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名古屋高等裁判所 昭和37年(く)31号 1963年2月07日

主文

原決定を取消す。

本件を名古屋家庭裁判所へ差し戻す。

理由

本件抗告申立の趣旨は少年が差しだした抗告申立書に記載されているとおりであるから、ここにこれを引用するが、これに対しつぎのように判断する。

所論に鑑み記録を精査するに、少年の本件非行の内容は原決定にみられるように、工員の寮から現金四、九〇〇円在中の財布一個を窃取したことと、公衆の目に触れる方法で売春の勧誘をしたことの二件であつて、その非行性はそれほど根深いものでもないようだが、少年の養父、母は世間態を恥じその引取の意思のないことを申し出たため、原裁判所も少年を中等少年院に送致するほかなしとして、原決定がなされるにいたつたものとおもわれる。しかしながら、原決定後少年の実父北○信○の差し出した上申書によると、少年は親族協議の結果、祖父がこれを引取り、その膝下において十分監督指導し、将来再び過を犯させないよう親族一同協力することを約した事実が窺われる。してみると、少年をいま直ちに中等少年院におくるよりは、温い肉親の情愛のもとに、少年に更生の機会を与えることがむしろ適当とおもわれるので、少年法第三三条第二項に則り原決定を取消し、本件を原裁判所たる名古屋家庭裁判所に差し戻すこととし主文のとおり決定する。

(裁判長判事 小林登一 判事 成田薫 判事 斎藤寿)

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