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名古屋高等裁判所 昭和57年(行コ)8号 判決 1984年3月08日

愛知県愛知郡長久手町大字熊張字郷前二一九一番地

控訴人

中野伸作

右訴訟代理人弁護士

加藤義之

名古屋市瑞穂区瑞穂町西藤塚一番四号

被控訴人

昭和税務署長

鵜飼利明

右指定代理人

岡崎真喜次

西尾清

和田真

柴田良平

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が、控訴人の昭和五一年分ないし昭和五三年分各所得税について、昭和五五年二月二六日付でなした各更正及び過少申告加算税の賦課決定処分(但し、昭和五三年分については、国税不服審判所長の昭和五六年一月一七日付裁決により一部減額された部分を除く)を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次に訂正、付加するほか、原判決事実摘示及び当審訴訟記録中の証拠に関する目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

(控訴人の陳述)

1  控訴人において扱う主要な品目の仕入値と売上値を対比すると、セメントが約八七パーセント、ブロックが約七三パーセント、洗砂が約七一パーセントであるから、全体の売上原価率は七〇パーセント以上と算出される。しかるに、被控訴人が極めて低い売上原価率を算出し、延いては実態の伴わない高額の営業所得金額を計上しているのは、不当といわなければならない。

2  控訴人は、原審において、被控訴人主張にかかる仕入先、主な仕入品及びその金額、明細を認めたが、右自白は真実に反し、かつ、錯誤に基づくものであるから、これを撤回する。

(被控訴人の陣述)

1 控訴人の営業形熊は、本件係争各年分当時、その住所地である愛知県愛知郡長久手町大字熊張字郷前二一九一番地において、主として住所地近隣を営業範囲として生コン、砂、ブロック等の建築用材料及び左官用材料を販売するだけでなく、顧客の注文に応じてこれに関連する工事をなし、そして、控訴人は、販売ないし工事のために、掘削、整地等に用いるユンボ、ブルトーザー等の土木作業用機械及びダンブカー等の作業用車両を保有していた。被控訴人が主張する売上原価率は、このような形態と規模等を有する控訴人の営業から得られる利益を、仕入金額をもとに控訴人と同種、同規模の類似業者を基準に推計しているのであつて、控訴人主張のように、取扱商品のごく一部(セメント、ブロック、洗砂)から右のような規模等を有する控訴人の営業売上金額を推測し、延いて、その売上原価率を問題とすることは全く意味がないというべきである。

2 資産増減法により控訴人の資産増加額を推計したところ、昭和五一年分が五九九万九一四三円、昭和五二年分が八三二万五六四八円、昭和五三年分が一三五六万一九六六円になり、いずれも被控訴人主張にかかる控訴人の営業所得額を上回る。この点からみても、被控訴人の本件各処分が正当であることは明らかである。

3 控訴人の仕入の金額、明細に関する自白の撤回には異議がある。

理由

一  控訴人の本訴請求は理由がないから、これを棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決理由と同じであるから、ここにこれを引用する。

1  原判決一三枚目表三行目の「原告は」の次に「営業に関する帳簿、書類等を保存しておらないことは明らかに争わず、そのため、営業所得金額を算出する方法として」を加える。

2  同一三枚目表五行目の「本件係争各年分」から七行目の「いがなく、」までを「控訴人は、原審において、本件係争年分の控訴人の仕入先、主な仕入品及びその金額が別紙五の一ないし三記載のとおりであることを認めたが、昭和五八年六月七日の当審第三回口頭弁論期日において、右自白は真実に反し、かつ、錯誤に基づくものとしてこれを撤回し、右仕入品、仕入金額等を否認するに至り、被控訴人は右自白の撤回に異論を述べた。しかしながら、当審における控訴人本人尋問の結果により成立を認める甲第六号証の記載は右尋問の結果及び成立に争いのない乙第三六号証の一、二に照らして右自白が真実に反するものであることを証するに足りないものであるし、他に右事実を認めるに足る証拠もない。してみれば、控訴人が自白を撤回することは許されず、したがって、本件係争各年分の控訴人の仕入先、主な仕入品及びその金額が別紙五の一ないし三記載のとおりであることは当事者間に争いがないというべきである。」に改める。

3  同一三枚目裏二行目の「証人柳沢敏春の証言、原告」を「乙第二一号証、原審証人柳沢敏春の証言、原審及び当審における控訴人」に改める。

4  同一四枚目裏七行目と八行目の間に「なお、控訴人は、セメント、ブロック、洗砂の仕入値と売上値の単純対比を根拠として全体の売上原価率は七〇パーセントを超えるはずである旨主張し、控訴人は当審においてこの主張に添う供述をしているけれども、控訴人の営業内容が単に建築用材料等を販売するだけでなく、あわせて保有車両等を使用して工事も行うものであつたことは先に認定したとおりであるから、かような営業形態、規模等に照らせば、控訴人の右供述はただちに採ることができない。」を加える。

二  そうすると、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中田四郎 裁判官 名越昭彦 裁判官 木原幹郎)

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