大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。
官報全文検索 KANPO.ORG
月額980円・今日から使える・メール通知機能・弁護士に必須
AD

名古屋高等裁判所 昭和46年(行コ)27号 判決 1974年9月18日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人補助参加人代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用及び認否は次に付加訂正するほか原判決事実摘示と同一であるからこれをここに引用する。

一、

(一)  原判決三枚目表一〇行目の「ら」及び同末行三字目から同丁裏一行目八字目までをいずれも削除し、同行に「同」とあるのを「昭和三九」と訂正し、同二行目の「ら」、同三行目の「九、」、同六行目の「ら」、同七行目の「それぞれ」及び「ら」、同一〇行目の「四、」、同四枚目表一行目の「ら」及び「各」、同二行目の「それぞれ」、同三行目の「各」、同四行目、六行目及び一〇行目にそれぞれ存する「ら」及び同一〇行目の「合唱団員及び」をいずれも削除し、同丁裏五行目から八行目までを「被控訴人楽団労組は、昭和三九年八月二〇日、上部組合である日本民間放送労働組合連合会(以下「民放労連」という。)に加入し、」と訂正し、同一〇行目に「合唱団員」とある前及び同五枚目表三行目に「合唱団労組」とある前に「訴外」を加え、同六枚目裏九行目に「原告ら」とあるのを「被控訴人及び訴外合唱団労組」と訂正し、同八枚目裏三行目の「ら」及び同四行目の「原告合唱団労組は昭和三九年五月一日以降、」をいずれも削除し、同五行目に「同」とあるのを「昭和三九」と訂正し、同行の「それぞれ」、同九行目の「ら」をいずれも削除し、同九枚目表七行目及び同一〇枚目表末行にそれぞれ「原告ら」とあるのをいずれも「被控訴人及び訴外合唱団労組」と、同一〇枚目表八行目及び同丁裏一行目に「原告ら労組」または「原告ら組合」とあるのをそれぞれ「被控訴人及び訴外合唱団労組」と各訂正し、同四七枚目表冒頭から同五一枚目裏六行目までを削除する。

(二)  同一一枚目裏一〇行目と同一二枚目表一〇行目、同丁裏二行目(二ケ所)、同七行目(二ケ所)にそれぞれ存する「ら」、同行から同八行目にかけての「合唱団員及び」、同九行目と同一一行目の「各」及び同一三枚目表一行目の「合唱団員」をいずれも削除し、同行に「共に」とあるのを「は」と訂正し、同三行目、七行目及び九行目にそれぞれ「ら」とあるのを及び同末行に「各」とあるのをいずれも削除する。

(三)  同丁裏三行目、四行目及び六行目にそれぞれ「ら」とあるのを及び同八行目から同一四枚目表二行目までをいずれも削除し、同五九枚目表末行に「原告」とあるのを「訴外」と訂正し、同七四枚目表七行目、同八一枚目裏一行目及び同八五枚目裏末行にそれぞれ「ら」とあるのをいずれも削除する。

(四)  同一四枚目表六行目の「ら」、同丁裏八行目の「乙第五号証の四ないし六、」及び同九行目の「乙、」、同末行四字目から同一五枚目表二行目一二字目までを、及び同丁裏三行目、八行目の各「ら」並びに同一〇行目の「ら各」をいずれも削除する。

二、被控訴人の主張

(一)  参加人作成の「芸能員就業規則」は現実に芸能員に配布されたことがあり、専属出演契約時代の契約書には「就業規準は芸能員就業規則による」ことが明記されていた。また愛知県地方労働委員会提訴後審問のなかでこの就業規則の存在が問題となつた後に労働基準監督局への廃止届が提出されている。

(二)  本件出演契約が継続的売買契約にも比すべきものである旨の参加人の後記主張は適切でない。自由出演契約においては基本契約の締結のみによつて契約金という対価が支払われるものであつて、参加人が右対価支払を了した上で具体的出演発注をしたのに対し演奏契約者に応諾義務が全くないとするのは合理性追及を根本理念とする資本主義制社会においてはありえないことである。

