大判例

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名古屋高等裁判所 昭和28年(ネ)365号・昭28年(ネ)291号 判決

「調停条項第二項は『当事者双方は誠意を以て転居先を物色し適当な住家のあり次第被告等は移転すること』と記載しているところ、右文言は『誠意を以て』とか、『適当な』とか道徳的な或は抽象的な辞句を用い、その意図するところを法律的に明確に捉えることは仲々難かしく、少くとも之を執行することはできないものであるが、その第一項に於て原被告間に本件家屋につき賃貸借関係の存在することを認めたことと、右調停の成立した事情を考慮して勘案すれば、右第二項は次の通りに解するのを相当とする。即ち原告は被告に対し調停成立後も本件家屋一戸を賃貸するものとし、その期間については特別に確定的な定めをしないが、被告の方に於ては転居先を探し適当な住家が見付かれば至急之に移転して本件家屋を明渡すべきものとする。但し、現下の住宅事情等よりみて、かかる適当な家を見付けて転居することは仲々困難なことであり、之を被告に法律的な義務として負わしめることは酷であり、又之では被告も承諾しないところであるから道徳的な意味に於て『誠意『を以て之を履行することとし、他面原告は右家屋の明渡を求める必要と利益が大であるから、原告の方に於て被告の転居先を物色し、適当な住家を探し求めて之を被告に提供したならば、被告は右家屋に転居して本件家屋を明渡すべきものとする。その『適当な』とは、その家屋の置位、大きさ並びに営業関係諸般の事情につき本件家屋と転居先の家屋とを比較考慮して、社会通念上相当するところのものを言い、その相当なる観念は客観的基準に依るべきものであり、仮令原被告間に於て転居先家屋が適当なりや否やに付き意見の不一致を来すことがあつても右条項は不能となるべきものではない。依て、原告に於て転居先を探し本件家屋と社会観念上相当する家屋を被告に提供した時は、被告に於ては之に移転して本件家屋を明渡すべき義務を負うのである。此の義務は法的の義務であつて此の点に於て右第二項は法的効力有するものである。

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