名古屋高等裁判所 昭和44年(行コ)8号 判決 1970年12月22日
名古屋市中区丸の内一丁目一四番一八号
控訴人
坂野勝憲
同
市中区三の丸三丁目三番二号
被控訴人
名古屋国税局長
小田村四郎
右同所
被控訴人
名古屋中税務署長
下郷礼雄
右両名指定代理人
松沢智
同
西村金義
同
石田柾夫
同
内山正信
右当事者間の昭和四四年(行コ)第八号課税処分取消等控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人は「原判決を取消す。被控訴人名古屋国税局長が控訴人に対し昭和四〇年二月二六日付通知をもつてなした昭和三六、同三七年度の所得税審査裁決を取消す。被控訴人名古屋中税務署長が控訴人に対し昭和三九年四月二〇日付通知をもつてなした昭和三六年度分更正処分は総所得金額四〇〇、〇〇〇円、所得税額四、〇〇〇円を超える部分につき、昭和三七年度分総所得金額五、三九七、八五〇円、所得税額一、七五一、七六〇円との更正処分につきいずれもこれを取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら指定代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述並びに証拠の提出、援用および書証の認否は、控訴人において、「本件に関連せる訴外東亜産業株式会社は昭和三八年五月より業績とみに悪化し、昭和四三年九月より休業を続け、昭和四四年三月倒産し、現在はその整理の途上にある。従つて本件土地の譲渡所得については、昭和三六年七月二〇日付国税庁長官通達による「直資五八他(例規)」に該当する。」と述べ、新たに甲第一九、第二〇号証の各一ないし三を提出し、当審における証人佐藤茂敏の証言を援用し、被控訴人ら指定代理人において、控訴人の右主張事実を否認する。甲第一九、第二〇号証の各一ないし三の成立はいずれも認めると述べた外は、原判決事実摘示(但し原判決一〇枚目裏末行目に「申告納税額」とあるを「更正された所得税額」と訂正する)のとおりであるからこれを引用する。
理由
当裁判所の審理判断によつても、控訴人の被控訴人名古屋中税務署長に対する本訴請求は理由がなく、被控訴人名古屋国税局長に対する訴えを却下すべきものと認める。そしてその理由は、左記のとおり附加する外は、原判決がその「理由」の部において説示するところと同様であるから、ここに右理由記載を引用する。
(一)、控訴人が当審で新たに提出した甲第一九、第二〇号証の一ないし三および当審証人佐藤茂敏の証言によるも、右に引用した原審の認定を動かすに至らない。
(二)、控訴人は本件に関連せる訴外東亜産業株式会社は昭和三八年五月より業績とみに悪化し、昭和四三年九月より休業を続け、昭和四四年三月倒産し、現在はその整理の途上にある。従つて本件土地の譲渡所得については昭和三六年七月二〇日付国税庁長官通達による「直資五八他(例規)」に該当する旨主張するが、右訴外会社の営業状態が控訴人の右主張のとおりであつたとしても、昭和三六年八月三〇日の本件(1)、(2)の土地の譲渡代金(買収金)八、四四三、五八五円は、その受入れのころ、控訴人がその生活費として費消しあるいは右訴外会社に運転資金として貸付けたもので、右訴外会社の債務の弁済にあてられたものではなく、従つて本件(1)、(2)の土地の譲渡所得については前記通達「直資五八他(例規)」に該当しないこと、また昭和三七年五月八日の本件(3)の土地の譲渡代金一三、〇五〇、〇〇〇円もその受入れのころ、控訴人が一部をその生活費として費消し、大部分を右訴外会社に郁転資金として貸付けたもので、保証債務を履行するため資産の譲渡があつた場合に当たらず、従つて本件(3)の土地の譲渡所得については旧所得税法(昭和三七年法律第四四号)第一〇条の六第二項および同法施行規則第一二条の二〇の特例の場合に該当しないこといずれも原判決の示すとおりであるから、控訴人の前記主張は採用できない。
そうすれば、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 広瀬友信 裁判官 大和勇美 裁判長裁判官福島逸雄は退官につき、署名捺印することができない。裁判官 広瀬友信)