名古屋高等裁判所 昭和30年(う)768号 判決
論旨は、被告人の本件施療行為は医業類似行為ではなく、又営業としてなしたものではないから、本法違反とならないもので、原判決には事実の誤認があるというのである。よつて審案するに、あん摩師はり師きゆう師及び柔道整復師法は、第一条において、医師以外の者であん摩、はり、きゆう又は柔道整復を業としようとする者は、夫々あん摩師免許、はり師免許、きゆう師免許又は柔道整復師免許を受けなければならない旨を規定し、更に第十二条において、何人も、第一条に掲げるものを除く外、医業類似行為を業としてはならないと規定している。被告人が本件において行つた施療行為は、疾病の患部に新聞紙片を八つ折にしたものをあて、その上を「ほう」の木の丸棒の一端に火を点じたもので押えて、疾病を治療するという方法であつて、この方法による施療行為を原判示のようになしたことは、被告人の認めるところであり、原判決挙示のその余の証拠によつて、これを認めるに十分である。そして、右方法による施療行為は、本法にいうあん摩、はり、きゆう又は柔道整復の術には該当しないと解することができるけれども、疾病治療の方法として行つた右施療行為は、本法第十二条に所謂医業類似行為に該当すると解するを相当とする。而して、被告人が原判示のように四名の患者に対し、数十回に亘つて、右施療行為を反覆して行つた行為は、これを業としてなしたものというを妨げないものであり、所謂営利の目的の有無を問わないものというべきである。被告人は、自から患者の医療を妨げたり又自から進んで施療を勧誘したことがないことを主張しているが、右のような点は本件事犯の成否には何等影響を及ぼさない。そして、被告人が医師その他本法第一条の免許を受けていないことは、被告人の自認するところであるから、被告人は本法第十二条の医業類似行為を業としてなしたという違反の刑責を負わなければならない。記録を精査するも、原判決には事実の誤認はないので、論旨は、いずれも、理由がない。
(裁判長裁判官 石坂修一 裁判官 高橋嘉平 裁判官 大友要助)