名古屋高等裁判所 昭和34年(う)174号 判決 1959年8月10日
被告人 松村正
主文
原判決中被告人松村正に関する部分を破棄する。
同被告人を懲役参月に処する。
理由
論旨第一点ないし第三点(事実誤認、法令適用の誤)について
(一) 原判決挙示の各証拠を綜合すると、原判示の強要並びに恐喝未遂の事実を認定するに十分である。
(二) 恐喝罪は強要罪に対しては特別罪たる関係があるものと認むべきであるから、恐喝罪の成立しない場合には強要罪は成立するが恐喝罪の成立する場合には別に強要罪は成立しないものと解するを相当とする。
本件についてこれをみるに、恐喝未遂罪の成立することは前段認定により明らかであるから、したがつて別に強要罪は成立しない。
されば、原判文に徴し明らかなように、原判決が右強要罪の成立をも認めた上同罪と恐喝未遂罪とを併合罪として処断したのは法令の適用を誤つたもので、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決はこの点において破棄を免れない。
(その余の判決理由は省略する。)
(裁判官 影山正雄 水島亀松 谷口正孝)