名古屋高等裁判所 昭和45年(行コ)4号 判決 1971年3月23日
名古屋市中川区富田町新家九三八番地の一
控訴人
堂田敬仁
同市同区高杉町一丁目三〇番地
控訴人
小島進
右両名訴訟代理人弁護士
安藤巌
同市同区西古渡町六丁目八番地
被控訴人
中川税務署長 宮尾典
被控訴人
国
右代表者法務大臣
植木庚子郎
右両名指定代理人
服部勝彦
同
大榎春雄
同
高橋健吉
同
酒井常雄
右当事者間の昭和四五年(行コ)第四号所得税額決定取消並に損害賠償請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人中川税務署長が控訴人堂田敬仁に対し昭和四〇年七月二〇日付をもつてなした同控訴人の昭和三八年分所得税の決定および無申告加算税賦課決定を取り消す。被控訴人国は控訴人堂田敬仁に対し金一〇万円、控訴人小島進に対し金一万円ならびに右各金員に対する本件訴状送達の習日以降完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用および書証の認否は、控訴代理人において控訴人堂田敬仁の昭和三八年分所得金額が金六〇万円であることは争わないと述べ、当審における控訴人小島進本人尋問の結果を援用したほかは原判決事実摘示のとおりであるから、ここにこれを引用する。
理由
当裁判所の判断によつても、控訴人らの本訴請求はいずれも失当であるから、これを棄却すべきである。その理由は、次に附加するほか原判決理由説示のとおりであるから、ここにこれを引用する。
(一) 控訴人堂田敬仁の昭和三八年分所得金額が金六〇万円であることは当事者間に争いがない。
(二) 当審における控訴人小島進本人尋問の結果中中川税務署においては従来所得税の確定申告をしない者に対し常に積極的に申告期限後においても確定申告をするよう指導していた旨の供述部分は、原審証人森篤の証言と対比して揩信し難い。
(三) 控訴人らは中川税務署長が昭和四〇年法律第三三号による改正前の所得税法施行当時においても申告期限後に所得税の確定申告書および遅延理由書の提出があれば常に配偶者控除および扶養控除を認めていた旨主張するが、原審および当審における控訴人小島進本人尋問の結果中右の主張に添う部分は、原審証人森篤、同杉山旭の各証言中、同署長は昭和四〇年の前記法改正以前においては期限後申告者に対しては遅延期間が短い場合および申告者の病気、長期旅行等の場合で申告遅延につきやむをえない事由があると認めた場合にのみ右の諸控除を許容する取扱いをしていた旨の各証言部分と対比して揩信し難く、成立に争いのない甲第一ないし第一一号証によつても右主張事実を認めるに足りず、他に右主張事実を認めるに足る証拠はない。
(四) 原審における控訴人堂田敬仁本人尋問の結果によつても、同控訴人が昭和三八年分所得が金六〇万円であつたにもかかわらず昭和四〇年七月本件決定を受けるまで確定申告をしなかつたことにつき前記認定のようなやむを得ない事由が存したことを認めることはできない。
(五) 以上説示したところ(原判決理由第二項中の説示を含む)によれば、中川税務署長が控訴人堂田に対し昭和三八年分所得税の確定申告をするよう指導することなく配偶者控除および扶養控除を認めないで本件決定をしたことが不平等な取扱いであるとは認められないから、同控訴人が民主商工会の会員であるため不平等な取扱いを受けた旨の控訴人らの主張はその前提を欠き、理由がない。
してみると控訴人らの各請求を棄却した原判決は結局相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却すべきである。
よつて、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥村義雄 裁判官 広瀬友信 裁判官 大和勇美)