(三)  出演発注の激減はむしろ参加人の政策的な措置というべく、月割契約金の他出演料に生活保障の基盤を置いている演奏契約者としては、参加人の出演指定(または出演発注)を期待し、社外出演はできるだけ避け、参加人の出演指定に応じようとするのは当然である。

(四)  参加人の(1)他社出演は自由である(2)社員と演奏契約者とは参加人に対する契約上の地位がすべての点で異る(3)自由契約においては出演発注に対する諾否は自由であるとの主張はすべて虚構である。本件自由出演契約は、その締結の実際は附合契約であり、出演義務、芸能員就業規則、出演報酬の組立て方の点から参加人の契約上の優位は明白である。被控訴人組合の組合員(演奏契約者)は芸術家とはいいながら有名芸術家とは異り、参加人に対する労務の提供(しかも、特定の仕事の完成がその契約の内容ではなく、また、統一した事務の処理が契約内容とされるものでもない)それ自体がその契約上の義務であるといつても過言ではなく、しかも長期間の契約存続を期待、希望する以上、たとえその形式が一年毎の契約書であろうと、いわゆる自由出演契約であろうと(しかも同契約書によれば何が契約違反になるのか明瞭ではない、また、参加人主張の「出演内規」はその存在すら疑わしい)、これに署名せざるをえなかつたのであり、そのことはまさに、演奏契約者が参加人会社の被傭者であることを如実に示すものに他ならない。なお、当初契約の実際を見るに、参加人は実に身元保証書すら徴していたのである。

三、参加人の主張

(一)  参加人会社における芸能契約者の変遷について

参加人会社においては、既述の演唱契約者、演奏契約者の他、効果契約者、演技契約者が存した。効果契約者は昭和二七年九月一日から同三八年四月一日の各契約期に三ないし一二名の者がすべて専属契約の形式でのみ存在したものであり、同三八年六月一日以降同契約者はない。演技契約者は昭和二六年六月一五日から同三六年四月一日の各契約期まではすべて専属契約、同三七年四月一日の契約期には専属契約者と他社自由契約者(他社出演の届出があればその日時に会社の発注はできない。届出がなければ会社の発注に応じなければならない。)とが併存し、同三八年四月一日、同三九年四月一日の各契約期には他社自由契約者のみが存在し、同四〇年四月一日の契約期以降はすべて諾否自由(会社の発注に対し諾否が自由な全くの自由契約)契約者のみが存した。なお、右演技契約者は社外の出演は同業他社をも含めまつたく自由である。

(二)  演奏契約者は参加人会社が日時、場所、番組内容を特定してなした出演発注に対し、諾否の自由を有し、応諾した場合にはじめて具体的出演義務が生ずるのであつて、年間を通じては、その芸術的技能をもつて、自由な立場で、参加人会社の制作する放送番組に対し協力する契約関係を有するに過ぎない。

換言すれば、自由契約は、あたかも継続的売買契約において、この基本契約書により大綱が抽象的に規定され、具体的、個別的義務は、各取引において右大綱に則つた買主の具体的申込とこれに対する売主の具体的承諾により発生するのと同様である。最初に締結される自由な協力関係を規定する基本契約がいわゆる自由契約と呼ばれる契約書であり、参加人会社よりの具体的申込が出演発注伝票によりなされ、これに対する契約者の承諾により、はじめて具体的出演契約による個別的義務が生ずるという基本関係にある契約である。

