大判例

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名古屋高等裁判所 昭和29年(う)202号 判決

論旨は、原審適用の昭和二十四年政令第三八九号連合国占領軍財産等収受所持禁止令は、わが国の統治権が占領軍の管理下にあつた当時は、日本国憲法にかかわりなく憲法外に於て所謂超憲法的効力を有したものであるとしても、平和条約発効と共に当然失効したもので、昭和二十七年法律第八一号にその後も右政令の効力を維持する旨規定せるは憲法に違反し、同年法律第一三七号の規定も事後立法として違憲無効とゆうべく、前記政令を所謂限時法とも解し得ないので、本事案に対しては犯罪後刑の廃止があつた場合に該るものとして免訴の言渡が為さるべきであるから、原判決は法令の適用を誤つたものとして破棄を免れないとゆうに在る。

然し昭和二十四年政令第三八九号連合国占領軍財産等収受所持禁止令は昭和二十年勅令第五四二号に基き制定せられたものではあるが、昭和二十五年政令第三二五号の如きとは異り本政令の規定形式、内容に格別日本国憲法に違反せる節はなく、昭和二十七年四月十一日法律第八一号により基本法たる前記昭和二十年勅令第五四二号は同月二十八日平和条約の発効と共に廃止せられたけれども、本政令は同法律により右平和条約発効の日から暫定的に百八十日を限つて法律としての効力を有するものとせられ、次で右百八十日の期間の満了を待たず、昭和二十七年五月七日法律第一三七号を以て廃止せられると共に、同法施行前にした行為に対する罰則の適用についてはなお従前の例によることとせられたものである。

ところで平和条約発生以前に於ける本件昭和二十四年政令第三八九号に違反の罪は、同令第一条の軍票に関するもの以外、昭和二七年四月二十八日政令第一一七号の大赦令により一切赦免せられ、また平和条約発効後は占領軍の消滅と共にいわゆる占領軍物資は存在しなくなる関係上、前記昭和二十七年法律第八一号、第一三七号に拘らず、今日に於ては占領軍物資の所持等に関し、本件昭和二十四年政令第三八九号を適用する余地は全くないが、本件で問題とせられている米軍々票の如き、前記昭和二十七年法律第一三七号による同政令の廃止後は、昭和二十七年政令第一二七号、その基本法たる外国為替及び外国貿易管理法により今日迄引続きその所持を規制せられる関係に在り、前記の如く占領当時に於ける昭和二十四年政令第三八九号第一条違反の軍票の不法譲受、所持等の罪が特に大赦令より除外せられ、平和条約発効後も昭和二十七年法律第八一号を以て暫定的に同政令に法律としての効力を認め、同年法律第一三七号を以て同政令の廃止後もその廃止前に於ける罰則の適用は従前の通りと規定しているのは、この種軍票については平和条約発効の前後を通じ、外国為替及び外国貿易管理法第一条に見える如き趣旨の下に取締の必要が認めらるるに因るものと解され、右昭和二十七年法律第八一号に違憲の節はなく、また同年法律第一三七号が所論の如くいわゆる事後立法に該るものとも認め得ないから、連合国占領軍のわが国占領期間中に於ける被告人の米軍軍票の譲受につき昭和二十四年政令第三八九号を適用した原審の措置は正当で、論旨は採用の限りではない。

(裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 栗田源蔵 裁判官 山口正章)

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