名古屋高等裁判所 昭和44年(行コ)4号 判決 1971年6月18日
名古屋市中区栄五丁目一八番二〇号
控訴人
伊藤美津子
右訴訟代理人弁護士
山口源一
同
高木修
同市中区三の丸三丁目三番二号
被控訴人
名古屋中税務署長
下郷礼雄
右指定代理人
松沢智
同
井原光雄
同
大榎春雄
同
蒲谷暲
右当事者間の昭和四四年(行コ)第四号所得税決定処分取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人訴訟代理人は「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対し昭和四一年五月一八日付で控訴人の昭和三六年度分所得税に関してなした決定処分のうち、所得金額四一八、〇〇〇円を超える部分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人指定代理人は主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張ならびに証拠関係は左のとおり附加するほか原判決事実摘示のとおりであるから、ここにその記載を引用する。ただし原判決二枚目表九行目中訴外富士精機株式会社とあるを訴外株式会社富士精機工業所と訂正する。
控訴人訴訟代理人は、当審において、新たに証人安藤守、同青木栄一、同米本美佐子、同米本宏の各証言を援用し、乙第一四号証の成立は不知であると述べ、被控訴人指定代理人において、新たに乙第一四号証を提出し、甲第六ないし同第八号証の成立を認める、同第五号証の一ないし六二の成立は不知であると述べた。
当裁判所は職権で控訴人本人の尋問をなした。
理由
当裁判所も、控訴人は原判決添付物件目録記載の本件土地を、昭和三六年四月初旬ごろ、訴外富士精機に代金一七〇万円で売却し、その代金中一〇〇万円は同月六日富士精機振出にかかる同額の小切手で残七〇万円は同月一五日現金でそれぞれ受領したものと判断する。その理由は原判決の説示するところと同様であるのでここにその理由欄の記載を引用する。控訴人は本件土地を代金七〇万円で富士精機の代表者安藤守個人に売却したと主張するが、当裁判所の措信しない原審ならびに当審における控訴人本人尋問の結果を措いて他にその事実を認めさせるに足る適切な証拠はない。
従つて、被控訴人が控訴人の昭和三六年度における譲渡所得の算定にあたり、本件土地の譲渡価格を一七〇万円と認定し、右価格から当事者間争いない本件土地の取得価格三九九、〇〇〇円および特別控除額一五万円を差引いた残額の一〇分の五にあたる五七五、〇〇〇円を以て本件譲渡所得金額と決定したこと、および右譲渡所得金額に当事者間争いない同年度の控訴人の給与所得額三一八、〇〇〇円を加えた八九三、五〇〇円をもつて原告の総所得金額と決定した被控訴人の本件課税処分は適法である。
そこで控訴人の本件控訴は失当として棄却することにし、訴訟費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条により、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 西川正世 裁判官 丸山武夫 裁判官 山田義光)