右出演発注を受けるために演奏契約者が自宅に常時待機する必要は全くない。参加人会社において、演奏技能が必要になつた場合、自由出演契約をしていない者に出演を求めるときは、出演条件について当事者双方の合意に達するまでには相当の交渉が行われねばならず、参加人会社において演奏技能の提供を受ける番組制作上の必要事情は、番組制作の都度一々演奏技能者を相手に出演条件を交渉して行うことを許さないものである。そこで、予め演奏契約技能者に対し、出演発注に応諾して出演することについての報酬等の条件を決定しておいて、番組制作上の必要を円滑且つ合理的に充足できるような措置をとつておくことが行われるようになる。これが自由出演契約の締結を必要とした所以であり、演奏契約者は出演時間(参加人会社における練習時間を含む)以外、拘束は全くなく出頭しなくてもよいことになつていたので、参加人会社としては発注に対し、すみやかに諾否の返事をするというくらいの協力は期待していたが、それ以上は求めていない。

(三)  被控訴人は「平均勤続年数」、「平均賃金」或いは「入社」等の用語を用い、いかにも参加人会社と演奏契約者との間に使用従属関係が存在したかの如くに主張するが、右は全く事実に反し、用語を不正に使用しているものである。

(四)  参加人会社が昭和四〇年三月末まで契約金を支払明細書中の「本給」欄に記載していた事実はあるが、それは単なる便宜的な措置に過ぎず、また、かつて契約者に支払う契約金、出演料等から所得税源泉徴収をしていた事実、「健康保険料」「共済会会費」「共済会借入返済金」「社内預金」を差引いていた事実はあるが、右のうち源泉徴収は法律上当然のことであり、その他は、いずれも会社と関係のない任意組合が温情的に契約者にも便宜を与えていたものに過ぎない。なお、「失業保険料」についてもかつて右契約金等から控除していたが、昭和四一年三月から新たに契約を締結した演奏契約者七名については同年四月二二日参加人会社より失業保険金被保険者資格喪失届を名古屋中公共職業安定所に提出し、即日受理、確認を受けた。退職金支給、有給休暇付与の事実はない。また、芸能員就業規則は立案したが制定には至らなかつた。

(五)  参加人会社と演奏契約者との間には現在に至るまで労働基準法第一〇七条に定める労働者名簿、同法第一〇八条に定める賃金台帳が存在した事実はない。これは演奏契約者を参加人会社は同法にいう「労働者」として取扱つていない事実及び、その理解が根本的に「賃金」でない事実を如実に物語るものであり、この点につき、演奏契約者より異議等の申立を受けたこともなく、監督官庁よりも指示を受けたことがない。

(六)  参加人会社においては「他社出演」「他所出演」なる区別をした事実はなく、いずれもこれを「社外出演」として同一取扱をして来た。他方、参加人会社は必要により、その曲に最も適する演奏者を、演奏契約者を含む多数の演奏技能者の中から選択することが可能であり、現にそのように為して来た。演奏契約者の方も、初期の頃は収入としては会社の方が多かつたとしても、専属契約時代からキヤバレーに出演し、その報酬が月額であつた者もおり、昭和四〇年当時社交会館ゴールデンスターにおいてスイングライナーズバンドの一員として毎夜出演していた者もおり、その収入も、現在名古屋における出演の相場は、バー、キャバレー等の単独演奏は一ケ月最低一〇万円、上は二〇万円以上といわれている。しかも演奏契約者はその六五%の時間を参加人会社以外のところにおいて活用しその収入に依存しているとみることができる。演奏契約者の昭和四〇年一〇月現在、一人平均月割額契約金は四三、八七五円(平均年令四〇才)、右時点における参加人会社の一般職員の給与の平均は本給三八、二〇〇円、月収約五二、〇〇〇円(平均年令三〇才)であるが、昭和四七年一〇月から六ケ月間の演奏契約者の出演料(一人一ケ月平均一六、九〇三円)は極めてまちまちで最低〇円(三名)から最高三三一、六〇〇円というばらつきを示している。右期間における年額で定められた契約金の契約者一人平均額は三二、一六六円(平均年令四九才)、右出演料と契約金との合計(平均)は四九、〇六九円である。これに対し、右時点における参加人会社の一般職員の給与は一ケ月平均、本給約九二、〇〇〇円月収約一四〇、〇〇〇円(平均年令三七才)である。なお、昭和四七年一〇月一日の演奏出演契約締結にあたり、参加人会社からの連絡用の電話番号の問合わせに対し、自宅と参加人会社以外の出演場所の両方を回答した者が数名存し、このことは、これらの者が夜間のみならず昼間も正式に契約出演している事実を示す何よりの証左である。これらの諸点を総合すると、演奏契約者は、もはや、経済的にも参加人会社からの収入に依存していないものとみることができ、参加人会社と演奏契約者との間には使用従属関係が存しないものというべきである。

