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名古屋高等裁判所 昭和52年(ラ)183号 決定 1977年12月19日

抗告人

山本清

右代理人弁護士

江口三五

溝口博司

主文

原審判を取消す。

本件を岐阜家庭裁判所に差し戻す。

理由

一本件抗告の趣旨と理由は別紙記載のとおりである。

二当裁判所の判断

記録によれば、抗告人は昭和三二年頃から「文頌」の名を使用し、抗告人に対する手紙も昭和四二年頃から「文頌」名にて差出されていること、抗告人の戸籍上の名が「清」であるため、抗告人が国内・国外における社会生活上の活動をなすうえで支障をきたしているものであることがうかがわれる。

ところで、戸籍法五〇条一、二項、戸籍法施行規則六〇条の規定は、子が出生したときに子につける名に用いる文字について定めたものであり、右の規定の趣旨は、名を変更するについても類推さるべきであると解されるけれども、戸籍法施行規則六〇条所定の常用平易な文字以外の文字といえども、抗告人が主張する如き社会生活をするにつき必要があるとき、または永年にわたり右所定外の文字をもつてこれを通名として使用してきたため、にわかに戸籍上の名を使用することが却つてその人の同一性に対する認識を害し、ひいては右通名をもつて戸籍上の名とする方がその者に対する認識を確実にするのみならず、本名と通名の併用によつてその社会生活上諸種の不便不利益を受けるような場合には、右所定外の文字が珍奇難解なものでない限り、そのような名の変更についても正当事由があるものと解するのが相当である。

したがつて、本件許可の申立が単に前記戸籍法施行規則所定の文字以外の文字を用いてする名の変更を求めるものであるということから戸籍法一〇七条二項にいわゆる名を変更するについての正当事由にあたらないとする原審判は取消しを免れず、さらに本件について抗告人が「文頌」の名を永年使用してきて名の変更を必要とする事情等前記説示の正当事由の有無について原審をして審理をつくさせる必要があるから、本件を岐阜家庭裁判所に差し戻すこととし、特別家事審判規則一条、家事審判規則一九条一項を適用して、主文のとおり決定する。

(白川芳澄 高橋爽一郎 福田晧一)

抗告の趣旨<略>

抗告の理由<略>

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