名古屋高等裁判所 昭和55年(ネ)115号 判決 1982年12月17日
控訴人・附帯被控訴人(原告)
佐藤ひさゑ
ほか四名
被控訴人・附帯控訴人(被告)
鈴木満
ほか一名
主文
一 原判決を次のとおり変更する。
二 被控訴人らは、各自、
1 控訴人佐藤ひさゑに対し、金一三一万三五六二円及びこれに対する内金一一九万三五六二円については昭和五一年一〇月三一日から、内金一二万円については本判決言渡の翌日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員、
2 控訴人佐藤豊成に対し、金三七万六三九〇円及びこれに対する内金三四万六三九〇円については昭和五一年一〇月三一日から、内金三万円については本判決言渡の翌日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員、
3 控訴人佐藤登代子、同鈴木秀子、同佐藤豊久に対し各金三二万八三九〇円及びこれに対する各内金二九万八三九〇円については昭和五一年一〇月三一日から、各内金三万円については本判決言渡の翌日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員
の支払をせよ。
三 控訴人のその余の請求を棄却する。
四 訴訟の総費用はこれを二〇分し、その一を被控訴人らの、その余を控訴人らの各負担とする。
五 この判決は第二項に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者双方の申立
(控訴の趣旨)(当審において請求を拡張)
一 原判決を次のとおり変更する。
二 被控訴人らは、各自、
1 控訴人佐藤ひさゑに対し、金二六〇二万二九五五円及びこれに対する昭和五一年一〇月三一日から支払済に至るまで年五分の割合による金員、
2 控訴人佐藤豊成に対し、金六七四万三七三八円及びこれに対する右同日から支払済に至るまで年五分の割合による金員、
3 控訴人佐藤登代子、同鈴木秀子、同佐藤豊久に対し、各金六五〇万五七三八円及びこれに対する右同日から支払済に至るまで年五分の割合による金員
の支払をせよ。
三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
との判決及び仮執行の宣言。
(答弁)
一 本件控訴及び当審における拡張請求をいずれも棄却する。
二 当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする。
(附帯控訴)
一 原判決中、被控訴人らの敗訴部分を取消す。
二 控訴人らの請求を棄却する。
三 附帯控訴費用は控訴人らの負担とする。
(答弁)
附帯控訴を棄却する。
第二当事者双方の主張及び立証
次に記載するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
一 控訴人らの請求原因の一部変更及び追加
1 原判決事実摘示中の請求原因4の(七)(後遺症による逸失利益)を次のとおり改める。
亡佐藤登代三(以下単に「登代三」という。)は、本件事故による後遺障害のため歩行困難となり、昭和五二年七月から死亡する昭和五六年九月七日までの間全く稼動することができなかつたが、本件事故に遭遇しなければ、右昭和五二年七月から少なくとも三年間即ち昭和五五年六月までは訴外合資会社協和鋳造所(以下「訴外会社」という。)の重要な業務である鋳造方案の決定に従事することができたので、その間の得べかりし利益を失つたものであるが、その総額は次の(一)ないし(四)の合計額一九九八万〇六〇〇円となる。
(一) 昭和五二年七月一日から同五三年三月三一日までの分
毎月三三万六〇〇〇円の割合による九か月分の合計額三〇二万四〇〇〇円
(二) 昭和五三年四月一日から同五四年三月三一日までの分
昇給分五パーセントを加算した毎月三五万二〇〇〇円の割合による一二か月分の合計額四二三万三六〇〇円
(三) 昭和五四年四月一日から同五五年三月三一日までの分
昇給分五パーセントを加算した毎月三七万〇四〇〇円の割合による一二か月分の合計額四四四万五二〇〇円
(四) 昭和五五年四月一日から同年六月三〇日までの分
昇給分五パーセントを加算した毎月三八万八九〇〇円の割合による二か月分の合計額七七万七八〇〇円
(五) 右三年間分の賞与として、一年分二五〇万円の割合による合計額七五〇万円
