大判例

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名古屋高等裁判所 昭和31年(う)665号 判決

原判決挙示の証拠を総合すると、優に原判示のとおり被告人の重大な過失により炭火の過熱が因でボール箱入原符に引火、更にその自席の木机に延焼したこと及び被告人が仮睡から醒め、これを発見したときにはまだ充分これを消し止め得る状態にあつたことが確認できるのであるから、被告人としては当然そのとき右を消し止め、少くともこれに全力を尽すべき法律上の義務があつたものというべきで、このことは所論のように当夜被告人が宿直員であつたかどうか、又は当夜の正規の宿直員が他に居合わせたかどうかにかかわりがないのである。そして被告人はその際そのまま事態を放置すれば火勢が急速に拡大し、よつて営業所の建物はもとよりこれに隣接する諸建物にまで延焼、焼燬するに至るべきことを気付きながら、これを容認する心意のもとに、何ら適当の処置を講じないで漫然その場を逃げ出し、よつて原判示のような焼燬の結果を発生させたことが認定されるのであるから、被告人がその消火義務に違背した不作為にもとずく焼燬につき放火罪の刑責を負うべきことは多言を要しない。従つてこれと同旨に出た原判決の事実認定は相当であり、記録を調査しても、原判決には何ら所論のような事実を誤認した違法は存しない。論旨は理由がない。

(裁判長判事 吉村国作 判事 柳沢節夫 判事 中浜辰男)

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