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名古屋高等裁判所 昭和52年(ネ)46号 判決 1978年1月26日

控訴人

生川コンクリート株式会社

右代表者

生川平作

右訴訟代理人

島田新平

外一名

被控訴人

中村武生

右訴訟代理人

戸田謙

外二名

主文

原判決を取消す。

被控訴人の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

<前略>

四被控訴人が控訴会社に対し昭和四五年四月九日本件第二土地を(Ⅰ)代金三七〇万円、(Ⅱ)双方協力して所轄知事に農地法第五条の許可申請手続をなし、右許可により所有権が移転する。(Ⅲ)右許可あり次第被控訴人は控訴会社に同土地を引渡し、所有権移転登記手続をする。(Ⅳ)被控訴人は右(Ⅱ)項の条件付所有権移転の仮登記をするとの約定で条件付農地売買契約を締結した事実は当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、右売買契約には他に(Ⅴ)前記(Ⅰ)の条件が当事者の責に帰さない事由によつて成就しなかつたときは、該契約は当然効力を失うとの約定が存在することが認められ、この認定を覆えすに足りる証拠はない。そして、本件第二土地につきいずれも条件付所有権移転の仮登記が存在することは前記のとおりである。

五しかして、本件第一、第二の各土地の属する地区が、昭和四九年三月三〇日農業振興地域の整備に関する法律六条、八条三項の規定に基づき三重県知事によつて農業振興地域に指定されたことは当事者間に争いない。

被控訴人は、右の指定によつて本件第一、第二の各土地についての農地法五条の許可は不可能となつたから、前記売買契約の条件は成就不能となつて、同契約は当然、或はその附帯約定(Ⅴ)により無効となつた旨主張する。

しかしながら、前記の農業振興地域の整備に関する法律は、自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業振興を図ることが必要と認められる地域について、当該地域の整備に関し必要な施策を計画的に推進するための措置を講ずることにより、農業の健全な発展を図り、国土の合理的利用に寄与することを目的として制定されたものであり(一条)、右目的に照らし、農業振興地域の指定及び農業振興地域整備計画の策定は、農業の健全な発展を図るため、土地の自然的条件、土地利用の動向、地域人口及び産業の将来の見透し等を考慮し、国土資源の合理的利用の見地よりする農業上の利用との調整に留意し、農業近代化の必要条件を備えた農業地域を保全し形成し、公共投資その他農業振興に関する施策を計画的に推進することを旨としなければならず(二条)、従つてまた、その地域整備の基本方針は経済事情の変動、情勢の推移上必要に応じて変更され(五条)、これに即応して、都道府県知事はその指定した農業振興地域を変更し、又は指定を解除するものとされているのである(七条)。そして、<証拠>によれば、都道府県知事が農業振興地域の農地についていわゆる転用許可に関する処分を行なうに当つては、当該土地が農用地利用計画で指定された用途以外の用途に供されないようにしなければならず、従つてまた、その運用は原則として許可にならない方向にあると認められるが、しかし、法律上絶対的なものでないことが認められるばかりでなく、<証拠>によれば、本件指定地域においてその指定解除申請が認められた事例が二、三あるとともに、本件第二土地の近傍の一部農地についても右解除が再検討される可能性のあることが認められる。

右のような法律制定の目的、内容並びにこの法律に基づく農業振興地域の変更、指定解除の制度、同地域内の農地に対する農地法上の転用許可の運用等からすれば、本件第一、第二の各土地の地域に対する右地域指定処分によつて、これらの土地に対する農地法五条の許可が法律上不可能になつたというわけではなく、従つて、本件第二土地に関する前記売買契約の条件(法定条件である農地法五条の許可)が社会的不能によつて不成就になつたということはできない。<後略>

(村上悦雄 深田源次 上野精)

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