2 請求原因4の(八)(慰謝料)を次のとおり改める。
(一) 入・通院分 一三〇万円
(二) 後遺障害分 一一八六万円
登代三は、本件事故により、自賠法施行令別表後遺障害等級の第一二級一二号・第一〇級七号に該当するもののほか、少なくとも第五級七号(一下肢の用を廃したもの)に該当する後遺症が固定した。従つて、後遺障害分の慰謝料としては、右第一〇級七号と第五級七号の慰謝料額を合算した一一八六万円が相当である。
(三) 控訴人ら固有の慰謝料
登代三の妻である控訴人ひさゑは三〇〇万円、いずれも登代三の子であるその余の控訴人らは各七五万円を請求する。
3 損害の追加
(一) 介添費用 八五八万四一〇〇円
登代三は、本件事故による後遺障害のためほとんど自分では身の回りのことができず、二四時間付添看護人を必要とする状況であつたから、気心の知れた控訴人豊成の妻佐藤淑子が、自宅療養の始まつた昭和五二年七月から登代三の死亡する五六年九月まで付添つた。
ところで、その頃の全国統計における女子新高卒四五歳から四九歳の年間給与額は二〇六万〇二〇〇円であるところ、これに準拠して右淑子の介添費用を算出すると、介添期間は四年二か月であるから、その総額は八五八万四一〇〇円(一〇〇円未満切捨)となる。従つて、登代三は本件事故により右同額の損害を被つた。
(二) 家屋改築費用 二三万八〇〇〇円
登代三は本件事故による後遺障害のため日常生活すら一人で満足にできなかつたので、控訴人豊成は、登代三の看護に便利なように、その居住家屋内に手すりを取付け、風呂・便所等を改造せざるをえなかつたが、これに要した費用は二三万八〇〇〇円であるから、同控訴人は、本件事故により同額の損害を被つた。
(三) 弁護士費用 二〇〇万円
控訴人らは、本件訴訟の追行を控訴代理人に委任したがその費用二〇〇万円については、控訴人ひさゑが一〇〇万円、その余の控訴人が各二五万円の分担をすることになつているので、控訴人らは右各同額の損害を被つた。
4 損害の填補
原判決摘示の請求原因5(損害の填補)を、「登代三は、その損害の填補として、自賠責保険金二八五万円のほか、被控訴人らから治療費として一二〇万五六四〇円の支払を受けた。」と改める。
5 同請求原因6(結論部分)を次のとおり改める。
以上によれば、登代三は、前示請求原因4の(一)ないし(六)、前記1、2の(一)・(二)、3の(一)に記載の各損害を合計した四八一〇万一五五〇円の損害を被つたが、上記のとおり合計四〇五万五六四〇円の填補を受けたので、登代三は被控訴人らに対し残額四四〇四万五九一〇円の損害賠償請求権を有していた。
ところが、登代三は昭和五六年九月七日死亡したので、控訴人ひさゑは妻として右損害賠償債権の二分の一である二二〇二万二九五五円、その余の控訴人らはいずれも子として右損害賠償債権の各八分の一である各五五〇万五七三八円を相続により承継した。
そこで、控訴人ひさゑは、被控訴人ら各自に対し、右相続債権二二〇二万二九五五円、前記固有の慰謝料三〇〇万円並びに弁護士費用一〇〇万円の合計二六〇二万二九五五円及びこれに対する本件事故発生の翌日である昭和五一年一〇月三一日から支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
控訴人豊成は、被控訴人ら各自に対し、右相続債権五五〇万五七三八円、前記固有の慰謝料七五万円、前記家屋改築費用二三万八〇〇〇円並びに弁護士費用二五万円の合計六七四万三七三八円及びこれに対する右同日から支払済に至るまで前同率の割合による遅延損害金の支払を求める。
控訴人登代子、同秀子、同豊久は、被控訴人ら各自に対し、右相続債権各五五〇万五七三八円、前記固有の慰謝料各七五万円並びに弁護士費用各二五万円の合計各六五〇万五七三八円及びこれに対する右同日から各支払済に至るまで前同率の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 一部変更及び追加された請求原因に対する被控訴人らの答弁(なお、原判決事実摘示中の請求原因に対する認否4のうち、一行目の「及び(八)」、二行目の「及び(七)」をそれぞれ削り、抗弁2を「被控訴人らは登代三に対し、損害の填補として合計四〇五万五六四〇円を支払つた。」と改める。)。
