大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和48年(ネ)11号 判決 1973年10月30日

控訴人(被告)

三浦一夫

被控訴人(原告)

中村とみ子

ほか四名

主文

原判決中控訴人と被控訴人中村とみ子、同中村進一、同中村光江、同伊藤文代との間の控訴人敗訴部分並びに控訴人と被控訴人金子やすとの間の部分をいずれも取消す。

被控訴人らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

事実

控訴代理人は、主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠の関係は、次に付加するほかは、原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(控訴代理人の主張)

一  原判決が亡なつの逸失利益額を金二三〇万七円と認定したのは高額にすぎる。

(1)  原判決は理由第三項の(四)において、亡なつの逸失利益は合計金二三六万六一六〇円であると認定し、被控訴人らがそのうち金二三〇万七円を請求しているとの理由で同額の逸失利益を認定した。

(2)  しかしながら、原判決がその計算の基礎として亡なつの月間純収入が金五万円を下らないと認定したことは、当時五〇才ないし五九才の女子の平均賃金が二万二〇〇〇円であつたことからして高額にすぎるものであつて、月間純収入は金四万円位と認めるのが相当である。また原判決は同人の生活費を純収入の五分の二と認めたが、当時同人には扶養家族がなかつたのであるから、独身者の場合に準じて、生活費を純収入の半額と認めるのが相当である。

そうすれば、同人の逸失利益は次のとおり合計金一七六万一八四〇円となる。

(イ) 事故から死亡まで 二ケ年三ケ月二〇日

4万円×27.66=1,106,400円

(ロ) 死亡後 三ケ年

4万円×0.5×12×2,731=655,440円

二  原判決の過失相殺の方法は法令の解釈適用を誤つたものである。

(1)  原判決は理由第二項において、本件事故につき亡なつの側に四割の過失、控訴人の側に六割の過失があつたことを認定し、同第三項において、同人は治療費、付添看護費、入院雑費及び逸失利益を合計して金六五六万〇八五三円の損害を被つたことを認定するとともに、控訴人は治療費の大部分と付添看護費の全額を合計して金三七四万四九〇三円を支払つたことを認定した。

ところが、原判決は亡なつの被つた右損害合計額の全部につき過失相殺をせず、控訴人の支払ずみの右金額を控除した残額金二八一万五九五〇円の損害賠償請求権を被控訴人金子(亡なつの母)以外の被控訴人四名(いずれも亡なつの子)が承継取得したものと解し、しかる後に右残額についてのみ過失相殺をした結果、右被控訴人四名は控訴人に対して合計金一六八万九六〇〇円(一人当り金四二万二四〇〇円)の損害賠償請求権を有するものと認定した。

(2)  しかしながら、右のような過失相殺の方法は、民法第七二二条第二項の解釈適用を誤つたものであつて、後記のとおり極めて不合理な結果をもたらすものであるから、過失相殺は次のとおりにするのが正当であると考える。

すなわち、原判決認定のように亡なつが本件事故による受傷と死亡により慰藉料を除き合計金六五六万八五三円の損害を被つたとすれば、そのうち亡なつが控訴人に対して請求し得る賠償金額は、双方の過失割合を前記認定のとおりとする限り、その六割に相当する金三九七万六二〇三円と解するのが相当であり、亡なつの子である前記被控訴人四名は相続により合計して同額の損害賠償請求権を承継取得したものと解すべきである。しかして、控訴人はこれに対し前記のとおり合計金三七四万四九〇三円を支払ずみであるから、結局残額の二三万一三〇〇円を右被控訴人四名に対してそれぞれの相続分に応じて支払う義務があると解するのが相当である。

(3)  右のように解するのが相当であつて、原判決のような過失相殺の方法が誤りである理由は次のとおりである。

(イ) 控訴人が支払ずみの右金額はわずか金四万四八〇四円の付添費を除き他はすべて亡なつの生存中に支払つたものであるが、控訴人主張のように過失相殺を適用するときは、右金額の支払が亡なつの生存中であると死後であるとにかかわらず、また死亡の前後にまたがつていると否とにかかわらず、控訴人が前記被控訴人四名に支払うべき金額は金二三万一三〇〇円であつて、その金額に変りはない。

