばかりであるから事実取調のため右期日の延期を求める旨申立たところ被上告代理人は事実取調につき充分の期間があつたから右期日延期の申立に同意出来ない旨述べたので原審は上告代理人の延期申立を却下し弁論を命じ引続き双方代理人に於て弁論をなし夫々控訴の趣旨、事実上の陳述並証拠の提出を為した上他に主張並立証なき旨述べたので原審は判決言渡期日を指定して弁論を終結したことは原審口頭弁論調書の記載に照し明瞭である。然らば上告代理人の期日延期申請に対し被上告代理人は同意しないし、受任早々で事実の取調がしたいとの事由は期日延期のための顕著な事由と云へないこと前記説明の通りであるから原審が上告人の延期申請を却下したのは正当な訴訟指揮権の範囲に属し毫も違法ではない、この事は請求異議の訴が所論のような性質を有していても他の訴訟と別異に取扱うべき理由とはならない。加之上告代理人は右期日に於て事実上の陳述証拠の提出を為した上他に主張並立証なき旨表明し弁論をしているのであるから同代理人の弁論は何等制限を受けていないこと明かである、論旨は徒らに原審の適法な職権の行使を非難するに過ぎないもので採用に値しない。

同第二点について

原判決挙示の証人加藤徳雄、同小野寺實一、同宮地孝一、同鵜飼亀一の各証言を信用するか否かは事実審裁判所の自由に決し得るところであつて、右各証人の供述が所論の如く被上告人の供述と看做され得るものなること、並該各証言は証拠価値なきものなることの経験法則又は論理上の法則があるわけではないから右各証言を事実認定の資料となし得ないことはない。論旨も亦原審の専権に属する証拠の取捨判断を論難するだけのもので上告適法の理由ではない。

仍て本件上告はその理由ないものと認め民事訴訟法第四百一条第八十九条第九十五条に則り主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 石谷三郎 裁判官 栗田源蔵)

鈴木代理人の上告理由

原判決は、その「理由」として、「控訴人(上告人)主張の如き調停調書が控訴人(上告人)及び被控訴人(被上告人)間に成立し、これに基き被控訴人(被上告人)が控訴人(上告人)主張の如く強制執行に着手したことは争がない」と説示した上、「原審(第一審)証人小野寺寳一、同加藤徳雄、同宮地孝一、同鵜飼亀一、同川合保の各尋問の結果を綜合すれば、一宮市が控訴人(上告人)に対し、本件土地の換地を提供すべき旨を申出た事実がないこと、本件調書が成立するに至つたのは控訴人(上告人)が一宮市が本件土地の換地を提供すべきものと信じたことに基くものでないこと、従つて本件調停調書が成立するにつき控訴人の主張するが如き要素の錯誤に関する事実が存在しないことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠は全くない」と説き、「以上の次第で控訴人(上告人)の主張は明らかに失当であり、その請求を棄却した原審(第一審)判決は正当であるから本件控訴は棄却する」と判示したのであるが、