1 1項の登代三の逸失利益の主張はすべて争う。登代三には、休業損害と同様逸失利益の損害もない。即ち、(イ)同人は明治二九年三月一日生で本件事故当時満八一歳であつたこと、(ロ)訴外会社は、大正一四年以来登代三が個人で営んでいた鋳物関係の鋳造業を昭和二三年に会社組織にしたものであるが、本件事故当時、登代三、長男の控訴人豊成、次男の控訴人豊久を無限責任社員とし、二名の有限責任社員もいずれも登代三の親族で、典型的な同族会社であり、登代三は会社設立の当初から代表社員の地位にあつて、昭和四一年以降は長男の控訴人豊成も併せて代表社員となつていること、これらの事実を総合すると、登代三としては、本件事故当時は、息子達に後をまかせ実質的には引退した生活を送つていて、単に名目上代表者の地位に留まつていたとみるべきである。従つて、仮に登代三が訴外会社から年間六三四万円の収入を得ていたとしても、それは労働の対価としての性質を有しない報酬であることは明白であり、逸失利益等の算定の基礎とはなしえないものである。
仮に訴外会社より登代三に支払われていた金員の一部が労働の対価とみなしうるとしても、登代三の逸失利益等の額は僅少であるというべきである。即ち、登代三が訴外会社でなしていた職務は、同人の年齢からみて極く一般的な会社業務の統括であつて、同人方居宅が会社構内にあること、長男と同居していたこと等を併せ考えると、少なくとも退院後はその職務を果すことが可能になつていたとみるべきである。この点、控訴人ら主張の鋳造方案の決定は訴外会社の重要な業務でないのみならず、仮にこれが重要な業務であつたとしても、その業務は専ら控訴人豊成が行つていた。
また、登代三が本件受傷後従前の職務につかなかつたとしても、それは主として歩行困難によるものであるところ、その原因は、右受傷によるというよりは、むしろ年齢的なものが主であり、この点からしても、仮に登代三に逸失利益等があるとしても、本件事故と相当因果関係は薄いものである。
なお、控訴人らは昇給分を加えて請求しているが、本件においては到底是認されるものではない。
2 2項はすべて争う。登代三に第五級七号に該当する後遺症があつたとは到底認められないし、同人の後遺症の程度に照らし、控訴人らの固有の慰謝料請求は失当である。
3 3項はすべて争う。
4 5項は、登代三が昭和五六年九月七日死亡し、控訴人ひさゑが妻として、その余の控訴人らがいずれも子として、登代三を相続したことは認めるが、その余は争う。
三 新たな証拠関係〔略〕
理由
一 本件事故の発生状況、登代三の受傷・治療経過並びに責任原因についての当裁判所の認定・判断は、後遺症の点につき次のとおり付加するほか、原判決理由第一ないし第三項に記載のとおりであるから、これを引用する。
控訴人らは、登代三は本件事故により歩行困難の後遺障害が残存することになつた旨主張するが、右引用に係る原判決理由第二項に掲記の甲第五号証の二、第九号証、当審における控訴人佐藤豊成の本人尋問の結果(後記採用しない部分を除く)に弁論の全趣旨を総合すると、登代三が本件事故により被つたと認められる後遺障害は、自賠法施行令(昭和五〇年政令第二〇二号、第三四七号)別表の等級一〇級七号及び第一二級一二号に該当すると認められるから、同令二条一項二号のニにより結局それは同等級第九級に該当するものであるところ、登代三が右の程度を超え次第に歩行が困難となつたのは、本件事故当時満八一歳という年齢的要因に負うところが大きいと認めるのが相当であつて、当審における控訴人佐藤豊成の本人尋問の結果中、右認定に反する部分は採用し難い。
二 そこで、本件事故による損害について検討する。
1 登代三が本件事故によつて被つたと認められる治療費、義歯代、入院雑費、入通院時の付添看護料、通院交通費並びに休業損害についての当裁判所の認定・判断も、登代三の労働対価としての収入額の認定につき次のとおり付加するほか、原判決理由四の1ないし6に記載のとおりであるから、これを引用する。