ところが、原判決のように過失相殺を適用するときは、亡なつの生存中に控訴人が右支払ずみの金額を支払つた場合は右被控訴人四名は合計金一六八万九六〇〇円の損害賠償請求権を有することになるが、亡なつの死亡後にこれを支払つた場合には合計金二三万一三〇〇円の損害賠償請求残債権を存することになり、さらにその支払が亡なつの死亡前後にまたがるときは、その割合に応じて右被控訴人四名の現有する残債権額が相違するという極めて不合理な結果となる。

(4)  のみならず、以上からも明らかなとおり、原判決のように過失相殺を適用すると、亡なつの死亡後あるいは判決言渡後に賠償金の支払をなす加害者は損害の全額について過失相殺による利益を受けるが、その以前にできる限りの賠償をした誠意ある加害者は残額についてのみ過失相殺の利益を受けることとなり、後者は前者より不利益を蒙るという不合理な結果を生ずる。その結果、被害者側は早期に損害賠償の内払を受け得なくなるおそれがあり、被害者救済という観点からも極めて不都合である。

(5)  被控訴代理人は、積極的損害については過失相殺をすべきではないと主張する。

しかしながら、過失相殺とは要するに賠償金の減額であり、損害の一部を被害者側に負担させることにほかならないが、被害者側に損害の発生ないし拡大につき過失ないしこれに準ずべき事情あるいは全額請求を不合理とする事情があるため、加害者にその全額を負担させることが公平でないと認められるときは、一定の過失相殺をなし、もつて損害の公平な分担を計ることが、民法七二二条二項の正当な解釈適用である。従つて、積極的損害についても被害者側に過失その他これに準ずべき事情などがあるときは、その程度に応じて過失相殺をすべきである。被控訴代理人の主張するような庶民感情は一方に偏したものであつて、裁判上の基準とすべきものではない。被控訴代理人の論拠が被害者の救済ということをその理由とするのであれば、所論は結局現存の医療保護制度の強化に求むべきことを個々の加害者に強制しようとするものであつて、不当な見解と言わざるをえない。

また、被控訴代理人は、強制保険金の給付分は全損害から控除し、その残額についてのみ過失相殺をすべきであると主張する。

しかしながら、加害者が強制保険だけでなく任意保険にも加入している場合は、強制保険金を超えた分も結局は同保険金と同じく保険会社から支払われるのであり、社会経済的には保険加入集団により賠償金が支払われることは両保険制度に共通のことであるが、所論を押し進めて行くと、加害者が任意保険に加入している場合には、その保険金をも控除してなお残額があるときにのみ、その残額を過失相殺の対象とすべきことになるが、これが不合理なことは説明を要しないであろう。さらに、強制保険の制度は、被害者の保護を一つの目的とするといつても、被害者の全般的な救済を目的とした制度ではなく、被害者の有すべき損害賠償債権を一定額まで保障し、その限度において被害者の救済を計るものであることから、強制保険金の給付分を控除した残額についてのみ過失相殺をなすべきとの理由は出てこない。被害者の全般的な救済のためには、傷害保険ないし生命保険の利用及び他の公共的な保障制度の発展を計るべきであつて、強制保険金の範囲内では過失相殺をしないという過失相殺の適用方法にこれを求めるのは、加害者ないし任意保険加入者集団に被害者救済の責任を強制するものであつて、前同様不当な見解といわざるをえない。

(6)  本件の場合、控訴人主張のような過失相殺の方法によるも、なんら具体的妥当性に欠けることはない。

すなわち、控訴人主張の過失相殺は、損害の公平な分担という見地からして特段の事情のない限り最も公平妥当な方法であるが、本件の場合、この原則的方法を排して他の方法によるのを相当とする特段の事情は全く存在しない。もつとも、右過失相殺の方法によれば、後記のように控訴人は賠償責任を尽したものと認められ、被控訴人らの本訴請求はいずれも棄却される結果、未払の治療費金三七万余円は被控訴人らが支払うべきこととなり、またすでに支出した入院雑費金一三万余円や葬儀費用金一五万余円も被控訴人らの負担となる。しかしながら、亡なつの被扶養者は一人もいないのであるから、被控訴人らが受領した強制保険金三〇〇万円から未払治療費を支払いあるいは入院雑費及び葬儀費用を負担したとしても、なんら不都合な結果は生じないのである。

