名古屋高等裁判所 昭和31年(う)45号 判決
原判決がその摘示にかかる前科受刑の事実を認定しながら之に対応する被告人の前科調書を証拠の標目に掲げていないことは所論の通りであるそこで記録及原判決を精査し検討してみるに原判決挙示の証拠の内前科受刑事実に関するものは被告人の検察官に対する昭和三十年六月二十八日附供述調書のみであるが該調書のみによつては原判決摘示の前科受刑の事実を未だ具体的に認定することが出来ず本件に於ては累犯加重の理由となる各前科受刑の事実は刑事訴訟法第三百三十五条第一項に所謂罪となるべき事実そのものではないが該事実に基いて刑を加重する場合においては判文に於て之を判示し且之に対応する証拠の標目を示さなければならないものと解すべきところ原判決は前叙の通り累犯加重の理由となる事実を摘示し且累犯加重の法条を適用しながら該事実に対応する証拠の標目を示していないのであるから該判決は刑事訴訟法第四十四条第一項第三百三十五条第一項に違反し判決に理由を附さなかつた違法があると謂わなければならないから此の論旨は理由があり原判決は爾余の控訴趣意を判断する迄もなく破棄を免れない。
(裁判長判事 影山正雄 判事 栗田源蔵 判事 石田恵一)