成立に争いのない乙第一号証、原審証人佐藤豊成の証言並びに当審における控訴人佐藤豊成の本人尋問の結果によれば、鋳物の鋳造等を業とする訴外会社において、鋳造方案の決定は重要な業務であり、多年の経験を要するところから、かねてその職務を登代三が主に担当して来たものであることは認められるが、他方、訴外会社は昭和二三年に登代三が個人企業を法人組織にしたもので、長男の控訴人豊成も昭和二一年に除隊すると訴外会社の無限責任社員として営業に従事し、昭和四一年には登代三と共に代表社員となり、登代三の後継者として営業に参画して来たものであること、この間、同控訴人は、主に対外的営業面を担当する傍、鋳造方案の決定につき登代三の指導を受けて技能の修得に努めて来たものであることが認められるのであつて、以上の事実に、訴外会社の規模、業務内容、登代三の担当職務(それが訴外会社にとつて重要なものであつたとはいえ、鋳造方案の決定のみが同人の主たる職務であつたこと)、登代三の年齢等を総合勘案すると、登代三が昭和五〇年中に訴外会社から受けた収入六三四万円のうち、その二分の一の三一七万円を労働の対価性を有する収入であると認定し、残余は実質上の利益配分等の対価性を有しない収入と推認するのが相当であり、当審における控訴人佐藤豊成の本人尋問の結果中この認定に反する部分は採用できず、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。
2 後遺症による逸失利益 二〇五万九五〇八円
登代三の右本件事故前の稼働状況に照らすと、同人の年齢を考慮しても、同人が本件事故に遭遇しなければ、昭和五二年七月から少なくとも二年間は従前と同程度に稼働することができ、その労働の対価として前記認定の年額三一七万円の収入を得ることができたものと認めるべきである。
しかるに、上記登代三の受傷及び後遺障害の部位・程度、同人の年齢等に照らすと、登代三は、本件後遺障害によりその労働能力を三〇パーセント喪失し、これに相当する収入減を来たしたものとみるのが相当である。
ところで、原審証人佐藤豊成の証言により成立の認められる甲第一三ないし第一六号証と弁論の全趣旨によれば、訴外会社の従業員の給与は昭和五二年から同五四年の各年の四月にそれぞれ前年度より各五パーセント引き上げられたことが認められるので、登代三の逸失利益についても、この点を参酌すべきである。
そこで、右認定の各事実に基づき、登代三の後遺障害による逸失利益を算定すると、次の(一)ないし(三)の合計額二〇七万二六一四円(計算関係は円未満切捨)となる。
(一) 昭和五二年七月一日から同五三年三月三一日までの分
(317万円÷12)×1.05×0.3×9=74万8,912円
(二) 昭和五三年四月一日から同五四年三月三一日までの分
{(317万円÷12)×1.05}×1.05×0.3×12=104万8,477円
(三) 昭和五四年四月一日から同年六月三〇日までの分
{(317万円÷12)×1.05×1.05}×1.05×0.3×3=27万5,225円
なお、控訴人らは登代三の逸失利益として三年間分の賞与をも請求するが、賞与は役員に対し年度利益から与えられる金銭であるから、登代三が前判示程度の労働能力を喪失したとしても、役員たる地位に留まつている以上(成立に争いのない甲第一二号証)、賞与は支給されて然るべきものと認めるのが相当であり、たとえこれが支給されなかつたとしても(控訴人佐藤豊成の当審供述によるもこの点はあいまいである。)、それを本件事故による損害と認めるのは相当ではない。
3 慰謝料 四三〇万円
本件事故の態様、登代三の傷害とその治療の経過、後遺障害の内容・程度、年齢、訴外会社の事業への影響等諸般の事情を勘案すると、登代三が本件事故によつて被つたと認められる精神的苦痛に対する慰謝料としては、入・通院分については控訴人ら主張の一三〇万円を下らないものと認めるのが相当であり、後遺障害分については三〇〇万円と認めるのが相当である。
なお、控訴人らは固有の慰謝料を請求するが、叙上登代三の傷害及び後遺症の程度に照らすと、本件についてはその親族である控訴人らにおいて固有の慰謝料を請求しうべきものとは未だ認め難いから、右請求は失当である。
4 介添費用及び家屋改築費
(一) 介添費用 六六万九〇〇〇円
当審における控訴人佐藤豊成の本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、登代三は通院をやめて半年位を経た昭和五三年頃から次第に日常の立居振舞いが不自由となり、妻の控訴人ひさゑのほか、力の要ることについては控訴人豊成の妻佐藤淑子が介添に当たつたことが認められるが、他方、登代三の立居振舞いの不自由は、前判示の後遺障害のためのみではなく、年齢的負因も相当程度に影響していたと推認されること、右淑子が同居の親族であること等を参酌すると、同人の介添労働に対する対価としては、その介護が必要となつたと認められる昭和五三年一月から登代三が死亡する前月の昭和五六年八月までの間、一日当たり五〇〇円の割合による金額合計六六万九〇〇〇円をもつて、本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