(七)  使用者の経営の中に組込まれていることが従属労働の存在を示す事実であるとするためには、職員の如く当事者間において基本的または重要部分について判断されなければならない筈である。そもそも、経営における使用者と雇傭されている労働者との関係は、雇傭されている多数の労働者が異る部門に配属されながら、使用者の指揮管理のもとに経営の生産的、技術的目的を達成するため、統一的な共通の計画に従つて、一定の秩序を保ち、他の労働者と協力して労働をなし、全体として統一、調和のとれた仕方で経営活動を形成するという構造をもつている。この経営管理の過程において使用者としては、<1>職務の体系と秩序(職制)を確立し、<2>経営、職場秩序を維持するための制度として、服務規律とその違反に対する制裁を設け、<3>労務管理の施設・制度を整え、<4>労働者の配置の決定・調整・業務命令による労働過程の指揮・管理を必要とすると共に、<5>賃金・労働時間等労働条件の待遇に関する基準を集団的・統一的に決定することを要請されるのである。右の関係が企業に雇傭されその組織に組込まれているという通常の実態である。参加人会社における職員が右に該当し、演奏契約者が右に該当しないのは既述のとおりである。

四、証拠(省略)

理由

一、当裁判所も被控訴人の本訴請求を認容すべきものと判断する。その理由は次に付加、訂正するほか原判決理由と同一であるからこれをここに引用する。

(一)  原判決理由中「原告ら」とあるのをすべて「被控訴人」と、「各申立」とあるのをすべて「申立」と、「各命令」とあるのをすべて「命令」とそれぞれ訂正する。

(二)  原判決一七枚目裏六行目から同一八枚目裏九行目までを削除し、同一〇行目冒頭に「五、」とあるのを「四、」と訂正し、同一九枚目表一行目二一字目から同二行目三字目までを削除し、同二〇枚目表一行目を「あり、ついで、優先出演契約となり、さらに回数出演契約または自由出演契約若しくは無名出演契約と」と訂正し、同三行目に「演唱ないし」とあるのを削除し、同一〇行目を「らは、直ちに民法の典型契約の一たる雇傭契約とは目し難い一種の無名契約というべきであるけれども、」と訂正し、同末行から同丁裏一行目七字目まで及び同六行目から同三五枚目裏九行目までをいずれも削除する。

