大判例

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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和25年(う)583号 判決

記録に基いて、鑑定人富永一作成の鑑定書の記載を検討すると、第六「飲酒試験後の経過と該試験の追想」の章の末尾に、「秋元教授は本件犯行当時に於ける精神状態も、飲酒試験の際の精神状態も、病的酪酊に入れられるべきもので、意識こんだくの状態にあつたものと断ぜられ、其の程度について検討を加えるように指示された」旨の記載があることを認め得るが、左様な記載があつたところで、本鑑定が、鑑定人富永一自身の判断による鑑定であることに、何等の消長を与えるものではないから、此の点に関する論旨は其の理由がない。また、同鑑定書中第八、「鑑定」の章に、「昭和二十五年三月二十日、本件の発生した当時に於ける被告人大矢栄松の精神状態は、爆発性異常人格者の示した病的酩酊であつて、意識こんだくがあり、其の程度は法律の規定する心神耗弱に該当する。」旨の記載があること、すなわち、大矢栄松の精神状態に対する鑑定人の医学的所見の外、同鑑定人の刑法第三十九条の解釈適用に関する見解の記載が、併存することを肯認し得るが、鑑定人が鑑定書中に自己の法律的見解を附記すると否とは其の自由であり、裁判所は何人の意思にもとらわれない独立不覊の立場から専ら法律を解釈適用するのであるから、原審の見解が、たまたま鑑定人の法律的意見と一致したからと言つて、原判決が鑑定人の法律的判断に盲従したものでないことは勿論であるから、此の点に関する論旨も其の理由がない。

(註 本件は量刑不当により破棄自判)

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