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名古屋高等裁判所 昭和42年(ネ)69号 判決 1967年12月18日

半田市南末広町一三番地

控訴人

中村卯助

同所

控訴人

藤本玉江

右両名訴訟代理人弁護士

橋本福松

朽名幸雄

名古屋市中川区西日置町四丁目三番地

被控訴人

愛知交通株式会社

右代表者代表取締役

近藤三郎

右訴訟代理人弁護士

高橋正蔵

辻巻真

辻巻淑子

右当事者間の昭和四二年(ネ)第六九号金員支払請求控訴事件について当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人ら代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出援用及び書証の認否は、控訴人ら代理人において当審証人親宏こと仙田允宏同中山登美子の各尋問を求め、被控訴代理人において乙第四号証の成立は知らないと答えたほかは、原判決摘示事実と同一であるからここにこれを引用する。

理由

当審が被控訴人の請求を認容する理由は原判決理由中「本件簿外定期預金は控訴人中村卯助において訴外中山信之からタクシー営業の名義貸しの保証金として預り預金したものであつて、右両者間の関係終了とともに右訴外人に返還したため同控訴人の所得に帰したものではなかつた」との同控訴人の主張に対する判断部分(原判決一二枚目の表二行目下より八字目から同枚目の一〇行目下より四字目まで)を左記のとおり訂正するほか、原判決理由と同一であるからここにこれを引用する。

すなわち、当審証人仙田允宏、同中山登美子の各証言に乙第四号証を総合すれば、昭和二七年六月頃旅客自動車運送業を経営していた被控訴人の当時の代表者であつた控訴人中村卯助が訴外中山信之に対し被控訴人の大須営業所の営業権利を貸与し、爾来同訴外人において同営業所の実質的経営をしていたこと、その際右営業権貸借に関して右訴外人から控訴人中村に対しいくばくかの金が差入れられ、昭和三三年一一月頃右貸借関係終了のときには同控訴人が右訴外人に支払うべき金額が二七一万余円に達しており、同年末から翌昭和三四年四月頃にかけてこれが同控訴人から右訴外人に支払われたことを一応窺うことができないではないけれども、さらに進んで、控訴人中村において訴外中山から受領し同訴外人に返還した前示金員が本件簿外定期預金に該当するとの点を証する証拠は原審における控訴人中村の本人尋問の結果をおいてはなく、この点に関する同本人尋問の結果は、前掲証拠により認められる前記差入れられた金が名義貸の始まつた昭和二七年頃から昭和三三年頃までの間増減し浮動していた事実、同控訴人から右訴外人に金員の支払われた時期が当事者に争のない本件簿外預金解約の日である昭和三五年五月七日、同月十六日との間に一年ないし一年半の時間的間隔がある事実等に徴し、遽かにこれに信をおき難く、控訴人の前記主張事実を認定せしめるに足る心証をひくに至らない。

以上の理由により、被控訴人の請求を認容した原判決は相当であつて本件控訴は理由がないので民事訴訟法第三八四条によりこれを棄却し、控訴費用につき同法第九五条・第八九条・第九三条第一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 県宏 裁判官 可知鴻平 裁判官 杉浦龍二郎)

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