(三)  同一〇行目冒頭に「(四)」とあるのを「(三)」と訂正し、同三六枚目表二行目四字目の次に「甲第一〇七号証の一ないし七、第一一四号証の七、当審における証人多治見鈴男、同石田和夫の各証言及びこれによつて成立を認める甲第一〇六、一一六号証原審における」を、同一〇字目の次に「、同磯部悦雄」を、同一一字目の次に「各」をそれぞれ加え、同七行目五字目から一八字目までを「『会社の指示する者の指揮に従い、音楽演奏者として会社の発注する放送並びに放送附帯業務に出演することを約諾する。』ことを契約内容とし、その就業規準は会社の職員就業規則に準ずるものとして別にこれを定めることとし(芸能員就業規則の施行された昭和二八年一一月一日以降の契約書は同就業規則に準ずるものとし、別にこれを定めることとし)、右規準に従つてなす就業に対する報酬としては、保障出演料と超過出演料の二本建とし、契約期間を一ケ年とするもの」と、同丁裏一行目に「三一」とあるのを「三二」とそれぞれ訂正し、同二行目に「一ケ月前」とある次に「(初年度の契約においては二ケ月前)」を加え、同四行目に「三八」とあるのを「三三」と訂正し、同六行目一七字目の次に「また、昭和三二年度からは契約期間中でも各当事者は、正当の理由あるときは一ケ月の予告期間をもつて解約をすることができる旨の条項も附加された。」を、同一〇行目に「細則」とある次に「、芸能部通達」を、同末行の次に「芸能員就業規則はその対象を劇団員、効果団員及び楽団員として制定されたものであるが、同規則の内容は大要次のとおりであつた。すなわち、発注を受けたときは、すみやかに受注確認の署名をすること、所定のバツヂをつけ、身分証明書を所持すること、受注業務に出演できないときは、あらかじめ事由を附して届出ること、傷病により引続き四日以上受注できないときは診断書を提出すること、就業指定を拒否し、または他所において類似業務に従事したり、または会社の許諾なくして他社出演(会社以外の放送並びに放送関係業務に出演することをいう)することは禁止されていること、就業指定に対しては正当事由なき限り拒否できないこと、その他休日、休業、賞与、慰労金についての規定がある他に、安全保健衛生については社員の職員就業規則の必要部分が準用されること、業務上の死亡、負傷についても社員の職員災害補償規則が準用されること、冠婚葬祭については会社厚生共済会の必要部分が準用されること等が規定されていた。」を同三七枚目表二行目四字目の次に「、かつ、身元保証書を差入れ」をそれぞれ加え、同丁裏一行目に「、演唱契約者と同一であ」とあるのを「次のとおりである。すなわち、出演の発注は、原則として一週間前に(場合により二四時間前に)演奏指定伝票によつてなされ、これが控室の掲示板に掲示されると、各自必ず確認のチエツクを右伝票上に行う。出演は右伝票によつて指定される日時、場所、指揮者に従つて出演す」と、同九行目から一〇行目までを「他社出演は許可ある場合の他は禁止されており、他所出演(個人でアルバイトとして家庭教師や学校の講師をすること)は当初は許可制であり、次いで届出制に変わつたが、他社出演については、許可を受けて出演した例は極めて稀であり、他所出演も副業として会社からの報酬の不足分を補う程度のものであつた。」と、同三八枚目表二行目から六行目までを「なお、いずれも原審における証人松枝孝治、同川崎義盛の各証言、右各証言により成立を認める丙第五号証の五の一によれば参加人には専属契約時代の終り頃に『出演内規』なる文書が存したことが認められなくはないが、右文書は参加人芸能部長の職にあつた右松枝孝治の個人的なメモ的文書の域を出でず、公表されなかつたことが明らかであるから、演奏契約者の就業規準が右文書どおりに規律されていたものと認定するのは困難である。従つて右文書の存在は前記認定を左右するに足りる資料とはなし難い。」と、同七行目に「前顕」とあるのを「証人広江吉信の証言によりいずれもその成立を認めうる」と、同末行に「演唱契約者と同様な社員」とあるのを「通常の職員のそれとは色が異なるがデザインは同じ」と、同丁裏二行目から三行目にかけて「演唱契約者について説示したと同じ理由により」とあるのを「専属契約は、仕事の完成を目的とする請負ないしはこれに類似する契約ともその仕事の遂行に広汎な授権が伴い裁量が許される委任ないしはこれに類似する契約とも認め難く、仕事の報酬である契約金、保障出演料は固定給ないし生活給的要素を保持していると解され、かつ、発注に対しては原則としてこれを拒否することが許されないため、常時待機を余儀