一、原判決の挙示した証拠によつて「一宮市が上告人に対し本件土地の換地を提供すべき旨を明示的に申出た事実がないこと」は一応之を認め得るかもしれないが「本件調書が成立するに至つたのは上告人が一宮市が本件土地の換地を提供すべきものと信じたことに基くものでないこと、従つて本件調停調書が成立するにつき上告人主張の如き要素の錯誤に関する事実が存在していないこと」は到底これを認定することができない。却つて、本件における弁論の全趣旨によつて明らかなる、(イ)本件調停調書は、上告人が被上告人及び訴外一宮市を相手方として一宮簡易裁判所に申立てた同庁昭和二十六年(ニ)第二八号借地継続調停事件に付昭和二十六年六月二十日右三当事者間に成立したものであること、(ロ)本件調停調書には、(1) 上告人は被上告人に対し其の所有に係る本件土地を昭和二十七年十一月三十日限り上告人の費用を以て該宅地上に現存せる上告人所有の木造瓦葺二階建居宅一戸、木造亜鉛葦平屋建店舗、木造亜鉛葦平屋建自転車置場其の他之に附随せる地上物件一切を収去の上明渡すこと、(2) 上告人は被上告人に対し前項記載の土地に対する昭和二十六年六月一日より右明渡に至る迄一ケ月一坪八円六十銭の割合に依る損害金を明渡と同時に支払うこと、(3) 上告人は第一項記載の建物を他に譲渡、売却、賃貸及び他人を之に同居せしめてはならぬ。(4) 上告人が前各項記載に係る義務を怠りたる場合は被上告人より直ちに強制執行を受くるも異議なく且被上告人に於て第一項記載の建物其の他地上物件を任意に処分して本件明渡費用に充当するも上告人に於て異議なきこと、(5) 一宮市は前各項に記載する上告人の義務履行につき協力すること、などの調停条項(当事者間の合意)が記載されている事実に、原判決挙示の各証拠並に第一審証人川合操の証言によつて成立を認め得る甲第一号証の記載に徴し看取出来る。前記調停事件の係属中に上告人が本件土地を明渡す場合の移転先(所謂換地)について苦慮していたこと、これに対して一宮市関係者(当局者)側から移転先について斡旋してやつてもよいような話の出たことのある事実(このことから調停条項第五項は、一宮市が上告人に対し、上告人が意を安んじて本件土地明渡義務を履行し得るよう移転先の提供斡旋をして協力援助することを約したものと解し得るであろう)を綜合すれば、上告人が本件調停事件において、被上告人に対し昭和二十七年十一月三十日限り本件土地を地上に存する一切の建築物を自己の費用を以て収去の上明渡すべき旨の意思表示をなすに至つたのは(原判決に所謂「本件調書が成立するに至つたのは」)「上告人が一宮市において(前記調停条項第五項の如く上告人に協力すべきことを約したので)本件土地の換地を提供すべきものと信じた(誤信であつたが)ことに基くもの」であること、「従つて本件調停調書が成立するにつき(本件調停調書に記載された条項即ち当事者の合意、就中上告人の意思表示につき)上告人の主張するが如き重大な錯誤に関する事実(それは上告人の意思決定をなすに至つた事情に関しての認識と現実との齟齬の存在であつても)が存在している」ことを推認し得るのであるから結局原判決は虚無の証拠によつて事実を解定した違法があるか(採証法則違反)、審理不尽に基く理由不備の違法があるものと思料する。

二、上告人の本訴異議の理由は要するに、本件調停調書に記載された上告人の本件土地、明渡に関する条項即ち意思表示は錯誤に基くものであるから無効であり、従つて本件債務名義たる調停調書は実質上無効であつて執行力を有しないというにあるのであるが、上告人が本件調停において土地明渡の意思決定をなすに至つた事情に関し錯誤のあつたことは前述の如くであるから、それが所謂要素の錯誤であるか、動機又は縁由の錯誤であるか、仮に動機の錯誤であつてもその動機が明示せられ意思表示の内容とせられたならば意思表示の錯誤となり法律行為の無効を招来することがあるので、本件調停において訴外一宮市が上告人及び被上告人に対し約した「上告人の義務履行に協力する」(調停条項第五項)との意義如何、この条項と他の条項(上告人の被上告人に対して約した条項)との関係如何等の点を審究することは本件を判断するに最も重要なことである。然るに原判決はこれらの点について何等の判断をしていないのは審理不尽又は理由不備の違法があると思料する。

以上の理由により原判決は到底破棄を免れないものと信ずる。

小沢代理人の上告理由

一、原審判決ハ弁論ヲ不当ニ制限シ以テ言渡ヲナシタル違法ノ判決ナリ、原審ハ昭和二十八年六月五日第一回ノ口頭弁論ニ於テ控訴人ニ対スル口頭弁論ノ期日ノ呼出ヲ懈怠シ更ニ職権ヲ以テ第二回口頭弁論期日ヲ同年六月十七日午前十時ニ決定シ同日控訴人ハ出廷シタルモ弁論ハ第一審以来本件ノ訴訟行為ヲ委任シタル大池弁護士ノ出廷ヲウルコトト確信シ居リタルニ同弁護士ハ第二審ニ於ケル口頭弁論ノ受任ヲ俄然拒否シタルニヨリ已ム無ク当日小沢弁護士ヲ選任シ訴訟行為ノ一切ヲ委任シ出廷ヲエタルモノナリ従ツテ控訴代理人ハ如上ノ顛末ニヨリ一件記録ヲ出廷前一見シタルノミニテ従来ノ事実関係等ニ付テ全クノ不知ノ情況ニアリ仍ツテ同口頭弁論ニ於テ新ナル訴訟資料提出ニ付キ事実取調ベノタメ同日ノ口頭弁論ノ続行申請ヲナシタル処原審ハ之ヲ却下シ弁論ノ続行ヲ命ジタルモノナリ

