大判例

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名古屋高等裁判所 昭和28年(ネ)225号 判決

控訴人は原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。旨の判決を求め、被控訴人は主文第一項同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、被控訴人において本件総会決議は商法第三百四十三条の要件に違反してなされた旨の主張は独立の請求原因とするものではないと釈明し、控訴人において昭和二十七年五月十七日の取締役会において「原告解任」の空気があつたとのその「原告解任」とは被控訴人の社長並びに取締役たる地位の解任の趣旨である。又「本件株主総会招集通知には取締役解任の件との表示はないが右は取締役増員の件と関連する」というのは右通知には「取締役解任の件」という記載はなかつたが取締役解任は取締役増員の会議の目的事項と関連するから右通知におのづから取締役解任の件も含まれているとの趣旨である。従つて右通知によつて取締役解任の件の通知があつたと見るべきであり、仮にそうでないにしても決議の内容、会社の現況その他一切の事情を斟酌し本件決議取消請求は棄却さるべきものと主張するのであると述べた外原判決摘示と同一であるから茲にこれを引用する。<立証省略>

三、理  由

被控訴人が従前控訴会社の株主であり、且つ取締役であつたところ控訴会社は昭和二十七年六月二十日その各株主に対し同年七月五日に臨時株主総会を開催すべきこと及びその会議の目的事項を第一号議案として定款変更の件並びに第二号議案として取締役増員の件を夫々通知したこと然るに右七月五日の臨時株主総会において被控訴人の取締役たることを解任する旨の決議がなされたことは当事者間に争のないところである。

而して被控訴人は右臨時株主総会における被控訴人の取締役たることを解任する旨の決議は予め各株主に通知のなかつたことであるから、右決議は商法第二百三十二条第二項によつて違法であり取消さるべきものであると主張するのに対し、控訴会社は右臨時株主総会の会議の目的事項の通知に取締役解任の件という記載のなかつたことは認めるが、その記載に係る取締役増員の件というのにおのづから取締役解任の件も包含されておるものであるから結局取締役解任の件も通知されたものであると抗争するにより按ずるに取締役増員は従来からの取締役を解任することに関係なく行いうることであるのみならず、単に取締役増員とのみいえば従来の取締役はこれをその儘として変更せず、新に取締役を増員することと解するのが普通であるから、取締役増員の件なる通知にはおのづから取締役解任の件の通知を包含するという見解は採用し難く、従つて本件係争の決議は予め株主に通知のなかつた事項についてなされたものとなさざるを得ないのである。

然り而して控訴会社は、更に現行商法においても改正前の商法第二百五十一条の規定が存すると同様に、右決議が予め通知のなかつた事項についてなされたものとしても裁判所はその決議の内容、会社の現況その他一切の事情を斟酌し棄却さるべきものであると主張するが、現行商法からは改正前の第二百五十一条が特に削除され、且つこれと同旨の規定の存しないことから考えて現行商法は控訴会社主張の如き裁量を許さざるに到つたものと解するのが相当であり、且つ予め決議事項の通知をなさなかつたということは、これを極めて軽微な手続的瑕疵と同視することはできないのであつて、予め通知のなされなかつた事項についてなされた決議に対し、株主又は取締役において不服の存する以上、右決議は到底取消を免れ得ないものと解するの外はない。

仍て右の如き裁量が許されることを前提とするその余の点はこれを判断する迄もなく、本件決議はこれを取消すべく被控訴人の請求を認容した原判決は結局において正当なるに帰着し、本件控訴は理由のないものとしてこれを棄却すべきものであるから、民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条に則つて主文のとおり判決する。

(裁判官 山田市平 伊藤寅男 岩崎善四郎)

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