大判例

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名古屋高等裁判所 昭和28(う)1023 高裁判例

主 文

本件控訴を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

本件控訴の趣意は、被告人及び弁護人福井正二の各控訴趣意書記載の通りである

から、いずれも、これを引用する。

弁護人の控訴趣意一について。

論旨は、昭和二十八年七月十一日附起訴状記載の公訴事実第二の事実は、被告人

の自首にかかるものであるに拘わらず、原審がこれを自首と認定しなかつたのは違

法であるというにある。よつて案ずるに、原判決は、被告人及び弁護人のこの点に

関する主張に対し、法律上の自首と認め難いとして、その主張を採用しなかつたこ

とは、原判決に判示する通りであるが、訴訟記録を調査するに、昭和二十八年六月

三十日附被告人の司法警察員に対する自首調書によれば、弁護人主張の起訴状記載

の公訴事実第二の事実即ち原判示第二の事実については、被告人の自首にかかるも

のであることが認められる。

もつとも、右事実については、被害者Aより、被害の直後である昭和二十七年十

二月十七日、警察官<要旨>署に被害届が提出されていることが明らかであるが、た

とえ犯罪事実が既に官に発覚している場合でも、その</要旨>犯人が何人であるかが

未だ官に発覚しない前に、犯人が自己の犯行である旨を申告する場合には自首に該

当するものと解すべきである。本件はまさにこの場合に該当する自首と認むべきも

ので、右認定を左右する証拠は記録上存在しない。従つて、原判決が法律上の自首

と認め難いと判示したのは法律の解釈を誤り、延いて自首であることを誤認したも

のといわなければならない。

然し、自首減軽をすると否とは裁判所の裁量に属するところであり、原審が自首

減軽をしなかつたとしても何等法令の適用に誤はなく、右誤認は判決に影響を及ぼ

さないので、論旨は採用できない。 弁護人の控訴趣意二及び被告人の控訴趣意に

ついて。

論旨は、原判決の刑の量定の不当を主張するものであるが、本件犯行の動機、態

様、回数、被害額、前科、家庭の状況、その他諸般の事情を綜合すれば、原判決の

刑の量定が重きに失するとはいわれない。論旨は理由がない。

よつて、刑事訴訟法第三百九十六条に則り、本件控訴を棄却し当審において国選

弁護人に支給した訴訟費用は、同法第百八十一条第一項に従い、被告人に負担させ

ることとし、主文の通り判決する。 (裁判長判事 河野重貞 判事 高橋嘉平

判事 山口正章)

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