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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和25年(う)543号 判決 1950年12月04日

被告人

大沢良吾

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人村井清造の控訴趣意第一点について。

(イ)  原判決挙示の各供述及び供述調書を綜合し且つ証第一号金片を検分すれば本件物件が当事者間に取引せられた当時の状態は文字の浮彫りの部分をハンマーで叩き潰し、当初正方形の板状であつたと認められる所体の輪廓が右ハンマーの打撃で不規則な歪曲を呈し背部板面の中央部に存する円形の穿孔に嵌入されていた銀の「つまみ」が取り除かれ一見して既に用法上印形又は印材としての原形及び効用を喪失していたものと認めるのが相当である。故に右物件は之を其の本体たる金地金として評価又は観察するの外なく之を売買する者は当然金地金取引の罪責を免れるを得ないものと言わなければならぬ。よつて本論旨はこれを採用することができない。

同第二点について。

(ロ)  昭和二十年十月十五日勅令第五百七十七号金、銀又は白金の取引等取締に関する件第一条(論旨の第二条は誤り)によれば金地金等の本邦内における得喪、滅失、原状変更又は移動を生ずべき取引又は行為は大蔵大臣の許可を受けない限り無効であるから右許可を受けない金地金の売買により買主は法律上所有権を取得し得ないことは所論の通りであるが、右第一条に違反する取引当事者又は行為者は総べて同令第三条による処罰の対象となる者であるから本件物件は買主である被告人に所有権の帰属を認められなくとも売主として同様の罪責を免れることの出来ない西谷正治の所有物として犯人以外の者に属しないものというに妨げなく、よつて刑法第十九条によりこれを没収することは何ら違法ではない。本論旨も理由がない。

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