名古屋高等裁判所 昭和30年(う)410号・昭30年(う)412号・昭30年(う)411号 判決
公訴事実は訴因を明示して記載しなければならない。訴因を明示するには他の訴因と紛れない程度に具体的に犯罪の日時、場所、方法等を記職しなければならないことは刑事訴訟法第二百五十六条により明らかである。然るに本件昭和三十年二月十九日附起訴状記載の第一の(二)の(2)の公訴事実(原判示第二の(二)の(2)に該当)は「被告人は自動三輪車の免許を受けた運転者であるが、昭和二十九年六月十日頃主たる運転地を変更したに拘らず、後の主たる運転地を管轄する公安委員会に十日以内に届け出で免許証に変更に係る事項の記載を受けなかつた」(原判決の記載又同じ)というのであるが之は犯罪の日時が具体的に表示してあるのみで、その他犯罪の構成要件に付き具体的な記載を欠き、訴因を明示したものということはできないし、又この重大な瑕疵はその後の補充訂正により治癒され得ない。従つて右公訴は訴因を明示しない不適法なものとして公訴を棄却すべきであるに拘らず、原審がこの点を看過したのは違法であり、破棄すべきである。
(裁判長判事 高城運七 判事 柳沢節夫 判事 赤間鎮雄)