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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和25年(う)299号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(理由)

記録によると原審檢察官は、昭和二五年二月四日原審第一回公判廷に於て、本件公訴事実を立証するため坂本義雄こと姜三渉の檢察官に対する供述調書一通の取調を請求したが、被告人及び辯護人の同意を得られなかつたので、改めて証人として右姜三渉の尋問を求め、原審裁判官はこれを容れて次回公判期日に同人を証人として喚問する旨の決定を宣して閉廷したこと、しかるに同人妻河点順の作成名義による同年二月一二日付の書面を以て原審に対し、本人は目下旅行不在につき公判期日には出頭し兼ねる旨の届出があり同年二月一四日の原審第二回公判期日に右証人は出頭せず原審は同証人を再喚問する旨告げ更に期日を定めて閉廷したことゝ其の後河点順作成名義同年二月一九日付の書面により、姜三渉は大阪、京都、博多地方に商用のため旅行中にて出頭し兼ねる旨の届出があり、同年二月二一日の原審第三回公判期日には同人は出頭せず、原審は次回公判期日に同人を喚問をする旨宣し期日を指定して閉廷したこと、さらに其の後河点順作成名義同年三月一一日付の書面により「姜三渉は目下行商中で一箇月に一回か二回帰宅するのみであり現在は九州方面を旅行しているが、行先不明であつて何時帰るものとも判明しない旨届出があり、」同年三月一四日の原審第四回公判期日に前記証人は出頭せず原審は更に右の証人を喚問する旨決定した期日を定めて閉廷したこと「其の後何等の届出なく同年三月二九日の原審第五回公判期日にも同証人は遂に出頭しなかつたものであることを肯認するに足るのみならず、しかも其の後原審が前記姜三渉の所在を知り得た何等の形跡を記録上発見し得ないものである。」そうだとすると、同人の所在は敍上のごとく原審に於ける審理期間中、辯論の終結に至るまで裁判所にとつては全く不明であつたものであつて、「斯樣な場合はまさに刑訴法第三二一條第一項第二号にいわゆる所在不明に該当すると解すべきである。蓋し刑訴法第三二一條第二号に定める所在不明とは、判決に接着する事実審の辯論終結の時を標準とし、この時に至るまで或る特定人の所在が裁判所に不明であることを言い、其の状態が一時的であると継続的であるとを問わないと解釈すべきだからである。果してそうだとすると原審が辯護人の不同意にも拘らず、姜三渉の檢察官に対する供述調書について刑訴法第三二一條第一項第二号を適用して証據調べを爲しこれを事実認定の資料としたことは、まことに相当であり、訴訟手続に何等法令の違背がないことが明瞭であつて論旨は理由なしとしてこれを排斥せねばならぬ。

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