三  原判決認容の慰藉料は高額にすぎること、及び被控訴人らの損害賠償請求権は弁済ずみであることについて。

(1)  原判決は被控訴人五名につき合計二四〇万円の慰藉料を認めたが、本件事故は昭和四二年一〇月発生のものであり、当時は一家の支柱たる者が死亡した場合の慰藉料の総額は金三〇〇万円であつたこと、亡なつの側に四割の過失割合が認められること、同人には被扶養者もないこと等を考慮すると、右慰藉料総額は高額にすぎるものであつて、その総額を金一八〇万円位(右最高慰藉料額三〇〇万円の六割位)とするのが妥当である。

(2)  仮に、原判決認容の慰藉料総額が相当であるにしても、前述の如く被控訴人金子を除く被控訴人四名が承継取得した賠償債権額は合計二三万一三〇〇円であるから、これに右慰藉料総額を加えると被控訴人らの賠償債権総額は金二六三万一三〇〇円となる。

これに対し、被控訴人らは自賠責保険から金三〇〇万円を受領しているから、被控訴人らはも早や控訴人に対し損害賠償請求権を有しないものと解すべきである。

(3)  なお、原判決のように被控訴人金子の慰藉料を金四〇万円と認定し、これに対し同人が自賠責保険から金三〇万円を受領したものと認定すると、なお残額金一〇万円の賠償請求権を有するように思われるが、被控訴人らが支払ずみの金額以外になお賠償請求権を有するか否かは、まず損害額ないし賠償債権額及び支払ずみの額などのそれぞれの総額を考慮計算し、残額があるときにはじめてこれを各被控訴人に配分してその債権額を定めるようにすべきである。従つて、総額計算に於て残額を生じないときは、被控訴人のいずれも弁済ずみと解すべきである。このことは、被害者の遺族の数にかかわらず慰藉料はその総額に於て適正な額であることを要するという原則からしても当然のことと考える。

(被控訴代理人の主張)

一  亡なつの逸失利益について

控訴代理人は亡なつの逸失利益は高額にすぎると批難するが、原判決認定のとおり甲第一号証、第一一号証によつて明らかなように、亡なつは牛乳及び乳製品の販売業を営んでいたもので、その月間粗収入は七万円ないし八万円を下らなかつた。そのうち、経費相当分を月二万円としても、月五万円の純収入のあつたことは明らかである。控訴代理人は賃金労働者と対比するが、賃金労働者と自営業者との収入がかなり相違することは経験則上も当然である。

次に、控訴代理人は亡なつの生活費として月二万円の控除が少なすぎると批難するが、扶養家族の存否は本人の生活費の算定には不要の要素であり、また、一般に独身者とは、若年で種々の生活財を購入する必要があり、消費性向の高い年令層のことであつて、それ故、収入の五〇%控除が一般的基準として合理性を有するのである。しかるに、亡なつはすでに中年の女性で、特別の出費もなく、安定したつましい生活をしていたものであるから、亡なつの生活費を一般の独身者と対比するのは誤りである。つまり、亡なつの生活費として二万円の控除は、高額にすぎるこそすれ、少ないことは毛頭ない。