なくされるから、事実上就労時間の定めはなくとも時間的に拘束され、参加人の一般的労務指揮の支配下に常時あるものと解されるから」と、それぞれ訂正し、同八行目三字目の次に「前示契約更新の実態にてらすと、契約者が期間満了後も、使用者である参加人において契約を更新して雇傭を継続するものと期待することは当然の成行であり、かく期待することに合理性が認められるから、」を加え、同一〇行目一八字目から同末行一五字目までを削除し、同三九枚目表三行目に「一八」とあるのを「一一」と訂正し、同行の「証」とある前に「いずれも原審における」を加え、同丁裏三行目から四行目にかけて「、演唱契約者と全く同一である。」とあるのを、「報酬は契約金(年額・月割払)と出演料との二本建とし、芸能員就業規則の適用はなく、会社名を使用してする社外出演は会社の許可を受けることを要し、かつ、契約者側の署名押印のみを要する差入書方式となつていた。」と、同四〇枚目表二行目から同七行目までを「しかし、成立に争いのない丁第六号証によれば、愛知県地方労働委員会の昭和四〇年(不)第四号事件の審問期日において、被申立人申請の証人松枝孝治は申立人代理人の反対尋問に対し『いわゆる自由契約において、出演指定(発注)があつても、それに応諾しないことが度重なるときは契約書前文に規定する基本の出演義務に抵触する上、契約担当者であつた右証人個人の意見としては再契約時考慮さるべき事柄である旨』の証言をなしており、また、同人の上司である川崎義盛も同期日における審問において『同契約書第五条後段の契約違反とは、契約者は出演を契約しているのであつて、出演を全然しない或いは出演を全然拒否しているといつた場合をも指すものであり、一旦出演を承諾した上で出演をしなかつた場合はまた別個の契約違反を構成する、なお、出演不応諾は自由ではあるがその程度によつては再契約にあたつて考慮することもある旨』の証言をなしていることが認められる。右はいずれも本件被控訴人と同様な立場に置かれ、かつその組合員が同種内容の自由契約書をもつて律された訴外CBC合唱団労働組合が申立てた事件の審問における証言内容であるけれども、右証言内容に徴すれば、本件においても、参加人側は自由契約における本質的契約関係を、諾否自由な関係と考えていなかつたことは容易に推認しうるところである。また、いずれも原審における証人磯部悦雄、同神谷治雄の各証言によれば演奏契約者も、優先ないし自由契約における本質的な契約関係を諾否自由な関係とは考えておらず、発注があれば原則として拒否できないと考えていたことが認められる。原審及び当審(第一回)における証人松枝孝治、原審における証人川崎義盛の各証言中右認定に反する部分はいずれも措信し難く他に右認定を妨げるに足る証拠はない。」とそれぞれ訂正し、同丁裏三行目に「証人」とある前に「いずれも原審における」を、同四一枚目裏七行目三字目の次に「(ただし、当審における被控訴人組合代表者尋問の結果によれば右契約日は昭和四五年に入つて一〇月一日に統一されたことが認められる。)」をそれぞれ加え、同四二枚目表九行目に「井上嘉市」とあるのを「井上喜一」と訂正し、同丁裏三行目二字目から九字目までを削除し、同八行目から九行目にかけて「、演唱契約者について説示したところと同一である。」とあるのを「多言を要しない。」と、同四三枚目表六行目に「原告」とあるのを「原審及び当審における被控訴人」とそれぞれ訂正し、同四四枚目裏五行目に「これら」とある前に「もともとその将来の生活を保障するからということで募集された」を加え、同丁裏三行目一三字目から同四行目までを「は困難である。」と訂正し、同五行目に「証人」とある前に「いずれも原審における」を加え、同四五枚目表七行目一〇宇目から同八行目一四字目までを削る。

(四)  参加人は当審においてるる陳述するけれども、前示のとおり、自由契約下においても、参加人はその経済的優位を利用し、その目的たる必要な労務を、その欲するときに(随時)確保しうることが明らかであり、契約者の労務の具体的提供状況も、参加人の指示する者の指揮、支配下にあるものであることが明らかである。参加人の出演の発注に応じなかつたとして現実に制裁的措置を受けたものがなかつたこと、労働者名簿、賃金台帳が参加人会社に備付けてないことはいずれも右認定の妨げとなるものではない。参加人の主張はいずれも採用し難い。

二、よつて、原判決は相当であり、本件控訴はその理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例