抑モ本件ハ請求異議事件ニシテ民事訴訟法第五百四十五条第三項ハ債務者ガ数個ノ異議ヲ有スルトキハ同時ニ之ヲ主張スルコトヲ要スト規定シ数個ノ異議ノ請求ハ同一ノ給付義務ニ関スル限リ一ノ訴訟ニ於テ提起スベキコトヲ命ジ居ルモノニシテ債務者ガ執行ヲ控エ異議ヲ主張スル以上総テノ角度ヨリ之ヲ主張スベキ筋合ニヨリ同一ノ債務名義ニ対シ再応繰返シ異議ノ訴ヲ許スコトハ執行ヲ妨害スル虞アレバナリ、而シテ本条ハ異議ノ態様トシテ異ル種類ノ請求ノ間ニ別訴ノ禁止ヲナシタルモノニシテ人事訴訟手続法第九条ト同様ノ取扱ヲナシタルモノナリ、即チ一ノ請求ヲ提起シタル以上ハ他ノ請求モ之ト併合シ又ハ訴ノ変更ニヨリ之ヲ追加シウルト共ニ其訴訟ニ付テ本案判決確定シタル後併合若シクハ変更ニヨリ提起シ得タル他ノ異議ノ請求モ提起シエサル趣旨ナリ従ツテ同時ノ意義ニ関シテハ其訴訟手続ニ於テ訴ノ変更可能ノ時期ニ提起スレバ之ヲ許容サルベキモノナリ(大判昭和六年十一月十四日言渡民集一〇巻一〇五二頁御参照)、従ツテ控訴人ハ原審裁判所ニ於テモ尚ホ異議ノ態様トシテ異ル種類ノ請求ハ之ニ追加ヲ許容サルベク之ニ関スル訴訟資料ノ一切ヲ提出シウル処ナリ、仍ツテ控訴代理人ハ右法律上許容サルベキ手続ノ践行上事実ノ取調ベノタメ弁論ノ続行申請ヲナシタルニ被控訴人ヨリ時機ニ後レタル攻撃方法ノ提出ヲ構スルモノナリト抗争シ原審ガ之ヲ認メテ右申請ヲ却下シタルモノナリ、然ルニ前陳ノ如ク控訴人ハ素々法律上ノ知識ヲ有セザルガ故ニ第一審以来大池弁護士ヲ依頼シ訴訟行為ノ百般ヲ委任シ原審ニ於テモ本件強制執行ノ停止命令申請手続亦同氏ニヨリ践行サレ引続キ原審ノ訴訟行為一切ヲ遂行サルル旨依頼シ置キタル関係上其実現ヲ希待確信居リタルニ不測モ口頭弁論直前ニ至リ之ヲ拒否サルルニ至リ全ク困却施術ノ方法無之立場ニ至リタルモノニシテ然モ事実上第一回ノ口頭弁論期日ニシテ故意又ハ重大ナル過失ニヨリ為メニ訴訟ノ完結ヲ遅延シタルモノナリト謂フヲエザルモノナリ、被控訴人ハ控訴人ガ本件土地ヲ不法ニ占拠シ徒ラニ抗争ヲ続ケ訴訟ノ完結遅延ニ総ユル方法ヲ画策シ以テ地上所在ノ家屋ヲ賃貸シテ不法ノ利益ヲ獲得シ居ルモノナリト主張スル処ナルモ控訴人ハ別項記載ノ如キ状況ニアリ第一審ニ於ケル訴訟手続ノ追行ヲ見ルモ敢テ殊更訴訟完結ノ遅延ヲセシムルガ如キ抗争ヲナシタル事実無之コトハ一件記録ニ徴シテ明ニシテ控訴人ノ法律上ノ抗争ハ憲法上之ヲ保障サレ居ル権利ニシテ被控訴人ハ控訴人ガ法律上許容サレ居ル手続ヲ践行スルニ当リ其ノ都度訴訟完結ヲ遅延セシムルモノナリト隠ニ陽ニ之ヲ固執スルモノニシテ故意ニ控訴人ガ之ヲ遅延セシムルモノニハ断ジテ無之又訴訟代理人ノ選任ニ付キ前陳ノ経緯ヲ有スルモノニシテ重大ナル過失アリト云ウヲエザルモノナリ

右次第ナルニ原審裁判所ハ被控訴人ノ主張ヲ容認シ控訴代理人ノ弁論続行申請ヲ却下シタルモノニシテ之レ控訴人ノ訴訟資料提出ニ関スル弁論ヲ不当ニ制限シタル違法アルモノナリ