二  過失相殺について

(1)  不法行為による損害賠償制度は、不法行為によつて生じた被害を回復し、加害者と被害者間の負担の公平をはかることを目的とするもので、過失相殺が被害者の被害の回復を講ずるに際し、被害者側の損害発生または拡大の防止、損害の軽減への社会的努力が不十分であつた不注意を考察し、加害者からの支払額を一定の限度で減額することにより、加害者に必要以上の法的義務を課せず、具体的かつ妥当な相互の損害負担を法的に確定すべき調整的機能を内包する法概念である以上、その機能は右の趣旨が最もよく生かされるよう実務的にも考慮されなくてはならない。この点、過失相殺割合は単純に過失割合によるべきではなく、結局、加害者の負担すべき損害額を信義則的に公平に減額すべき割合として把握すべきである。すなわち、「被害者の非難可能性の程度を減少させる一標識として理解すべきである。」「過失割合は過失相殺割合の判断に大きなウエイトを占めるが、過失相殺の調整的機能を発揮させるためには、過失相殺は必ずしも損害の全てについて行なわなくてもよく、費目によつて異なる割合で過失相殺してもよいのである。」「不法行為による損害賠償請求の場合には、被害者に過失があつたとして、賠償額の算定に当つて斟酌しなくとも違法ではないというのが通説判例である。このように、そもそも、被害者の過失を損害賠償の算定に当つて考慮するかどうかさえ裁判官の自由だとすれば、損害の種類または費目にとつて、斟酌の有無または程度を異にしても、違法の問題を生じないことはいうまでもない。」との諸見解に傾聴すべきであつて、被害者の損害の全部を過失相殺の対象とする考えは、不法行為責任が本質的に加害者と被害者との関係にあること及び損害の種別についての深い考察を失つた見解であつて、実質的公平を忘れた形式論である。原審のとつた過失相殺の方法もかかる見地に立つて具体的公平を考慮したものであることは明らかである。

(2)  以上のように考えるのであるが、当面、過失相殺の方法論として、次の二つの意見を主張する。

その一は、全損害のうち積極的損害については基本的には過失相殺の対象としない。少なくとも加害者側に五割以上の過失がある場合には積極的損害について過失相殺をすべきではない。

なぜなら、積極的損害は被害者にとつて緊急不可欠な支出を要求されるものであるところ、加害者と被害者との力関係の相違、積極的損害についてまで被害者が一部負担(過失相殺は結果としてそうなる)をするのは不合理であるという庶民感情、さらに何よりも今や交通災害の損害責任は危険責任として把握されるべき社会的動向を考慮すると、積極的損害についてまで被害者に負担を要求しないことこそ、実質的公平の実現であると考えられるからである。

その二は、いわゆる強制保険金の給付分については、これを全損害から控除し、その残額について過失相殺すべきである。

なぜなら、損害保険は損害賠償責任の社会的分散であり、強制保険については国家が再保障していることを考慮すれば、強制保険金の給付は、一種の社会的給付として把握されるべきであつて、加害者による弁済とはいえないものであり(保険料の支払は、自動車の保有、運行に必要な経費、極言すればガソリン代と同視すべきものであつて、特段の支出として見る必要はない。)、また、健康保険あるいは労災保険給付による填補分については、過失相殺対象額としないのか判例理論で、その理由は社会的給付であるからというのであるが、右に述べた強制保険の性格及び運用の実際(自賠責支払額算定基準によれば、無職者についても一定額の逸失利益を算定している。)を見れば、今や健康保険あるいは労災保険給付と強制保険給付との間に差異はないというべきであり、さらに、右に述べたように、強制保険給付を加害者の弁済と同視するのが誤りであり、かつ、現実に右給付金が加害者個人の支出にかかるものでない以上、加害者と被害者間の損害の公平分担とは、その実質的負担の公平を意欲すべきである等の観点よりすれば、強制保険給付は、その限度で全損害のうちから過失相殺の対象額としては控除されるべきものと考えられるからである。

傷害事故についての強制保険給付限度が五〇万円であり、そのため若干の受傷をすれば全額が治療費に充当されてしまうことを思うと、この面からも被害者救済のためにも本主張が容認されるべきである。

(3)  前記見解に基づき、本件事故による全損害額を算定すると、別紙計算表のとおり、積極的損害を過失相殺の対象としない第一式によれば原判決の認容額を上廻り、強制保険金の給付分を過失相殺の対象から除く第二式によつても原判決の認容額に近い金額が認められるべきである。

