名古屋高等裁判所 昭和29年(う)173号 判決
原判決は、第一、第二、第三の事実として焼酎の密造行為を、第四の事実として焼酎醪の密造行為を、第五、第六の事実として清酒の密造行為を、第七の事実として清酒醪の密造行為を、第八の事実として清酒密造の準備行為を各認定し、以上の各行為は、清酒密造の目的を以て、その意思を連続して、同一人が同一場所において、日時を近接して同一方法により、同種行為を繰り返えして行つたが、内その一部については、清酒若くは焼酎の各酒類製造の目的を遂げ、或一部については製造の過程中検挙のため醪の製造に終り、又準備したところを検挙せられた一連の同種の所為であるから、本件は情状において重い清酒製造罪の包括一罪であるとしているが、右の各密造及び準備行為は、昭和二十九年三月二十五日頃から同年五月十五日頃までの間に、同一場所で行われたものであるとするも、各酒類及び醪の仕込並に製造日時、材料、器具等は異つて居り、原判決引用の証拠によれば、材料も仕込の都度調達したことが明らかに認められるので、原判決第一乃至第八の各行為は、夫々の独立の行為であり各個独立の犯罪を構成するものと認めなければならない。被告人が最初から酒類の密造を、企図し、所謂犯意継続していたとするも、継続犯の規定が廃止された以上、各別個独立の行為を目して、一罪と解することはできない。もつとも焼酎又は清酒製造の過程として、一部は醪のまま残し、他は、焼酎又清酒に仕上げていたときには、焼酎又は清酒の製造と醪の製造とを別個独立のものと見ずに包括的な一個の行為と見るべきであるが本件のように原判示第一乃至第八の各所為は、何れを独立の行為であつて、他の行為の前提又は準備行為と認められないものであるから、本件においては、八個の犯罪が独立に成立していると認めなければならない。原判決が包括一罪としたのは、犯罪の個数を誤り、酒税法第六十一条の解釈適用を誤つた法令違反があり、この違反は、判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決は、この点で破棄を免れない。論旨は理由がある。