名古屋高等裁判所 昭和42年(行コ)2号 判決 1968年1月25日
控訴人 山田勝郎
被控訴人 農林大臣
訴訟代理人 川本権祐 外三名
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 <省略>
理由
一、控訴人は、本件土地(名古屋市北区大野町四丁目一九番田三三〇平方メートル)につき被控訴人が農地法第八〇条により訴外山田ふすゐ外三名に対し昭和四〇年一二月二〇日にした売払処分を行政処分であるとしてこれが取消を求め本訴に及んでいることは控訴人の主張により明らかである。しかしながらもし、右売払処分が控訴人の主張のように行政処分であるとすれば、右売払処分の取消の訴は、農地法第八五条の二、行政不服審査法第六条行政事件訴訟法第八条により同処分についての異議の申立に対する決定を経た後でなければ提起することができないことになるところ、右決定を経たことについてはこれを認める足る資料がないから、本訴は不適法ということになる。しかし、当裁判所は農地法第八〇条による売払は、行政処分でなく私法行為であると解する。その理由は、同条は、農地法により国有となつた特殊の普通財産を管理処分するにつき特別の方法を定め、農林大臣にその権限を付与したものであつて、同条による売払は公権力の行使に関するものでなく私法上の法律行為と解するのを相当とするからである。従つて、本訴には行政事件訴訟法第八条の適用はなく、本訴を不適法とする理由がない。
二、右のとおり、農地法第八〇条による売払は私法上の法律行為であるから、仮に本件土地につき前記日時被控訴人が同条により訴外山田ふすゐ外三名に対しなした売払に関し控訴人主張のような事実があつたとしても、右売払の取消を求めることのできないこと明白であるから、右事実の存否について判断するまでもなく、控訴人の請求は失当として棄却を免れない。
三、以上の次第ゆえ、右と同一結論に出た原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却すべく、民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 成田薫 布谷憲治 黒木美朝)