二、原審判決ハ一般経験則ニ反スル違法ノ判決ナリ、本件土地ハ第一審証人加藤徳雄ノ証言ニ「記録ニヨルト戦時中強制疎開ニヨリ市ガ今井ヨリ借受ケ夫ヲ昭和二十年十一月頃岸ガ土地使用願ヲ市ニ提出ジ同年十一月六日頃疎開空地臨時使用許可書ヲ市ガ与ヘテ本件土地ヲ岸ニ貸与シタコトニナツテ居ル又市ニ於テ必要ヲ生ジタルトキハ何時ニテモ原形ニ復シテ返還スルコトヲ条件トシテ臨時使用許可ヲ与ヘタルモノデアル」ト述べ一時的使用貸借ノ如キ供述ヲナシ被控訴人ハ岸ニ貸与シタル事実ナシト主張シ居ルモ(被控訴人第一審答弁書)控訴人ガ最初ニ十坪ヲ借受ケタル処同番地ノ土地ニテ市ガ使用シ居リタル二十八坪二合七勺分ノ借地料ヲモ負担スベシトノ要求ニヨリ合計四十八坪二合七勺ノ土地ニ付キ借地料ヲ市ニ納入シ(市ノ会計上事実ハ市ノ収入トナリ居ラズ)其後引続キ被控訴人ニ直接賃料ヲ支払ヒ居リタルニ昭和二十五年十月頃一宮市ハ突如内容証明郵便ヲ以テ明渡ノ通知ヲナシ来リ控訴人ハ直チニ借地継続ヲ懇願シタルモ頑トシテ之ヲ拒否シ都市計劃ニ基キ表道路拡張ニヨリ控訴人ハ率先之ニ協力シ本件土地上ニ存在スル家屋ヲ約二間後方ニ移転スルコトトナリ家屋全体ヲ宙ニ浮カセテ引去工事ヲ開始中不法ニモ其周囲ニバリケートヲ張リ廻シ以テ控訴人ノ出入ヲ禁ジ家屋ハ此侭移動スベカラズト実ニ不法極マル措置ニ出デラレ万策尽キ止ム無ク昭和二十六年四月一日一宮市並ニ控訴人ヲ相手取リ第一審裁判所ニ調停ノ申立ヲナシタルモノニシテ控訴人ハ市ノ承諾ヲ得テ本件土地ニ数十万円ノ資金ヲ以テ家屋建築之ヲ所有シ土地ノ継続賃借ノ成否ハ控訴人ニ重大ナル影響ヲ有スルモノナリ、敢テ他ニ之ヲ貸与シテ其収入ヲ利得セン為メニ抗争ヲナスモノニ非ズ反ツテ被控訴人ハ終戦後土地ノ格外ナル値上リ殊ニ道路拡張ニヨリ急速ノ高騰ニ之ヲ他ニ売却シテ一獲千金ヲ構想シ市ニ貸与ノ責任上明渡ノ協力ヲ極力迫リ居リ、市亦其責任上トシテ自ラハ格別ノ必要ニ迫リ居ラサルモ其ノ明渡ヲ断乎敢行スベク協調シ居ルモノニシテ第一審ノ証人加藤徳蔵、小野寺豊一、宮地孝一、鵜飼亀一等ノ各証言ハ事実上本件当事者タル被控訴人ノ供述トモ看做サレウルモノニシテ換地ニ関スル証言ハ全ク措信シエサル証拠価値ナキモノ(控訴人ハ各証言ヲ利益ニ援用シタルモノナリ)普通一般ノ経験則ニ徴シテ明ナル処ナリ

民事訴訟法第一八五条ハ自由心証主義ノ下ニ口頭弁論ノ全趣旨及ビ証拠ノ結果ヲ斟酌シ自由ナル心証ニヨリ云々ト規定ス即チ実体法ノ適法ノ適用ヲ受クベキ事実ノ認定ハ原則トシテ事実審判官ノ自由ナル裁量判断ニ委サレタルモノナルモ之レ審判官ノ擅恣ヲ許容スルモノニ非ズ一定ノ手続法令ノ指示スル方式ノ制約外ニ於テナサレ又ハ通常一般ノ経験法則ヲ無視シテ之ヲナスコトハ全ク認容セラレサル処ナリ、一面ニ於テ訴訟法的ノ法律的制約アリ一面ニ事実認定ノ思惟ガ吾人ノ経験法則及ビ論理上ノ法則ニ違反セザルモノナラザル可ラズ事実上訴訟ノ当事者ニ等シキ市ノ吏員ノ証言ニシテ仮令宣誓ノ下ニ証言ヲナスモ相手方ニ有利ノ証言ヲ提供セナルコトハ日常吾人ノ一般経験則ニ徴シテ明ナル事実ナルニ之カ証言ヲ限定資料トナシタル原審判決ハ全ク通常一般ノ経験則ニ反スル違法ノ判決ナリト謂ハサルベカラス

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