500円×(365×3+243)=66万9,000円
(二) 家屋改築費 八万円
当審における控訴人佐藤豊成の本人尋問の結果及びこれによつて成立の認められる甲第一八号証の一ないし一四、第一九、第二〇号証によれば、控訴人豊成は、登代三の日常の立居振舞いを容易にするため、家屋内に手すりを取付けたり、風呂・便所等を改造し、その費用として二三万八〇〇〇円を支出したことが認められる。しかし、右本人尋問の結果によれば、これらは介添の補助的な効果はあつたが、介添を不要とするまでには至らなかつたことが認められること、また、前判示のとおり控訴人らは別途に右介添に要した費用を損害として請求していることを参酌すると、右費用二三万八〇〇〇円の約三分の一である八万円をもつて本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
三 過失相殺
本件事故の発生状況(原判決理由一の2)によれば、本件事故の発生については、登代三にも、反対車道上を右側通行しながら、加害車の前方を通過しうるものと軽信して、その直前を進行しようとした過失があることが認められるので、右過失は本件事故による損害額の算定に当たり考慮するのが相当であるところ、本件事故の態様、本件事故現場付近の道路の構造、被控訴人満と登代三の両者の過失の内容・態様等諸般の事情を斟酌すると、双方の過失割合は、同被控訴人において六割、登代三において四割と認めるのが相当である。
従つて、上来認定の損害、即ち、登代三につき総額一〇七三万七九四一円、控訴人豊成につき改築費八万円の各々について各四割の過失相殺を施すと、登代三分は六四四万二七六四円、豊成分は四万八〇〇〇円となる。
四 損害の填補
登代三が右登代三分の損害につき合計四〇五万五六四〇円の填補を受けたことは当事者間に争いがないから、これを差引くと、登代三分の残損害額は二三八万七一二四円となる。
五 相続
登代三が昭和五六年九月七日死亡し、控訴人ひさゑは妻として、その余の控訴人らはいずれも子として、登代三を相続したことは当事者間に争いがない。
従つて、登代三の右損害賠償請求権を、控訴人ひさゑはその二分の一である一一九万三五六二円、その余の控訴人らはその各八分の一である二九万八三九〇円の割合で承継したものである。
六 弁護士費用
控訴人らが本訴に要したと認められる弁護士費用のうち、右各認容額の約一〇パーセントに相当する金額、即ち、控訴人ひさゑについては一二万円、その余の控訴人らについては各三万円をもつて、本件事故による損害と認めるのが相当である。
七 結論
以上のとおりであるから、控訴人らの本訴請求は、控訴人ひさゑにおいて金一三一万三五六二円及びこれに対する内金一一九万三五六二円(相続分)については本件事故発生の翌日である昭和五一年一〇月三一日から、内金一二万円(弁護士費用分)については本判決言渡の翌日からそれぞれ支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を、控訴人豊成において金三七万六三九〇円及びこれに対する内金三四万六三九〇円(相続分及び改築費)については前記昭和五一年一〇月三一日から、内金三万円(弁護士費用分)については本判決言渡の翌日からそれぞれ支払済に至るまで前同率の割合による遅延損害金を、又控訴人登代子、同秀子、同豊久において各金三二万八三九〇円及びこれに対する各内金二九万八三九〇円(相続分)については前記昭和五一年一〇月三一日から、各内金三万円(弁護士費用分)については本判決言渡の翌日からそれぞれ支払済に至るまで前同率の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却すべきである。
よつて、右と異なる原判決を以上のように変更することとし、訴訟の総費用の負担につき民訴法九六条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 小谷卓男 寺本栄一 三関幸男)