(証拠関係)〔略〕

理由

一  本件事故の発生、態様及び原因、双方の過失及びその割合、損害額(弁護士費用を除く)についての当裁判所の判断は、原判決の理由記載(同理由欄一項、二項、三項の(一)ないし(七)。但し、三項の(五)のうち五行目以下は除く。)と同様であるから、これを引用する。なお、亡なつと被控訴人らとの身分関係が被控訴人ら主張のとおりであることは当事者間に争いがないので、被控訴人金子やすを除くその余の被控訴人らは、亡なつの子としてそれぞれ法定相続分に応じ、亡なつの損害賠償請求権を承継取得したものである。

二  そこで、過失相殺及び弁護士費用の点について判断する。

(1)  ところで、過失相殺は、不法行為による損害の発生または拡大につき被害者の方にも不注意があつたとき、公平の見地から、これを考慮して、被害者に賠償すべき金額を減額する制度であり、過失相殺をするか否かまたその程度は事件を審理する裁判所の自由裁量に委ねられているが、過失相殺の方法としては、被害者の被つた全損害を過失相殺の対象とすることができると解する方が一般的公平に適つているものと考える。

被控訴代理人は、積極的損害は過失相殺の対象とすべきではない旨主張するが、その論拠自体に首肯し難い点もあつて賛同し難く、また、強制保険金の給付分を控除した残額についてのみ過失相殺をすべきであるとの主張も、強制保険の制度が、本質的には加害者の被害者に対する損害賠償の一環として機能しているものであつて、社会保障としての立場から給付を行なうものではないから、これまたにわかに賛同し難いところである。

(2)  しかして、前示認定によれば、亡なつの損害は、治療費金二六四万一七五三円、付添看護費金一四七万九一四三円、入院雑費金一三万九九五〇円、逸失利益金二三〇万〇〇〇七円の合計金六五六万〇八五三円であり、これに被控訴人中村とみ子の支出した葬儀費金一五万一七七四円を加えると、金六七一万二六二七円となるが、亡なつの前示過失を斟酌し、その四割を減額すると、金四〇二万七五七六円(円以下切捨て)となり、右金額に前示認定の被控訴人らの慰藉料合計金二四〇万円を加算した金六四二万七五七六円が控訴人の賠償すべき総金額である。しかるに、控訴人はすでに亡なつの治療費の一部及び付添看護費として合計金三七四万四九〇三円を支出していること、また被控訴人らは本件事故による強制保険金三〇〇万円を受領していることはいずれも当事者間に争いがないから、金六四二万七五七六円の賠償金に対し金六七四万四九〇三円が支払われたことになり、本件損害賠償金はすでに支払ずみとなつたものと認められる。

(3)  そうすると、被控訴人中村とみ子の弁護士費用の請求も本件事故と相当因果関係のある損害とは認めないのが相当である。

三  以上の次第であるから、被控訴人らの本訴請求はいずれも失当として全部棄却すべきである。

よつて、右と判断を異にし、被控訴人中村とみ子、同中村進一、同中村光江、同伊藤文代の請求を一部認容し、被控訴人金子やすの請求を全部認容した原判決を取消し、被控訴人らの請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 西川力一 西川豊長 寺本栄一)

別紙計算表

(各項目の内訳)

1 積極的損害

治療費 264万1,753円(但し、内金226万5,760円は控訴人において支給ずみ。)

付添看護費 147万9,143円(但し、控訴人支払ずみ。)

入院雑費 13万9,950円

葬儀料 15万1,774円

小計 441万2,620円………………<1>

2 消極的損害

逸失利益 230万0,007円………………<2>

以上小計 671万2,627円………………<3>

3 慰藉料 240万円……………………<4>

4 弁護士費用 10万円……………………<5>

5 控訴人既払分 374万4,903円(但し、内金50万円は強制保険よりの填補分であるので、ここでの計算では、この分を控除する場合もある。)………………………<6>

6 被控訴人らの強制保険からの受領分

300万円(但し、上記金50万円は相関的にこの分として計算する場合もある。)………………………<7>

(数式)

第一式

<省略>

第二式

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例