名古屋高等裁判所 昭和44年(行コ)8号 決定 1970年6月20日
名古屋市中区丸の内一四番一八号
申立人
(控訴人) 坂野勝憲
同市中区三の丸三丁目三番二号
相手方(被控訴人)
名古屋国税局長
大田満男
右同所
相手方(被控訴人)
名古屋中税務署長
土井実
右両名指定代理人
松沢智
同
高崎武義
同
中原勇
同
石田柾夫
右当事者間の昭和四四年行コ第八号課税処分取消等請求控訴事件について、当裁判所は、申立人(控訴人)の文書提出命令につき、次のとおり決定する。
主文
申立人(控訴人)の本件申立てを却下する。
理由
申立人(控訴人、以下控訴人という)の本件申立ては別紙記載のとおりであり、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
控訴人が本件で提出を求めている文書が現在名古屋中税務署所得税課に保管され、相手方、被控訴人、以下被控訴人という)名古屋中税務署長がこれを所持していることは原審証人小久保裕同加藤光夫同伊藤稔雄の各証言によつて認められる。然しながら右各証人の証言に徴すれば、本件各文書は被控訴人名古量中税務署長が本件課税処分(昭和三六年分および昭和三七年分各所得税の更正処分並びに過少申告加算税賦課決定処分)及び控訴人の異議申立てに対しこれが理由の有無を審理決定を行なうに当り、同被控訴人所属の担当職員が控訴人の譲渡所得額等につき調査した際、自から収集し作成した書類であつて、結局は行政庁たる被控訴人名古屋中税務署長がもつぱら自己使用のために作成した内部的資料に過ぎないことが認められるから、このような文書は民事訴訟法第三一二条三号にいう「挙証者の利益のために作成された文書」又は「挙証者と文書の所持者との間の法律関係につき作成された文書」のいずれにも当らないものと解するのを相当とする。
そうすれば控訴人の本件文書提出命令の申立てはその理由がないものというべきであるから、これを却下することとし、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 福島逸雄 裁判官 広瀬友信 裁判官 大和勇美)
文書提出命令の申立
一、文書の表示
(一) 昭和三六年度所得税の課税に対して最初に調査した、その資料書
(二) 昭和三七年度所得税の課税に対して最初に調査した、その資料書
(三) 昭和三六年度および昭和三七年度所得税の課税決定に対して、控訴人よりなした異議申立に対し棄却処分(甲第一号証の一、二)した、その経緯書
(四) 昭和三七年度所得税の課税に対して、控訴人が取得した本件物件(名古屋市中区伏見町四三坪五〇)の元所有者橘本一三外六名の調査記録書
二、右文書の明細および趣旨
右(一)につき
(1) 甲第一九号証の一(昭和三六年分所得税の決定通知書および加算税の賦課決定通知書)
本件課税に対する第一回の調査事項、すなわち小久保裕が担当者となり課税額を決定した経路およびその明細書
(2) 甲第一九号証の二(昭和三六年分所得税の更正通知書および加算税の変更決定通知書)
前記甲第一九号証の一に対して簡単な取消処分になつているが、今少し誠意ある明細書の提出を申立てる。
(3) 甲第一九号証の三(昭和三六年分所得税の更正通知書および加算税の賦課決定通知書)
前記甲第一九号証の二を取消して後、再度の決定通知書であるが、どのような方法により調査したか綿密な調査資料の提出を申立てる。
右(二)につき
(1) 甲第二〇号証の一(昭和三七年分所得税の決定通知書および加算税の賦課決定通知書)
本年度分課税に対する第一回の調査事項にして、加藤光夫が担当者となり課税額を決定したが、その調査の明細書
(2) 甲第二〇号証の二(昭和三七年分所得税の更正通知書および加算税の変更決定通知書)
前記甲第一九号証の二と共に昭和三九年四月一六日付を以つて前記甲第二〇号証の一に対して取消処分が通告されているが、その調査の明細書
(3) 甲第二〇号証の三(昭和三七年分所得税の更正通知書および加算税の賦課決定通知書)
昭和三九年四月二〇日付更正決定書。どのように調査した結果かその明細書
右(三)につき
控訴人の異議申立に対して棄却処分した当時の調査記録書(担当者伊藤稔雄)
三、証すべき事実
本件課税は当時の名古屋中税務署員の僅か数一〇分の調査が基本となり決定された事実および甲第一号証の一二の異議申立てに対する棄却処分が粗雑な手順によりなされた机上調査であり、又事務処理である事実。
四、文書の所持者
名古屋中税務署所得課
五、文書提出義務の原因
民事訴訟法第三一二条三号