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名古屋高等裁判所 昭和46年(行コ)18号 中間判決 1974年4月09日

第一審原告及び控訴人(以下単に控訴人という。) 櫟木久助

右訴訟代理人弁護士 鈴木正路

第一審被告及び被控訴人(以下単に被控訴人という。) 木村喜代二

第一審被告及び被控訴人(以下単に被控訴人という。) 木村藤十郎

右両名訴訟代理人弁護士 花村美樹

右両名参加人(以下単に参加人という。)

愛知県知事 桑原幹根

右訴訟代理人弁護士 花村美樹

右指定代理人 山田純雄

同 竹本光雄

主文

本件につき弁護士花村美樹の被控訴人両名及び参加人の訴訟代理は適法である。

事実

一、控訴代理人は、本件につき弁護士花村美樹は被控訴人両名及び参加人の訴訟代理をすることは許されないと主張し、その理由として、「第一審は、被告両名の申立に基づき、行政事件訴訟法四五条一項、二三条一項により、処分庁である愛知県知事を本件訴訟に参加させたが、右参加は、民事訴訟法六四条の補助参加とは異なり、参加人に自主独立の立場において訴訟行為をさせることによって、行政事件の適正迅速な解決を図ろうとするものであるから、参加人は当事者の一方と利害共通の立場に立つことは許されないものである。従って、弁護士花村美樹が被控訴人両名及び参加人の訴訟代理を兼任することは民法一〇八条の精神に反するから不適法である。」旨陳述した。

二、被控訴人両名及び参加人訴訟代理人らは、弁護士花村美樹の被控訴人両名及び参加人の訴訟代理は適法である旨陳述した。

理由

一、第一審が被告両名の申立に基づき行政事件訴訟法四五条一項、二三条一項により処分庁である愛知県知事を本件訴訟に参加させたこと、弁護士花村美樹が被控訴人両名及び参加人の訴訟代理を兼任するに至ったことは本件記録上明らかである。

二、ところで、行政事件訴訟法四五条一項、二三条一項の趣旨は、処分等の存否または効力が争われているかぎり、その処分等の成立並びに有効につき責任のある当該行政庁を訴訟に参加させて争点に関する証拠資料等を提出させ、適正な審理裁判を実現しようとするにあるが、その性質上、処分の成立並びに有効を主張する当事者の側に参加することを予定しているものと解すべきである。そして、当該行政庁を参加させる旨の裁判所の決定があったときは、その行政庁には、行政事件訴訟法四五条二項により民事訴訟法六九条の規定が準用されるので、訴訟追行上、補助参加人に準ずる地位が与えられ、参加の時における訴訟の程度に従って、攻撃または防禦の方法の提出等一切の訴訟行為をすることができるが、被参加人の訴訟に不利益な行為はできず、被参加人の行為と牴触する行為をしても無効とされるのであるから、参加人と被参加人とは、その訴訟につき利害を共通にするものと言うべきである。それ故、参加人と被参加人の訴訟代理を兼任することはなんら民法一〇八条、弁護士法二五条の規定の趣旨に牴触するものではない。

三、しかして、本件訴訟においては、控訴人が本件農地の買収及び売渡処分は無効であると主張するのに対し、被控訴人両名は右処分は有効であると争っているのであるから、処分庁である愛知県知事は被控訴人両名の側に参加したものであることは前記説示により明らかである。従って、弁護士花村美樹が被控訴人両名及び参加人の訴訟代理を兼任することは民法一〇八条、弁護士法二五条の規定の趣旨に牴触するものでないことも前記説示のとおりである。控訴人の主張は採用できない。

四、以上のとおりであって、本件につき弁護士花村美樹の被控訴人両名及び参加人の訴訟代理は適法である。よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥村義雄 裁判官 西川豊長 寺本栄一)

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